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NEC、ベクトル型スパコン新機種「SX-Aurora TSUBASA B401-8」、水冷で実装密度を2倍に

2020年6月29日(月)日川 佳三(IT Leaders編集部)

NECは2020年6月29日、ベクトル型スーパーコンピュータ「SX-Aurora TSUBASA」の新機種を発表した。データセンターでの利用を想定した最上位モデルの新機種「SX-Aurora TSUBASA B401-8」である。新機種は、水冷方式の採用によって、単位面積あたりの実装密度を従来機比で2倍に高めた。新機種は、東北大学のサイバーサイエンスセンターから大規模科学計算システムとして受注した。

 「SX-Aurora TSUBASA」は、NECのベクトル型スーパーコンピュータ「SXシリーズ」の現行機である(関連記事NEC、x86とベクトルプロセッサを組み合わせた新型スパコン「SX-Aurora TSUBASA」)。特徴は、ベクトルプロセッサとメモリーを搭載したベクトル演算ユニット「ベクトルエンジン」を、PCI Express接続型の拡張カードの形状とし、汎用のx86サーバーに搭載して動作するようにしたこと。

 OSはLinuxが動作する。ユーザーから見れば、Linuxが動作する通常のx86サーバーとして使える。アプリケーションも、x86向けに書かれたコードをそのまま利用できる。付属している専用のコンパイラ(Fortran、C、C++)を使って再コンパイルするだけで、ベクトルエンジン上で動作するアプリケーションを得られる。ベクトルエンジンを使うための専用のコーディングは不要である。

水冷方式でベクトルエンジンの実装密度を2倍に

 今回、データセンターでの利用を想定した最上位モデルを刷新した(写真1)。新機種の「B401-8」では、水冷方式を採用し、単位面積あたりの実装密度を従来機種「A511-64」との比較で2倍とした。ベクトルプロセッサの処理性能を従来比で25%向上させ、ベクトルエンジン単体の性能も高めた。

写真1:SX-Aurora TSUBASA B401-8の外観(出典:NEC)写真1:SX-Aurora TSUBASA B401-8の外観(出典:NEC)

 ソフトウェア面も強化した。まず、ベクトルエンジンをホストするPCサーバー機のCPUとベクトルエンジンを協調動作させるためのソフトウェア開発キットを用意した。このうちの1つ「Vector Host Call」を使うと、PCサーバーのCPU向けにコンパイルした共有ライブラリを、ベクトルエンジン側のアプリケーションから呼び出せる。また、「Vector Engine Offload」を使うと、ベクトルエンジンをアクセラレータとして使える。CPU側で動作するアプリケーションの一部の処理をベクトルエンジンにオフロードできる。

 AI領域向けのソフトウェア機能も強化した。NECが開発したミドルウェア「Frovedis」により、統計的マシンラーニング(機械学習)処理の高速化を図った。アプリケーションの開発環境として、マシンラーニングのフレームワーク「TensorFlow」を使えるようにしたほか、プログラミング言語のPythonを使えるようにした。

 アプリケーションソフトの品揃えも増やした。特に、半導体や自動車などの製造業に向けて、製品開発や基礎研究のスピードアップに必要なアプリケーションソフトを追加した。電子機器を効率的に設計するために有効な電磁場解析用ソフトウェアや、材料の原子構造を解析して素材としての特性を分析・予測するために用いる計算化学用ソフトウェアなど、合計7種を用意した。

●Next:東北大学が稼働させる第2世代スパコンシステムの概要

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