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[イベントレポート]

欧米企業に続け─コロナ禍の中でこそ「プロセスマイニングによる経営改革」を断行する

プロセスマイニング コンファレンス 2020 Summer LIVE オープニングリマークス&特別講演

2020年8月19日(水)齋藤 公二(インサイト合同会社 代表)

企業が市場の生き残りを賭けてデジタルトランスフォーメーション(DX)に向かう中、突然世界を襲ったコロナ禍。経営者はもちろん、そしてIT活用によるDX推進を担うIT部門にとっても試練の時を迎えている。そんな中、DXの前提となる根源的な取り組みとしてのプロセスマイニングの導入・活用を考察する「プロセスマイニング コンファレンス 2020 Summer LIVE」(2020年6月30日

 主催:インプレス IT Leaders)が開催された。本稿では、コンファレンスの基調となるオープニングリマークスと特別講演からポイントをピックアップして紹介する。

●ユーザー実践ディスカッションはこちら:プロセスマイニングの取り組みに“完了”はない、継続的活動で日々成果を─先行事例解説

旧弊にとらわれて進まなかった"水面下の変革"

 この数カ月、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的拡大によって、企業はさまざまな対応を迫られた。リモートワークや在宅勤務、ペーパーレス、それらに伴う業務の新しい進め方の策定、勤務管理、業績評価の整備など、外出自粛の中で緊急対応に動いた企業は多い。

 こうした取り組み自体はコロナ以前から必要性が叫ばれ、一部の企業ではデジタルトランスフォーメーション(DX)につながる重要な施策として積極的に推進してきたものでもあった。コロナ後はこれらの取り組みを一時的なものにはせず、ニューノーマル(新常態)として恒常的にしていくことが求められつつある。

 しかし、さまざまな環境要因が絡み合う中で、実際に取り組みを進めるのは簡単なことではない。プロセスマイニング コンファレンス 2020 Summer LIVEのオープニングリマークスを務めたインプレス田口潤 編集主幹(写真1)は、本題に言及する前に、コロナ対応で国や企業が取ったさまざまな施策を紹介しながら、次のように解説した。

 「テレワーク、リモートアクセスの環境を整備しても、日本企業の背後にある印鑑や紙の文化、ITリテラシーの向上といった領域にまで踏み込まなければ、それらは一時的な取り組みで終わってしまうでしょう。同様のことは、サプライチェーンの見直しやペーパーレス化、そしてDXの取り組みなどにも当てはまります。表面的な対応だけでなく、それを背後で支える業務プロセス自体を変革が求められています」

 それを絵にした図1を示して同氏はこう続けた。「DXに向かうにあたって何を“形質転換”していくべきでしょうか。サービス化、○○Techといった、昨今多くの企業が取り組む施策は“氷山の一角”にすぎません」と同氏。水面下には、これまで棚上げしてきた施策が大きな氷塊のごとく潜んでおり、それらに目を向けて取り組んでいくことが改革の本丸となるという。

図1:デジタルトランスフォーメーション、我々は何を“形質転換”するべきか?
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 「DXとは、単なるデジタル化ではなく、経営ビジョンや企業文化を変革し、人材育成のあり方や顧客エンゲージメントの手法を変革していくことです。そのためにIT部門は、水面下の改革に動く必要があります」(同氏)

写真1:インプレス 編集主幹 田口 潤

EAが再び注目を集めている理由

 その水面下のサービスを根本で形成するのが業務プロセス(ビジネスプロセス)である。だが、何から手を付けてよいのか手をこまねいている企業は少なくない。コロナ以前から、働き方改革、サプライチェーン改革、DX、アジャイルなシステム/サービス開発、データ収集・分析、レガシーモダナイゼーションなど、IT部門がなすべきことには枚挙にいとまがない。田口編集主幹は、シンプルな考え方が重要だとしてこう話す。

 「軸になるのは、(1)全体像の可視化、(2)ボトルネックの洗い出し、(3)優先順位の検討、(4)関係者の合意形成の4つです。そして今、これらを実践するにあたって不可欠な施策としてエンタープライズアーキテクチャ(EA)とプロセスマイニングがあります」(同氏)

 EAは、複雑化する組織やビジネス、ITの全体像を包括的に把握し、ありたい姿を明らかにするために有効なアプローチで、本誌読者ならご存じのように数十年の歴史がある。このEAが近年、欧米企業の間で、経営者や事業責任者、IT、デジタル推進チームなどが現状の認識を共有し、改善や変革を円滑に進めるためのツールとして再び採用が広がっているという(図2)。

図2:今日のEAは経営コンサルティングのようなもの
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X線のように企業の実態をあぶり出すプロセスマイニング

 そして本題のプロセスマイニングだ。ERPなどの業務システムのイベントログを収集し、そこから組織の業務プロセス(ビジネスプロセス)を可視化・分析して、見直しを図りながらプロセスを最適化していく取り組みで、欧米で先行して火が付いた。

 改めて業務プロセスという概念だが、同氏は「特に日本では、経営層と営業や生産などの現場の間でプロセスの認識の乖離がある/システムも部門(業務)ごとに構築される/現場部門は互いに“あうんの呼吸”でプロセスをこなそうとする、といったことから、エンドツーエンドのプロセス最適化を担う人や部門が存在しないままできています」と指摘。そのため、一定の指標や基準に基づいた可視化や定量化は難しいものとされてきたという。

 そこでプロセスマイニングの出番となる。「医療機関がレントゲンやCT、MRIを用いて人間の身体の内部を精査するように、プロセスマイニングは企業活動の実態、すなわち業務プロセスを可視化してくれるのです」と同氏(図3)。各種システムのイベントログにあるID(対象)、アクテビティ(処理内容)、タイムスタンプ(時刻)を軸に、演繹的推論、帰納的推論などの手法を用いて業務プロセスを再現し、ループや中断なども判別できる(図4)。

図3:プロセスマイニングは人体に対する“X線のようなもの”
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図4:プロセスマイニングの仕組み
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 「ただし、プロセスマイニングは発展途上にあり、現時点で万能というわけではありません。そのため、EAによって企業経営の全体像を把握したうえで、自社に最適なツールを選択するなど、IT部門にはその戦略と工夫が求められるのです」(同氏)

●Next:DXの前提に業務プロセス改革がある─崖を越えるのになすべきことは

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