[ユーザー事例]
プロセスマイニングの取り組みに“完了”はない、継続的活動で日々成果を─先行事例解説
2020年8月27日(木)齋藤 公二(インサイト合同会社 代表)
国内でもプロセスマイニングによる経営改革に着手する企業が増えている。しかしながら、現段階では業種ごとにベストプラクティスが揃っている状況ではなく、導入で得られる価値を理解したユーザーが主体的に取り組む必要がある。「プロセスマイニング コンファレンス 2020 Summer LIVE」(2020年6月30日 主催:インプレス IT Leaders)のクロージングでは、この分野のエキスパートによるディスカッションを通じて、プロセスマイニングにおけるユーザーにとっての重要な観点と、実際の取り組みの進め方が示された。
●オープニングリマークス&特別講演レポートはこちら:欧米企業に続け─コロナ禍の中でこそ「プロセスマイニングによる経営改革」を断行する
プロセスマイニングへの関心が高まるなか、日本国内での取り組みも報告され始めている。プロセスマイニング コンファレンス 2020 Summer LIVEのユーザー実践ディスカッションでは、ユーザーにアドバイスや導入支援を行う専門家とコンサルティングファーム担当者が、現在進行中のユーザー事例を紹介した。
パネリストとして出演したのは、一般社団法人プロセスマイニング協会 会長で上智大学 特任教授の百瀬公朗氏、アビームコンサルティング 執行役員 プリンシパル P&T Digital ビジネスユニットの大村泰久氏、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)サービスデザイングループ エグゼクティブエンジニアの松本直樹氏の3氏である。モデレーターはインプレス IT Leaders 編集長の河原潤が務めた(画面1)。
"終わりのあるプロジェクト"とは違うプロセスマイニング
セッションの冒頭、百瀬氏は、プロセスマイニングが欧米企業の間でどのように広がり、どんな取り組みがなされているのかを概観した。ドイツ アーヘン工科大学 教授のウィル・ファン・デル・アールスト(Wil van der Aalst)氏が1999年にオランダのアイントホーフェン工科大学(TU/e)で学術研究を始めたのが端緒で、2004年にはオープンソースのプロセスマイニングツール「ProM」の初版がリリース、2011年には独Celonisが設立され、本格的な商用ツールの提供が始まる。同社は欧州の顧客の支持を得て、2018年にはユニコーン企業となっている。現在、プロセスマイニングベンダーを標榜する企業は世界で30社を超え、1つの市場が形成されている──このような進展をたどってきた。
百瀬氏は、プロセスマイニングへの取り組みにおいては、再現性と実行可能性を高めることが最も重要だと説明する(画面2)。「これは他のITプロジェクトのような終わりのあるものではなく、継続的な活動であり、成果は日常的に得ることになります。また、1つのプロセスではなく、改善したいと思うすべてのプロセスについて取り組むべきものです。アールスト氏は『プロセス衛生(Process Hygiene:ビジネスプロセスの衛生管理)』という言葉を用いて、企業が日々当たり前に行う活動として取り組むことが重要だとアドバイスしています」(同氏)
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続いて同氏は、デジタルフィットレート(Digital Fit Rate)という指標で、受注から出荷、請求、回収に至るOrder to Cashの可視化を図った独シーメンス(Siemens)の事例(画面3)や、AIカメラで航空機の整備状況を撮影するだけでプロセスマイニングによる可視化・分析対象にする独ルフトハンザ航空傘下のLCC、ルフトハンザ・シティライン(Lufthansa CityLine)の事例(画面4)を紹介した。
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とりわけ後者の事例は先駆的だ。百瀬氏は、ルフトハンザ・シティラインの取り組みは、機体整備のようなシステムログがない業務においても、AIカメラ1つでイベントログを生成しプロセスマイニングを行うことができることを実証したと説明する。「いずれの事例も、最も頻度の高い経路情報をハッピーパス(Happy Path)としてペトリネット(Petri net)で記述することで、これまで見えなかったものを見えるようにしています(画面5)。それにより次の一歩に進むことができます」(同氏)
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●Next:国内先行事例から見えてきたプロセスマイニング導入の勘所
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