AIやIoTなどの、いわゆるデジタル技術を活用するための人材を、どのように確保すればいいか?今日、多くの企業が直面し、頭を悩ませる問題の一つがこれだろう。ビジネスイニシアティブ協会(BSIA)とCIO賢人倶楽部は、このデジタル人材に焦点を合わせたシンポジウムを8月31日に開催する。本誌もメディアスポンサーとして協力しており、登録すればオンラインで聴講できるのでお薦めしたい。
多様化する一方のクラウドサービス、ビッグデータ、AIやIoT、あるいは ”○○Tech”…。言葉や概念としては馴染みになったものの、これらのデジタル技術をビジネスや業務で実際に活用するとなると、「まだこれから」といった企業が少なくないだろう。どんな業務にどう使えばいいのか悩ましいし、外部ベンダーに頼みたくても依頼の仕方がわからない。DX(デジタルトランスフォーメーション)となると、なおさらである。
それも当然で、デジタルに関する知識や経験を持つ人材、あるいは業務に適用するノウハウを備えた人材などが、絶対的に不足している。20年前、10年前には存在していなかったデジタル技術なのだから、多くの企業に担う人材がいないのは致し方ないだろう。しかし、よほど競争力やブランド力がある製品を有する企業でもない限り、デジタル化やDXは避けて通れないから、放置するわけにはいかない――。
こうした問題意識の下、ユーザー企業主導のIT/デジタル活用を訴求しているビジネスイニシアティブ協会(BSIA)と、CIO同士が知見や情報を共有するコミュニティであるCIO賢人倶楽部は、デジタル人材に焦点を当てたシンポジウムを共催する。タイトルは「デジタル推進の鍵 変革をリードする人材とは」(https://seminar-reg.jp/bsia/2021/)、会期は8月31日(火)。何らかのヒントを得られるはずなので、時間があれば聴講をお薦めしたい。
プログラムは上記の申し込みサイトを見ていただきたいが、注目点は先進企業2社による講演。産業用ランプや光源装置大手であるウシオ電機の経営統括本部IT戦略部長の須山正隆氏と、地方の自動車整備工場を業界大手に急成長させたファーストグループの代表 藤堂高明氏が登場する。
ウシオ電機は、プロジェクターの高輝度ランプやスキャナー、レーザープリンターなどのハロゲンランプ、電子部品用露光装置などで世界的に高いシェアを持つ「光」の会社。現在は中核のランプ事業に加え、光技術を活用した環境衛生分野やエレクトロニクス、メディカルといった成長領域での収益拡大を目指している。
2015年に同社に移った須山氏は、SAP ERPのクラウド移行やNotesからの脱却など既存システムの大幅な見直しを行ってきた。IoTの導入やローコードツールを使ったデータ収集プラットフォームの開発など、製造現場のデジタル化推進も取り組んでいる。
その一方で須山氏が行ってきたのが、ITやデジタルに携わる人員の増強。新卒社員の配属や社内公募による現場部門からの異動など増員(量)に加えて、ストラテジスト、アナリスト、アーキテクト、エンジニアなど人材像を明確にして専門性を高める教育を進めている(質)。シンポジウムでは、このあたりの取り組みが詳しく語られる予定だ。
デジタル化への取り組みで頭を悩ませているのは、大企業だけではない。デジタル化が加速させる時代の変化の中で苦境に立つのが中小企業だ。ファーストグループの藤堂氏は15年ほど前に家族が経営していた奈良県にある自動車整備工場を引き継いだ。当時、17億円の借金があったという。
そこから社員を育成し、様々なサービスを開発・提供し、近隣の整備工場をM&Aで事業承継するなどして、現在では奈良以外の各地に店舗を展開する業界注目の”老舗ベンチャー”になった。自動車の整備はもちろん、例えば売買、自動車や駐車場のシェアリングなど幅広く行う。
例えば地方では車が必須だが、高齢化も進む。そんな中で自動車を手放すのを利用者の立場でサポートするのが売買だ。自動車整備という枠に留まらないよう、企業理念を「カーライフ革命で人々に喜びと感動を」に再定義し、「Car Life Tech」という登録商標も取得した。
様々なサービス展開と成長を支えるのがITとデジタル。藤堂氏自身、家業を継ぐ前は大手通信会社で事業開発に携わった経験を持ち、ITやデジタルに精通するが、一人でできることは限られている。自らサービスを企画・開発することで社内の人材を育て、同時にCar Life Techを標榜することで外部の有能な人材を惹きつける――講演ではそんな取り組みの実際が明かされる予定である。