ハートコアは2019年10月8日、プライベートイベント「HeartCoreDAY2019」を開催した。創立10周年の今回は、同社の新たな取り組みである「プロセスマイニング」をメインテーマとして取り上げた。ハートコアは総代理店として、同年3月からプロセスマイニングツール「myInvenio」日本語版の提供を開始している。イベントではmyInvenioの開発元である伊Cognitive Technologyの創業者でCEOのマッシミリアーノ・デルサンテ(Massimiliano Delsante)氏の講演が行われた。
RPAとプロセスマイニングの重要性
冒頭で開会の挨拶を行ったハートコアのファウンダー兼代表取締役社長/CEOの神野純孝氏は、CMSからスタートした同社の事業がどのような経緯でRPA/プロセスマイニングまで到達したのかを明かした。
DX時代を迎え、企業のデジタルでの顧客接点を直接構築するCMS/CXM(Customer eXperience Management)に加え、顧客の行動をデータに基づいて分析するための基盤となるCDP(Customer Data Platform)が必要になる。さらにオペレーションの効率化のためには避けて通れないのが運用自動化。そのためにRPA(Robotics Process Automation)が必要になる。ただし、RPAで闇雲にプロセスを自動化しようとしても効率化には繋がらない。データに基づいて自動化すべきプロセスを明確にしないと、あまり本質的でない些末なプロセスの自動化にコストを投入するようなムダが生じてしまう。そこで役立つのがプロセスマイニングというわけだ。
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プロセスマイニングによってシステム内で実行されている膨大な量のプロセスを可視化することで、自動化すべきプロセスが明確になる。こうして、CMS/CXM、CDP、RPAという3本柱でPCDAサイクルを回していくことで、デジタル時代における企業の競争力強化が実現する、というのが同氏の主張だ。
続いて登壇した、伊Cognitive TechnologyのCEO、マッシミリアーノ・デルサンテ氏は、プロセスマイニングツール「myInvenio」の概要や特徴的な機能について、デモを交えて紹介した。同氏はまず、RPAとプロセスマイニングの関係をカーナビゲーションシステムに例えた。「カーナビゲーションにデジタルマップが必須なように、RPAにも“地図”が必要で、それを提供するのがプロセスマイニングツールだ」と説明した。
myInvenioは広く利用されているさまざまな業務アプリケーションに対応しており、プロセスを抽出できる点が特徴となる。また、競合製品にはないユニークな機能として同氏が強調したのが、任意に設定した条件に基づいて、将来のプロセスの実行状況を可視化できる「シミュレーション機能」だ。同氏はこの機能を「タイムトラベラー(Time Traveler)」と表現している。時間を旅するように将来のプロセスの状況を現時点で把握することで、プロセスの最適化/効率化のために有益な知見が得られるという。
さらに、製造業の分野でまず話題になった“デジタルツイン(Digital Twin)”というコンセプトに基づいて企業活動の最適化を図る“デジタルツインオーガニゼーション(Digital Twin Organization)”という考え方についても言及した。
プロセスマイ二ングツールによって生成されたプロセスモデルは、現実の企業組織とそっくりの挙動を見せる“デジタルによる複製”だと考えられる。このデジタルモデルに対して何か変更を施せば、現実の企業組織にその変更が与える影響を事前に評価できるわけだ。前述のシミュレーション機能もそこで活きてくることになる。プロセスの変更/改善が実際にどのような効果をもたらすのかを、現実に影響を与えることなくデジタルで確認する。これによって、悪影響なしに常に最善の改善手法だけを導入することが可能になる。こうした使い方をすることで、「myInvenioが企業のDX実現に向けた取り組みに大きく寄与する」と同氏は強調した。
myInvenioの強みと日本市場への期待
ハートコアがプロセスマイニングに取り組むに当たり、神野氏は「プロセスマイングツールを提供するとしていた全世界で約30社の開発元全てと連絡を取り、全製品を横並びで比較して選定を行った」と明かした。中にはまだ製品が完成していない企業も混じっていたそうだが、その時点での主要製品は全て俎上に登り、その中でベストな製品として選ばれたのがmyInvenioだったという。
同氏は、myInvenio選定の理由として、「シミュレーション機能」の優秀さを挙げると共に、「イタリアならではのデザインセンス」も指摘している。ソフトウェアの選定理由としてはあまり聞くことのない要素ではあるが、実際に日々業務で活用するソフトウェアの場合、インターフェイス設計などにセンスの善し悪しは現われてくるものだ。現在主流のITシステムの多くが米国発なのに対し、プロセスマイニングはEU圏で生まれ育った技術であることからも、従来システムとは異なるセンスを感じる部分があるものと思われる。
デルサンテ氏はmyInvenioの競合優位性として「非構造化プロセスの分析に強い」点を挙げた。製造業などでよく見られる構造化されたプロセスは、あらかじめきちんと決まったフローに従ってプロセスが実行されていくという特徴がある。一方で、金融業などで見られる非構造化プロセスの場合は、同時多発的にいろいろな人がいろいろなプロセスを開始し、それが複雑に相互に関係し合いながら進んでいくという特徴を持つという。
競合製品では、主に構造化プロセスへの対応に注力した製品が多いために、金融業界での採用事例がほとんどないそうだ。myInvenioの場合は、イタリアのCredem銀行などでの利用事例が公開されている。非構造化プロセスに強いことが金融業界での高評価に繋がり、高いシェアを獲得しているという。
また、多彩なデータソースに対応している点もmyInvenioの強みだ。競合製品の多くは、サーバーサイドでの基幹業務アプリケーションの分析に特化している。それに対してmyInvenioは、さまざまな業務アプリケーションをサポートし、さらにPC上で実行されるプロセスなどもカバーできるという。日本では、業務プロセスが基幹業務アプリケーション上に集約されているような、高度なシステム化がすでに完了している企業が相対的にまだ少数派に属している。「国内の多数派の企業には、myInvenioのアプローチが極めて有用だ」と神野氏も指摘している。
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最後に、プロセスマイニングツールではクラウドでの提供が一般的になっているが、myInvenioの場合クラウドはもちろん、オンプレミスでの提供も可能となっている。この点が、データが外部に出ることに対して強い警戒心を抱くユーザー企業が多い日本国内では強力な競合優位性になるという。
神野氏は、「日本は世界でもトップレベルのRPA先進国であり、RPAのために必要、という認識が広まったことで急速にプロセスマイニングに対する関心も高まってきている」と語る。今年はプロセスマイング元年と言えそうな急速な盛り上がりを見せており、競合製品も続々と日本参入を果たしている状況だ。しかし、ハートコアではmyInvenioの日本語化にいち早く取り組んだ結果、UIやマニュアルのみならず、サポートやオンライントレーニングなども含めた完全日本語化を実現している。このことからも、既に優位な立場を築いていると言える。
市場が盛り上がり、ユーザーの関心が高まっていくことで製品間の違いについての理解も深まる。競合製品の知名度に惹かれて検討を開始したユーザー企業が最終的には機能面での優位点を知ってmyInvenioを選定する、という例も増えているそうだ。今後さらにmyInvenioの採用事例が拡大していくことは間違いなさそうだ。
●お問い合わせ先
ハートコア株式会社