[インタビュー]

「膨大なデータを前に戸惑う顧客をデータドリブン経営に導く」─米テラデータ幹部

2019年10月15日(火)指田 昌夫(フリーランスライター)

米テラデータ(Teradata)と言えば、企業が自社内に持つデータウェアハウス(DWH)を長年販売してきたことで知られるが、現在は、大企業向けにデータ分析プラットフォームを提供するアナリティクス製品ベンダーへとシフトしている。同社のEVP(Executive Vice President)兼CRO(Chief Revenue Officer:最高収益責任者)として、営業・マーケティング部門約5000名を統括するスコット・ブラウン(Scott Brown)氏に、大企業が直面する課題やデータドリブン経営について聞いた。

日々生成される大量のデータで苦しむ大企業

──テラデータの顧客には、ブラウンさんの前職と比べてどのような特徴がありますか。
注:スコット・ブラウン氏(写真1)は、米シスコシステムズで22年間営業部門の要職を務めた後、2019年6月にテラデータに移籍

 テラデータの顧客は大企業がほとんどで、どの業界でもグローバルで活動するトップ企業です。そのスケールの大きさにまず驚いています。シスコは通信・ネットワークでは世界的な企業ですが、テラデータはそのトラフィックも含めて企業が扱うデータをすべて格納し、そこから企業に対してインサイト(Insight:洞察)を与える役割を担います。

写真1:米テラデータ EVP兼CRO スコット・ブラウン氏

 ちょうど3週間かけて、世界の顧客企業の幹部と会うために各国を回ってきました。米国からドイツのミュンヘン、フランスのパリ、スウェーデンのストックホルム、イギリスのロンドン、そのあとシンガポール、中国の北京を経由して、最後の訪問国がこの日本になります。

 各国の代表的な顧客の方々と面談して感じたのは、多くの顧客は、大企業であるからゆえ、社内で日々生まれる膨大なデータに、ある意味“ロック”されてしまっているということです。言い換えれば、たくさんデータはあるけれども、どうすればよいのかわからないという悩みを持っています。

──データは集まるけれど、ビジネスに生かし切れていないと?

 そうです。テラデータの顧客は金融をはじめ、製薬、自動車、小売、それに政府など大規模なデータを取り扱う企業が中心です。

 ご存知のとおり、企業は今、あらゆるデータを収集できる技術を手に入れています。IoTの浸透でリアルタイムに大量のデータが収集できるようになりました。またAIの進化によってさまざまな分析手法も利用可能になっています。ですが、いくらデータと手法があっても、それだけでは企業の課題を解決することはできないのです。

 テラデータが現在スローガンとしている「分析に投資せず、答えに投資する(Stop Buying Analytics, Start investing in answers)」は、まさにその課題に応えるということです。(関連記事「“製品”ではなく“解”に投資を」―新生テラデータがアナリティクスポートフォリオを刷新

──「答えに投資する」とはどういうことでしょうか。

 具体例で示しましょう。ある国の政府で防衛関連のプロジェクトがありました。そこでは軍事用車両が保有台数の50%しか稼働状態になっていませんでした。なぜかというと、その半分はメンテナンスの問題で「整備中」だったのです。そこでこの政府は、稼働率を70%まで上げたいと考え、テラデータと解決に取り組みました。

 ここで我々は、車両のメンテナンスの何に問題があるのかを分析するために、同じ政府が運用するヘリコプター、戦車などの違う機材のメンテナンスデータを見てみることにしました。それによって車両のメンテナンスの部品供給や整備工程にどのような問題があるのかを見つけ、対策することで、稼働率を目標の70%まで改善することができました。

 具体的に何を改善したいのかを明らかにし、その目的に必要なデータから洞察を導き、改善する。これが「答えに投資する」ということです。

すでに売り上げの9割がサブスクリプションから

──テラデータ自身も、データを格納するDWHの専業ベンダーからデータ分析プラットフォームへ製品を拡張し、販売モデルも売り切りからサブスクリプションにビジネスを変えている最中です。

 はい。実はサブスクリプションへの移行は急ピッチで進み、すでに直近四半期の結果は全売上げの90%がサブスクリプションによるものになっています。一昨年度が30%、前年度が60%程度だったので、我々の想定を超えるスピードで移行が進みました。これは日本でも同様のペースです。

──90%ですか。ほぼ移行は最終段階と言ってもいいですね。

 そうなのですが、サブスクリプションは「コンサンプションエコノミクス」(Consumption Economics:消費経済。使った分だけ課金するビジネスモデル)といって、顧客の初期費用は限りなくゼロに近いところから始まり、利用に応じて支払いが生まれてくることになります。いわゆるフィッシュカーブと言われる収益曲線を描きます。

 そのため、想定される売り上げを達成するためには、ある程度の期間、売り上げが低い時期が続きます。我々はまだその過渡期にあります。新しいビジネスモデルを社内に対しても説明し、サブスクリプションへの移行を完了しなければいけません。それがCROである私のミッションでもあります。

●Next:自動車業界で先行するデータドリブン経営

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