[事例ニュース]
朝日工業、鉄スクラップの検収をAIで自動化、88%の査定精度を実証
2022年12月2日(金)日川 佳三(IT Leaders編集部)
鉄スクラップから鉄鋼を生産する電炉メーカーの朝日工業(本社:東京都豊島区)は、鉄スクラップの検収を自動化するAIの現場検証を完了した。5カ月間の検証で、現場検収員による査定精度に比して88%の精度を確認した。これを受けて2022年11月、品種・等級の判定、不適合品の検出においてベテラン検収員と同等レベルの査定が可能な本番用の開発を開始した。鉄スクラップAI解析システムを開発・提供するEVERSTEEL(本社:東京都文京区)が同年12月2日に発表した。
鉄スクラップを原料に鉄鋼を生産する電炉メーカーの朝日工業は、鉄スクラップの検収を自動化するAIの現場検証を完了した。5カ月間の検証で、現場検収員による査定精度に比して88%の精度を確認。これを受けて2022年11月、品種・等級の判定、不適合品の検出においてベテラン検収員と同等レベルの査定が可能な本番用の開発を開始した(写真1)。
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朝日工業によると、原料である鉄スクラップの品質は、受け入れ時の検品作業によって担保している。これまで、現場の検収員が鉄スクラップを目視で確認し、等級を査定してきたという。
今回、属人的なスキルをAIで客観化して技術を継承することを目的に、鉄スクラップを自動で解析するAIの開発に取り組んだ。等級を分類するAIと、異物を検出するAIを実装し、現場での実証実験を実施した。
等級分類では、AIシステムを使って、トラック1台に積載したスクラップに対する等級査定を実施した。この結果、ヘビースクラップの査定において、現場検収員による査定精度に比して88%の精度を確認した。また、ヤードにおいて夜間に撮影したスクラップデータも解析し、深夜帯のデータでも問題なく等級分類が可能であることを検証した。複数の等級が混在するトラックに対しても、検収員の査定に近い精度でAI解析が可能であることを確認した(図1)。
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一般的な等級分類AIの開発では、教師データを作成するために、検収員が画像1枚ごとに等級査定データを入力する膨大な作業が必要になるという。今回採用したEVERSTEELの鉄スクラップAI解析システムでは、日々の操業で検収員が実施しているトラック1台ごとの検収結果だけを教師データとすることが可能である。
また、異物検出では、鋼材中への混入が課題となる不純物や、炉内にて急反応を引き起こす密閉物といった「異物」を検出する。検証では、AIシステムによって、トランプエレメント(除去が難しい不純物)の代表であるモーターについて、写真2のように検出可能であることを確認した。
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AIシステムの開発にあたっては、EVERSTEELのエンジニアが朝日工業の工場に2週間通い、検収基準などを調査。検収員全員の査定結果と、スクラップの検収作業を分析し、検収員による査定のばらつきを定量化した。
2022年11月には、現場検収員と同等レベルを目指したAI開発を開始。実操業への導入を想定し、これまで解析対象としたヘビースクラップに加え、新断、ダライ粉、シュレッダーなど、全品種のスクラップへと解析対象を拡大していく。また、ヤードのすべての荷受け口にカメラを導入してデータ収集スピードを高めている。