[調査・レポート]

AIの導入領域はコスト削減や業務効率化が先行、新規事業や顧客接点はこれから─MM総研

2020年7月17日(金)日川 佳三(IT Leaders編集部)

MM総研(MMRI)は2020年7月17日、国内企業7487社におけるAI(人工知能)の導入実態を発表した。2020年5月末時点で、何らかのAIを導入している企業は15.1%、検討企業は15.7%、両者を合わせると30.8%となった。調査では、Webアンケートによって、深層学習や機械学習をともなう、画像認識・音声認識・データ予測などの、法人向けシステム・ソフトウェア・クラウドサービス全般の導入状況を聞いた。

 調査結果によると、7487社のうち、何らかのAIを導入している企業(AI導入済み企業)は15.1%(1135社)、検討企業は15.7%(1177社)となり、両者を合わせると30.8%(2312社)となった。AI導入済み企業のIT投資全体に占めるAI投資の比率(AI投資比率)は、2019年度は14.2%だった。2020年度以降の計画も合わせて聞いたところ、AI投資は平均約2ポイントずつ増え、2022年度にはほぼ2割となる見込み。AI導入済み企業では、IT投資におけるAI投資の比率が高まる。

 AIの適用分野については、課題優先度とのミスマッチが見られた。7487社に対して現在抱えている業務課題を聞いたところ、「新規顧客の獲得」(24.8%)、「販売、営業、マーケティングの強化」(21.6%)、「新しいビジネスの創出」(21.0%)がトップ3だった。しかし、業務課題に感じている回答が多い業務ほどAIの導入が進んでおらず、AI導入率はいずれも1割程度に留まる。

 業務課題別のAI導入状況を見ると、「物流作業・管理の最適化」を課題として挙げた企業の27.7%がAIを導入しており、最多だった(図1)。続いて「研究開発力の強化」のAI導入率が26.8%、「設計・工程削減」が26.7%となった。コスト削減や業務効率化などバックオフィス的領域へのAI導入が先行し、新規ビジネスの創出や顧客接点の強化などのフロント領域へのAI導入は始まったばかりである。

図1:業務課題別のAI導入状況(出典:MM総研)図1:業務課題別のAI導入状況(出典:MM総研)
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 業務課題の上位となった「新規顧客の獲得」、「販売、営業、マーケティングの強化」、「新しいビジネスの創出」の3項目で、利用しているAIベンダーを確認した。Microsoft(23.0%)とNTTコミュニケーションズ(22.5%)の利用率が高い。

 AI導入済み企業のAI選定時の重視ポイントは、「費用」、「システム・サービス移行業務の容易さ」、「既存システム・サービスとの親和性」が上位だった。

 Microsoftは、ボットサービスや学習済みAI、カスタムAIなど各種のAIサービスを提供しており、目的に応じて使い分けるニーズに、品揃えの豊富さで応えている。NTTコミュニケーションズは、人材強化のためのAIサービスを提供するほか、自然言語解析AIエンジン「COTOHA(コトハ)」を活用したコンタクトセンターなど業務を支援するメニューも整えている。

 AIを導入する際に障壁だと感じる点、または導入しない理由は、「導入効果が分からない」(19.0%)が筆頭に上がった。業務課題の上位となった「新規顧客の獲得」、「販売、営業、マーケティングの強化」、「新しいビジネスの創出」など、投資対効果が見えにくい分野の導入には二の足を踏んでいる。

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