[インタビュー]
人気サービス/アプリに載る自社の情報を正しく管理する─Yextの利用メリットと仕組み
2020年2月10日(月)杉田 悟(IT Leaders編集部)
スマートフォンの普及によって、企業の商品や店舗住所、営業時間などの情報が、自社サイトだけでなく、検索サービス、マップ、SNS、交通系やグルメ系アプリなど、あらゆるところに載るようになった。このことは、社外の各種サイト/サービスに掲載された自社の情報が、消費者が持つブランドイメージに大きな影響を与えることを意味する。もし不正確な情報が載ってしまっても、自社サイトのように速やかな修正が行えず、場合によってはビジネス機会の損失にもつながるだろう。Webの海に向かって自社の正確な情報を届けるにはどうしたらよいのか──。この問題に解を示すのが米Yext(イエクスト)。社外の各所に掲載される自社の情報を把握したり、最新の情報を掲載元に配信したりできるプラットフォームを提供する。同社EVPのショーン・マカイゼック(Sean Maclsaac)氏に、Yextの導入メリットとサービスの仕組み自体を聞いた。
いまどきは飲食店を探すとき、スマートフォンを使って検索する/マップで店の場所を探す/グルメサイトで評価を見るといった行動を取る人がほとんどだろう。その際に、表示されている営業時間が異なっていた、マップの表示場所がずれていた、などということになったら、店舗にとってはビジネス機会の損失につながってしまう。
Googleの場合、「Googleマイビジネス」という企業自らがそうした情報を修正・更新できるサービスを用意している。Googleの検索結果で右側に表示されているナレッジパネルにある内容やGoogleマップの位置が違っていることに気づいたら、その場で修正すればよい(画面1)。
Googleなら、こうしてマイビジネスを利用すればスムーズに問題を解決できる。でも、他のいろいろなサイトに間違った情報が載っていたら、どうすればよいのか。
そこで、Googleマイビジネスのような仕組みを、他の検索サービスやマップ、SNS、グルメサイトなどでも使えるようにしようとしたのがYext(イエクスト)だ。後述するが、SNSやクチコミサイトのレピュテーション(評判)管理機能も備わっている(関連記事:自社Webビジネスの“ブランドコントロール”を可能に―Yextのデジタルナレッジマネジメントサービス)。
Yextのサービスは、「パブリッシャー」と呼ぶ、各情報提供サイト/サービスとのパートナーシップで成り立っている。Google、Facebook、Apple、Yahoo!といったメガプラットフォーマーをはじめ、Yelp!、Snapchat、Instagram、TripAdvisor、Uber、ゼンリンなど、パブリッシャーの数は現時点で150に上る(図1)。
拡大画像表示
では、Yextはどのような方法で、150ものパブリッシャーに乗っている膨大な企業情報を管理し、正確な情報への更新を可能にしているのだろうか。同社のエグゼクティブバイスプレジデント インフラストラクチャのショーン・マカイゼック(Sean Maclsaac)氏に説明してもらった。
プラットフォームを構成する6つの主要要素
──Yextは、150ものパブリッシャーのデータを扱って、管理や更新のための配信を行っています。どんな仕組みでそれを可能にしているのでしょうか。
Yextの論理アークテクチャを説明しましょう。Yextのプラットフォームは、「Knowledge Graph」「Pages」「Analytics」「Answers」「Listings」「Reviews」という6つの要素で成り立っています(図2)。各要素の特徴を順に説明しましょう。
拡大画像表示
Knowledge Graphは、店舗のロケーションや営業時間、メニューのアイテム、商品情報など、Yextの顧客から送られてくる、あらゆるデータが集約される場所になりります。膨大な情報がデータベースで管理されています。
このKnowledge Graphを実現している技術基盤はグラフデータベース(Graph database:GDB)です。データの関係性を保持して格納する構造を持つデータベース技術ですね。SNSのソーシャルグラフやECサイトのレコメンデーションなどで用いられています。Yextでは、オープンソースのGDBで最も人気のあるNeo4jを採用しました。
図2では6つの要素が均等に並んでいますが、実際にはあらゆるデータが一度Knowledge Graphに集約され、そこから他の要素にデータを送り込んでいます。Knowledge Graphが、Yextのあらゆるサービスの起点になっているのです。
次にPagesですが、こちらはGoogle検索に最適化したD2C(Direct to Consumer)の店舗サイト/ページを作成する機能を提供します。Knowledge Graphの店舗情報を更新すると、Pagesで作成した店舗ページの情報も自動更新されるので、運用も楽になります。
Analyticsは、自社のWebサイトに訪れた人の数や、検索サイトで自社が検索された数といったパブリッシャーからの情報を集めて可視化するサービスです。本部の管理者向け、マネジャー向け、マーケティング担当者向け、店長向けなど、複数のロールごとにダッシュボードを用意しています。
Googleの検索体験を企業サイトで実現
Answersは、Yextの新しいサービスになります。これを使うと、Google検索のようなUI/UXを、ユーザーの企業サイトでも実現することができます。企業サイトに検索ボックスを設けて、Google検索のように問いかけを行えるようにしました。2019年7月に共同創業者兼社長のブライアン・ディステルバーガーが来日したときに詳細を説明させていただきました(関連記事:企業サイトで「知りたいことが返ってくる検索」を実現─質問形式検索「Yext Answers」)。
──Answersは2019年にサービスを開始しましたが、すでに何社ぐらいが導入しているのでしょうか。そのうち日本企業は何社になりますか。
サービスはすでに銀行や携帯端末メーカーなど15の企業サイトに導入されています。残念ながら、Answersは英語のみの対応となっており、今のところ日本企業には使っていただけていません。現在、日本語化に取り組んでいるところで、2021年度中にはサービスを開始したいと考えています。
──では、Answersの導入事例を1つ紹介してください。
Answersを導入したある銀行では、自行のサイトで訪問者が「ローン申し込み」や「口座開設」といった検索を行うと、検索結果のページから直接ローン申し込みや口座開設の手続きが開始できるようになりました。検索結果のリンク先にいちいち飛んで該当するページを探すという手間が省けるようになっています。
その銀行が以前のサイトとAnswers導入後のサイトとでABテストを行ったところ、ローンの申し込みや口座開設の数が、以前のサイトより25%多いという結果が得られました。
●Next:150ものパブリッシャーにどうやって自社の情報を配信する?
会員登録(無料)が必要です
- 1
- 2
- 次へ >