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農研機構、1PFLOPSのAI用GPUスパコンを稼働、画像処理による病害虫の把握が100倍高速に

2020年6月17日(水)日川 佳三(IT Leaders編集部)

農業分野の研究開発機関である農研機構は2020年6月16日、AI研究用のスーパーコンピュータ「紫峰」を2020年5月に稼働させたと発表した。GPUカードを128基使ったシステムで、処理性能は1PFLOPS(ペタフロップス)。合わせて、データ容量3PB(ペタバイト)の大規模データベース「NARO Linked DB」を稼働させた。スーパーコンピュータと統合データベースの構築は富士通が協力した。農研機構内で分散して管理している研究データを収集・統合し、農研機構内外の研究者が分野横断的に活用できる。

 農研機構は、農業情報を研究するための基盤として、計算速度1PFLOPS(ペタフロップス:毎秒1000兆回の浮動小数点演算)の計算性能を持つAI研究用スーパーコンピュータ「紫峰」と、容量3PB(ペタバイト)の大規模データベースを稼働させた(図1)。1PFLOPSの計算性能と容量3PBのデータベース規模は、研究者100人が同時にAI用の計算を行うのに必要な計算機の能力・規模として算出した。スーパーコンピュータと統合データベースの構築支援を富士通が行った。

図1:AI研究用スーパーコンピュータ「紫峰」と大規模統合データベースによる農業情報研究基盤のイメージ図(出典:農研機構)図1:AI研究用スーパーコンピュータ「紫峰」と大規模統合データベースによる農業情報研究基盤のイメージ図(出典:農研機構)
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 スーパーコンピュータの導入効果の1つとして、病害虫の発生状況を画像処理によって把握する時間が、以前の約100倍(理論値:87倍)高速になった。1ヘクタールのジャガイモ畑の画像からウイルス病発病株を検出する時間は、従来の計算機資源で約200時間(個人のPCでは500日)かかるが、紫峰なら2時間で終わる。

 農研機構内に分散するデータを統合した大規模データベースの効果としては、過去の栽培記録や気象データなどから、作物の生育や品質を予測しやすくなる。また、貴重な学習データや開発した解析手法などを組織内で共有できるので、これらを他の地域や他の作目に適用しやすくなる。

 農研機構では今後、スーパーコンピュータと大規模データベースを用いたAI技術に関する教育を進める。数年以内に、農研機構に400人のAI研究者を育成する。

●Next:1PFLOPSスパコン、統合データベースの構成

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