[新製品・サービス]
プロセス可視化がX線からMRIのレベルに─独Celonisが次世代プロセスマイニング「Process Sphere」を発表
2022年11月21日(月)田口 潤(IT Leaders編集部)
独Celonisは2022年11月9日(現地時間)、同社開催の「Celosphere 2022」コンファレンスで、プロセスマイニングツールの新製品を発表した。企業のビジネスプロセスの実態を医療におけるMRI(磁気共鳴装置)のように可視化する「Process Sphere」と、プロセス分析を日々のビジネスに埋め込み、ビジネスユーザーが自らプロセスを改善・進化できるようにする「Business Miner」である。プロセスマイニングの最前線はどこまで進化したのだろうか?
既存プロセスマイニングツールの問題
プロセスマイニングでは、大量のイベントログデータ(トランザクションログやシステムログ)からマイニング対象プロセスの3要素(ケースID/アクティビティ/タイムスタンプ)を探索し、一連のプロセスの実態を再構成・可視化する。例えば、資材調達プロセスをマイニングする場合、調達品目のID、発注書作成や納品といったアクティビティ、各アクティビティが実行された日時(時間)といったデータを抽出・分析する。
以前から行われてきた、現場の観察やプロセスを担う現場担当者へのヒアリング、調達に関連する文書や証票などから人がプロセスを再構成するのと比べると、プロセスマイニングは、別次元の可視化を可能にするすぐれた発見であり、アイデアだ。2010年以降に実用化が進み、欧米の大手企業を中心に普及しているが、しかし、本格的な活用が進む中でいくつかの問題も指摘されていた。
簡単な例が、あるケースIDが実際のプロセスでは枝分かれしたり、異なるケースIDなのに同じプロセスになったりすることだ。例えば、以下のような問題だ。
●手配元の業務を表現するケースIDと依頼先の業務のケースIDは異なるので一連のプロセスとして表現されない
●ある調達品が大規模な製品の一部だったり、複数の部品や資材から構成される場合が少なくないが、それぞれの関係を表現しにくいためマイニングされたプロセスが複雑になってしまう
それでも、プロセスマイニングが旧来の現場観察などに比べ子細かつ緻密にプロセスを再現できることは間違いない。だが、ケースID/アクティビティ/タイムスタンプに単に着目した既存のツールの場合、マイニング担当者のスキルを要求し、マイニング結果も複雑で普通のビジネスユーザーには分かりにくいものになる場合がある。プロセスマイニングは、多くの人や部署、組織が関与する大規模かつ複雑なプロセスにも適用され始めているだけに、無視できない問題である。
オブジェクト中心プロセスマイニングを初採用
この問題に関して、プロセスマイニングの"生みの親"と呼ばれる独アーヘン工科大学教授のウィル・ファン・デル・アールスト(Wil van der Aalst)博士は、数年前から「オブジェクト中心プロセスマイニング」(Object-Centric Process Mining:OCPM)を提唱している。ケースIDの代わりにオブジェクトを採用し、複数の情報をオブジェクトに持たせることで、複数プロセスの再構成や可視化の自由度を高めて複雑さを解消するアプローチである。
前置きが長くなったが、Celonisが発表した次世代プロセスマイニングツール「Process Sphere」はこのOCPMを可能にする。「(OCPMの採用によって)業界で初めて、プロセスに関連するすべてのビジネス要因や依存関係を多次元的に理解できるようになる」(同社)という。
例えばプロセスマイニングによりサプライヤーへの支払いの遅れを特定するだけでなく、それが他のビジネスに波及し、顧客にも影響を与えている事実を確認・把握できるようになる。これに合わせてUIも改良し、Google Mapのような直感的な操作を可能にしている(画面1)。
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