[調査・レポート]

データ侵害で被る損失が過去最高額に、1回あたり平均で424万ドル─米IBM Security調査

日本は世界平均を上回り、1回あたり469万ドルのコストに

2021年8月25日(水)日川 佳三(IT Leaders編集部)

日本IBMは2021年8月25日、セキュリティ調査レポート「2021年データ侵害のコストに関する調査レポート」を公開した。米IBM Securityが世界規模でデータ侵害の経済的影響を調査した結果をまとめたもの。1回のデータ侵害インシデントでかかるコストは平均424万米ドル(約4億6500万円)で、17年前に調査を開始してから最高額を記録した。日本の平均コストは世界平均を上回り、469万ドル(約5億1480万円)となった。

 「2021年データ侵害のコストに関する調査レポート」は、米IBM Securityが世界規模でデータ侵害の経済的影響を調査した結果をまとめた年次のグローバル調査レポートである。

 同レポートは、2020年5月から2021年3月の間に発生した実際のデータ侵害に対する詳細な分析に基づいている。IBM Securityが、ブランドエクイティ、顧客、従業員の生産性への損失に対する法律面、規制面、技術面の活動を含む数百のコスト要因を考慮して作成している。

 データ侵害のインシデント発生で、その対処にかかるコストは、1回の侵害あたり平均で424万米ドル(約4億6500万円)に達した。17年前に調査を開始してから最高額を記録した。前年比で10%増加している(図1)。

 日本の平均コストは世界平均を上回り、469万ドル(約5億1480万円)となった。なお、日本の前年度は419万ドルだった(図2)。

図1:データ侵害1回あたりの平均コストの推移(出典:日本IBM)図1:データ侵害1回あたりの平均コストの推移(出典:日本IBM)
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図2:国または地域別のデータ侵害にかかる平均総コスト(単位:100万ドル、出典:日本IBM)
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パンデミックがコスト増の主要因

 IBM Securityは、データ侵害のコストが急増した要因として、パンデミックによる業務オペレーションの急激な変化を挙げる。2020年のパンデミックでは、多くの企業が従業員のリモートワークを奨励または義務化し、60%の組織がクラウドベースの業務に移行した。こうした変化にセキュリティが追い付いていないという。

 データ侵害のコストが増加した要因の1つに、リモートワークを挙げている。リモートワークが要因の場合の平均コストが496万ドルに対して、リモートワークが要因でない場合の平均コストは389万ドルである(図3)。

図2:リモートワークがデータ侵害コストに与える影響(出典:日本IBM)図3:リモートワークがデータ侵害コストに与える影響(出典:日本IBM)
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 業務オペレーションが大きく変わった業界として、特に医療業界のデータ侵害コストが急上昇し、1件あたり923万ドル(前年比200万ドル増)に達した。次いで金融(572万ドル)、医薬品(504万ドル)だった。小売、メディア、接客業、公共部門においても、全体的なコストは低いものの、2020年に比べてコストが大幅に増加している。

 また、業務オペレーションを変えるべくデジタルトランスフォーメーション(DX)を実施しなかったと回答した組織のデータ侵害コストは、平均よりも75万ドル高くなっている(平均比16.6%増)。

ID/パスワードの漏洩がデータ侵害の最多要因

 最も多かったデータ侵害の原因は、漏洩したユーザー認証情報であり、データ侵害の20%を占めている(図4)。IBM Securityは、認証情報の漏洩はデータ侵害の主要な要因であると同時に結果でもあり、企業にとっては複合的なリスクであると指摘する。

図3:データ侵害の最多要因はユーザー認証情報の流出(出典:日本IBM)図4:データ侵害の最多要因はユーザー認証情報の流出(出典:日本IBM)
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 調査対象者の82%は、複数のアカウントでパスワードを使い回していると回答した。データ侵害の被害にあった調査対象企業の約半数(44%)は、顧客の個人情報(氏名、電子メール、パスワードなど)を流出させている。

 顧客の個人を特定できる情報(PII)の喪失コストは、他のデータタイプと比べて高額である。全体の1レコードあたりの平均コストが161ドルであるのに対し、PIIの1レコードあたりのコストは180ドルだった。また、漏洩した認証情報を原因とするデータ侵害は検知に最も時間がかかったことが判明した。特定までに平均250日を要している(平均的な侵害の場合は212日)。

●Next:データ侵害コストを抑えるためのアプローチは?

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