日立製作所は2020年12月11日、金融機関を対象に、融資などの契約業務を電子化し、従来の対面による紙中心の事務手続きをWeb上で一括して行える「金融機関向け電子契約ソリューション」を販売開始した。提供は2021年3月1日に開始する。契約に向けた事前準備から契約書の署名、事後の書類管理まで、一連の事務手続きを電子化し、ペーパーレス・ハンコレスを実現する。価格は個別見積もりとなっている。
日立製作所の「金融機関向け電子契約ソリューション」は、融資など実印相当の本人確認が必要な契約業務において、書類作成などの事前準備から、電子証明書の発行、契約書への署名、契約後の書類管理まで、金融機関や契約者が行う一連の手続きを電子化するサービスである(図1)。
印鑑証明書に代わる電子証明書を活用した電子署名機能を備え、対面での書類のやり取りによる事務手続き上の手間や手戻りを削減し、業務を効率化する。
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契約者は、紙の契約書への記入や押印に代わり、契約書のPDFファイルへの電子署名で取引実行が可能になる。契約事務のペーパーレス・印鑑レスを図り、事務効率の向上を可能にする。金融機関が提供する各種サービスの電子化を加速し、非接触・リモートといった、金融機関における「ニューノーマル」への対応に向けたデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援する。
電子契約では、契約内容の正当性や信頼性を担保するため、第三者機関である認証局が発行する電子証明書とタイムスタンプを用いた電子署名が個別に必要になる。金融機関向け電子契約ソリューションでは、認証局への契約者情報の登録や、契約者が電子証明書を利用するためのID・パスワードの発行など、電子署名に必要となる認証局との手続きもシステム上で一括して行える。
既存システムとの連携を可能にする標準APIを備えているため、審査システムなど関連システムとのシームレスなデータ連携を行える。従来の審査システムと契約システム双方でのデータ登録が不要となることで、金融機関の事務負荷を軽減できる。
契約事務を電子化することで、ペーパーレス・印鑑レスを促進し、紙の保管場所の確保や事務センターへの郵送など、従来要していた管理コストの削減も図れる。
同一契約者で電子契約と紙の契約書が混在する場合にも、書類を一元管理できる。融資の実行後は、各種書類の電子データを契約者ごとにシステム上で保管することができる。
契約者は、Webサイト上の専用ページ(マイページ)から、いつでも審査書類のやり取りや、電子署名、契約内容の確認ができる。時間や場所に制約されずに、手軽に手続きを進めることができる。
製品提供の背景について同社は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大により、国内の金融機関は、緊急融資の対応や保険金支払いの迅速化、Webサービスの充実化など、デジタルを活用した変革が急務になっている状況を挙げる。「特に、融資業務では、書面での手続きが一般的で、融資の実行までに、審査書類の提出や契約書の受け渡しなど、契約者との面会は複数回にわたる」(同社)
「また、紙の契約書には、地方自治体や法務局が発行する印鑑証明書が必要となるため、契約者は事前に印鑑登録を行い、発行された印鑑証明書を金融機関に提出するプロセスが発生する。金融機関では、契約書に押印された印章と印鑑証明書を照合し、印鑑相違があった場合は再提出が必要となり、手続きが長期化するなど、効率面での課題が多い」(同社)
融資の実行後も、金融機関は、顧客から受領した融資申込書類や融資審査で使用した稟議書など、多い場合には100枚以上におよぶ書類を保管するため、営業店内や事務センターなどでの保管場所の確保や、郵送費・維持管理コストの発生も課題になっているという。