[技術解説]

業務システムからIoTまで横断的につなぐ─IT/OTデータ連携の新たな仕組み

Dockerコンテナの分散技術を用いた「SMARTUNIFIER」─独AmorphのCEOに聞く

2022年2月2日(水)田口 潤(IT Leaders編集部)

ERPやSCM、PLMといった業務システム群だけでなく、工場のラインや製造機械、倉庫のマテハン設備などさまざまな機器や人、モノ(Things)を含めてデータ連携させる──。特に製造業のCIOやCDO、ITやデジタルを担う部門にとっては難題だが、避けては通れない重要なテーマだ。そんな中、IT/OTデータ連携ソフトウェアを手がける独Amorph Systems(アモルフ システムズ)が、2022年1月より日本でのビジネスを始動した。Dockerコンテナを応用したユニークな仕組みを備える同社のソフト「SMARTUNIFIER」は有効解となるだろうか。

OTに関わるデータを蓄積・活用するためには?

 今日、どんな企業もデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進を迫られている。その大前提になるのが、企業の内外で起きていることを把握するためのデータをどうやって収集するかだ。デジタル化とはすなわち、「人の行動や機械の状態、モノの動き、業務遂行の実態などをデータで捉えること」と理解できるので、データ収集・活用がDXへの第一歩であることは当然だろう。

 付け加えて言えば、スマートデバイスやクラウドサービス、IoTなどはデータを収集・蓄積する手段であり、あるいはマシンラーニング(機械学習)は大量のデータから有意な知見を見いだす道具と位置づけられる。こう捉えると、一部の企業でデジタル化やその次に推進すべきDXが必ずしも順調とは言えない理由も察しがつく。本来“データファースト”であるべきなのに、“手段や道具ファースト”の罠に陥っているケースが少なくないのだ。

 では、データを収集し、利用可能な形で蓄積するにはどうすればよいだろうか? オフィス業務をサボートする情報システム=IT(Information Technology)に限れば、データウェアハウス(DWH)やEAI、ETLといったデータ統合ツールを駆使すれば決して容易ではないが、何とかなる。しかし、製造業や運輸業などの機械やモノがある現場で生成される、いわゆるOT(Operational Technology)に関わるデータは、そうはいかない。既存のデータ統合ツールは当然IT向けであり、PLC(Programmable Logic Controller)やマイクロコントローラ上で稼働するようには設計されていないからだ。

従来のIT/OT連携の仕組みでは、デジタルツインは実現困難

 加えてOTの場合、使用する通信プロトコルやデータ形式は、PLCなどのデバイスメーカー/ベンダーごとに異なるのが普通。デバイスの種類は多種多様だし、中にはマイクロ秒やミリ秒単位のリアルタイム制御を行うデバイスもある。必然的にデータの種類もさまざまでデータ量も多くなるので、各種のデバイスが生成するデータをすべて蓄積するのは現実的ではない。設置場所からして有線LANで接続できるとも限らないため、伝送容量に限りがあることも大きい。

 こうしたことから、ITとOTを連携させる現実解としては、ISA(International Society of Automation:国際自動制御学会)がまとめた「ISA95」に代表されるビラミッド型のデータ連携モデルが採用されてきた(図1の左)。製造業のシステム群をレイヤーごとに階層化し、レイヤーを超えたデータのやりとりを最小化しつつ、レイヤー内でデータを集中して収集・利用する形だ。複雑性を排除できるため、ISA95に準拠するかどうかはともかくとして、長く参照されてきた。

図1: 従来のピラミッド型データ連携には限界がある(出典:Amorph Systems)
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 しかし、構成要素が少なく、レイヤー間の連携も限定的だった以前ならともかく、さまざまなデバイスに加えてウェアラブルデバイスを装備する現場作業者もIoTでつながる今日、ピラミッド型モデルでは十分とは言えない。レイヤー内で連携を集中管理するので、つながる機器が増えるたびに何らかの設定を変更する必要が生じたり、例えばコントロールレイヤーの集中型システムには接続可能なデバイスに制限があるなど拡張性が限られたりするからである(図1の右)。

 このため生産ラインや工場全体、あるいはサプライチェーンを全体にわたってリアルタイムに近い形で可視化、監視、コントロールしようとしても実現できない。つまり、DXでよく取り組まれるデジタルツインを構成しようとしても限界があり、絵に描いた餅にとどまる可能性がある。このような限界を打破するのに何らかの方法があるだろうか?

デジタル技術の進化で階層型からネットワーク型の連携へ移行

 実はこの方法について2021年10月、ISAが示唆に富む論文を公開している。原題は「Beyond the Pyramid: Using ISA95 for Industry 4.0 and Smart Manufacturing」。「ピラミッド(モデル)を超えて:Industrie 4.0とスマート製造のためのISA95の活用」である。この論文ではOTにおけるデータ連携について、次の6項目を指摘している。

●データストレージはもはや障壁ではない(クラウドストレージ)
●マシンラーニングやAIといった新しい処理アルゴリズムが開発されている
●ビッグデータを妥当な時間で処理できる計算能力が得られる
●デバイスやモノ(Things)はIoTによりデータをアクティブに送受信できる
●無線の5Gネットワークによるデータ転送は有線ネットワークと遜色がない
●相互運用性(ISO、IEC、ITU)を可能にする標準が開発されている

 つまり、今日ではデータ連携に関わるテクノロジーが様変わりし、技術的な制約はなくなったとの指摘だ。そのうえで、「(このように大きな進化があるため)明日の製造システムは、現在とは根本的に異なると考えるのが妥当である。想定されることの1つは、従来の階層型ピラミッド型アーキテクチャからネットワーク型アーキテクチャへの移行である」と、モデルを拡張・進化させることを明言する。そのイメージとして挙げられているのが図2である。

図2:ITとOTのデータ連携はネットワーク型へ向かう(出典:ISA)
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写真1:独Amorph Systemsの創業者兼CEO、フランク・フラウンホーファー氏。20年以上にわたってさまざまな製造・物流企業のITアーキテクトを務めてきた経験を持ち、開発・経営全般を統括する(出典:Amorph Systems)

 前段の記述が長くなったが、ここからが本題。CPU性能の向上、メモリーの大容量化、通信の高速化などを背景にして、製造業や運輸・エネルギーなどITとOTを構築・運用する企業におけるデータ連携の基盤や仕組みが図2のようになるとして、それを具体的にどう実現するかは論文には書かれていない。しかし、それを可能にするソフトウェアがすでに存在するのだ。

 開発したのは、Amorph Systems(アモルフシステムズ)。独シュトゥットガルトに本拠を置くソフトウェアベンダーで、「SMARTUNIFIER」という名称のソフトウェアを提供している。同社は2022年1月に日本支社を設立して市場開拓を始めている。

 以下、同社創業者兼CEOのフランク・フラウンホーファー(Frank Frauenhoffer)氏(写真1)に話を聞く機会があったので、SMARTUNIFIERを中心に紹介する。このソフトが、製造業などでエッジデバイスから企業ITまでさまざまなシステムをデータ連携させる場合での、あるいはその先にあるデジタルツインを構築する場合での、唯一ではないにしても有力な方法の1つと考えられるからだ。

●Next:IT/OTのデータ連携を可能にするモダンな仕組み

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