[技術解説]

人と山をつなぐ、ハートフルな登山地図GPSアプリ「YAMAP」─ヤマップ

Ruby開発最前線─Ruby bizグランプリ2021大賞サービスを紹介(1)

2022年3月10日(木)Ruby bizグランプリ実行委員会

日本発のオープンソースのプログラミング言語「Ruby」と、その開発フレームワーク「Ruby on Rails」。これらを用いて開発されたアプリケーションやサービスは数多あるが、その中から、特にすぐれたものを表彰するのが年次アワードプログラム「Ruby bizグランプリ」だ。本稿ではRuby biz Grand prix 2021の大賞に選ばれた2つのサービスのうち、「YAMAP」(開発:ヤマップ)を紹介する。

Rubyのすぐれたビジネス事例を表彰するアワード

 Rubyは、生産性を高めるフレームワークRuby on Railsと共に、世界の多くの開発現場で使われているオープンソースのプログラミング言語である。その普及を促進するために2015年に始まったのが「Ruby bizグランプリ」という年次アワードプログラムだ。Rubyの開発者まつもとゆきひろ氏の活動拠点である島根県が中心になって組織したRuby bizグランプリ実行委員会が主催し、グランプリの審査委員長をまつもと氏自身が務めている。

 アワード名のとおり、Rubyを使って開発されたビジネス用途のシステムやサービスの中から、新規性、独創性、市場性、将来性に富み、今後継続的に発展が期待できる事例を表彰する。前回のRuby bizグランプリ2020では、メディカルノートが開発したデジタルヘルスケアプラットフォーム「Medical Note」(関連記事APIを駆使して“医師と患者をつなぐ”プラットフォームを実現─Medical Note)と、tsumugが開発したワークスペース/シェアオフィスサービス「TiNK Desk」(関連記事操作はLINEから、心地よいUI/UXを追求したワークスペースサービス─TiNK Desk)が大賞を受賞している(関連記事2018~2021年のRuby bizグランプリ大賞を紹介した記事)。


Ruby bizグランプリ2021大賞
YAMAP  https://yamap.com/
開発概要:登山地図GPSアプリ
開発企業:ヤマップ
利用技術:
・Ruby on Rails
・PostgreSQL、Elasticsearch
・AWS(ECS、RDS、DynamoDB、CloudFront、Lambda、S3など)
・GCP(BigQueryなど)
・Docker、CircleCI、Looker、Kibela、Fabric、Datadog、NewRelic、Sentryなど
Rubyを採用した理由:充実したライブラリ、豊富な情報
Ruby採用効果:高速な開発、優秀な人材の採用、OSSの恩恵
審査委員長 まつもとゆきひろ氏コメント:スマホを登山用のGPSとして活用したユニークなサービスであり、電波が届かないところに対応するためのアーキテクチャが面白い。Rubyコミュニティへの貢献度が高い点も評価。

●もう1つのRuby bizグランプリ2021大賞の記事はこちら
関連記事世界最大規模のメタバース/VRイベント「バーチャルマーケット」─HIKKY

電波が通じない山中でも自分の位置がわかる

 Ruby bizグランプリ2021で大賞を受賞したYAMAPは、2013年3月にリリースされたサービスである。オフラインでも使えるGPSを利用した登山地図、登山者同士が交流できるコミュニティ機能をアプリケーションとして提供している。

 同社 Developmentグループ サブマネージャーの杉之原大資氏(写真1)は、YAMAPを作るきっかけになった出来事について次のように振り返る。

写真1:ヤマップ Developmentグループ サブマネージャーの杉之原大資氏

 「当社の代表(代表取締役の春山慶彦氏)が登山に出かけて、山中でスマホのGoogleマップを開いたのですが、そこは電波が通じない場所だったため、真っ白な画面が表示されたのみでした。でも、GPSの位置情報(青い点)だけは電波の状況に関係なく正しく表示されていました。当時、登山用のGPS機器は高価で、だれもが気軽に買えるものではなかった。そこで、もし、スマホがこのGPS機器の代わりになれば、多くの人がもっと気軽にGPSを使ってより安全な登山ができると考えたのです」

 YAMAPは、電波の届かない山の中でも現在地と行き先がわかる登山ツールとしての機能と、同じ趣味を持つ者同士で交流できるSNSとしての機能という、大きく2つの役割を持っている。SNS機能としては、ユーザーが登山で歩いた軌跡を保存した活動日記を作成したり、瞬間(モーメント)を共有したりできる、つぶやきの機能もある。活動日記には、文章やコメントに加え、登山中に撮った写真もアップロードでき、YAMAPのサイトに投稿すると閲覧したユーザーとの間に交流が生まれる。

図1:YAMAPのサービス概要(出典:ヤマップ)
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 このほか、ヤマップでは、登山保険事業、登山に必要な山道具やグッズを販売するEC事業、登山情報を発信するメディア事業など、多角的にビジネスを展開している。以下、同社のサービスのうち、YAMAPの登山ツールとしての役割から「みまもり機能」、コミュニティのあり方としての観点から「DOMO(ドーモ)」について紹介する。

登山者の安心安全、遭難救助に役立つ「みまもり機能」

 みまもり機能では、リアルタイムに近い形で登山者の位置情報を確認することができる。この機能については特許も取得済みだ。「YAMAPユーザーどうしが山ですれ違った際、お互いの位置情報を交換し、電波の届かない場所の位置情報を共有できるみまもり機能の基本技術において、特許を取得しました」(杉之原氏)

 なお、この特許取得はみまもり機能の信頼性向上と、他者が類似技術の特許取得をすることにより技術が独占されることの回避を目的としている。類似の効果を持つ技術採用の台頭を阻害する意図はないという(関連リンク山で“すれ違った誰か”が、登山者の命を救う。進化した「みまもり機能」と特許取得のお知らせ )

図2:「みまもり機能」の概要(出典:ヤマップ)
拡大画像表示

 技術面を見ると、みまもり機能では、登山者の現在位置情報をサーバーに定期的に送信していると同時に、すれ違ったユーザー同士でも情報を交換している。これは電波の届きにくい山の中でできるだけ現在位置をサーバーに送信するための工夫である。もし万が一、電波の通じない所で身動きが取れなくなったとしても、すれ違った登山者が電波の届く場所に到達すれば、一緒にサーバーに送信してくれるという利点がある(図2)。

 つまり、ユーザーが増えれば増えるほど、電波状況の悪い山の中でも、よりリアルタイムにサーバーに位置情報を送信できる確率が高まり、登山者の安心安全につながるわけだ。また、「これまでにすれ違った登山者の位置情報」をまとめて交換できるアップデートも行っている。

 もっとも、位置情報が送られるのは登山中のみで、知らない間に位置情報を送っていたという心配はない。さらに、みまもり機能の使用中、サーバーからはあらかじめ登録されているメールアドレスやLINEに、登山者から受け取った位置情報が送られる。ユーザーは一緒に登山をしていない家族や友人等を受信者に指定できる。万が一遭難した場合、受信者は最新の位置情報を確認できるため、救助活動を迅速にすることができる。位置情報は捜索隊が捜索する場所を決める手がかりとなり、効率よい捜索にもつながる。

 「だれしも『自分は大丈夫、遭難なんかしない』と思ってしまう部分があります。でも、やっぱり計画どおりにいくとは限らないし、帰りを待つ家族は状況を知らず、もっと不安かもしれません。自分の安心はもちろん、周囲の人にも安心してもらう。そのために、みまもり機能をぜひ活用してもらいたいです。ご自身が登山をしなくても、周りに登山をする方がいれば利用を勧めていただけるとありがたいです。利用者が増えれば増えるほど安心・安全につながる機能ですから」(杉之原氏)

 YAMAPの情報発信を行っているnoteでは、過去に登山経験のある山で遭難してしまったが、YAMAPの位置情報が手がかりとなり無事救出された事例を、山岳遭難事情に詳しい方の解説を交えて紹介しているので、こちらも参考にしていただきたい(関連リンクみまもり機能が、登山者の命を繋ぎました「山は生き物」 初めて遭難にあった登山のベテラン夫婦が伝えたいこと)。

●Next:「いいね」の進化形、「DOMO(ドーモ)」がもたらす感情効果

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