[事例ニュース]
昭和電工、量子着想技術で半導体材料の配合探索時間を7万2000分の1の数十秒に
2022年2月10日(木)日川 佳三(IT Leaders編集部)
昭和電工(現レゾナック)は2022年2月10日、半導体材料の最適な配合探索にかかる時間を、量子コンピューティング技術を活用し、従来の数十年以上から数十秒へと大幅に高速化できることを実証したと発表した。昭和電工のAIモデルと富士通のデジタルアニーラを連携させて実現した。
昭和電工は、半導体材料の最適な配合探索にかかる時間を、量子コンピューティング技術の活用によって、従来の数十年以上から数十秒へと大幅に高速化できることを実証した(図1)。昭和電工のAIモデルと富士通の量子着想技術を連携させて実現した。
半導体の材料は、多数の材料を様々な比率で配合して成り立っている。これらの種類と量の配合を最適化することによって、性能を高めている。しかし、同社が取り組んでいる開発テーマの配合の組み合わせは、理論上10の50乗を超える。
同社は、材料の複雑な配合条件から半導体材料の特性を予測するAIモデルを独自に開発している。しかし、材料の種類と量の配合の組み合わせが膨大であることから、AI技術だけで探索した場合、最適な性能を得るには数十年以上を要する。このため同社は、理論上の組み合わせのうちの一部だけを抽出して最適な配合の組み合わせを探索していた。
今回同社は、探索時間を短縮するため、量子技術に着想を得た富士通の「デジタルアニーラ」に着目した(関連記事:富士通、組み合わせ最適化を解くデジタルアニーラを8192ビットに拡張、オンプレ設置も可能に)。これを活用するため、材料の配合条件から半導体材料の特性を予測するAIモデルを、統計力学の解析手法であるイジングモデルで表現することを試み、成功した。これにより、AIモデルとデジタルアニーラとの連携を実現した。
デジタルアニーラは探索時間短縮の効果があった。配合の種類と量を限定した条件下で従来のAIモデルだけを使って探索した場合と比べて、探索時間を約7万2000分の1の数十秒へと短縮できた。さらに、半導体材料として約30%高い性能を実現する配合が得られた。