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[市場動向]

複数の産業分野をまたがった日本のデータ流通基盤「DATA-EX」を構築する─DSAの越塚登氏

「データの時代」におけるイノベーション基盤としてのデータスペース

2023年3月9日(木)日川 佳三(IT Leaders編集部)

一般社団法人データ社会推進協議会(DSA)は、「DATA-EX」の名の下、国内において産業分野を超えたデータ流通基盤の構築に取り組んでいる。欧州の同様の取り組みであるIDSAやGAIA-Xなどとも提携している。2023年3月9日、JDMC主催の「データマネジメント2023」のセッションに登壇した、DSA会長で東京大学大学院情報学環教授の越塚登氏が、データ流通基盤が求められる背景とDATA-EXの取り組みを解説した。

写真1:一般社団法人データ社会推進協議会 会長 東京大学 大学院情報学環 教授 越塚登氏

 一般社団法人データ社会推進協議会(DSA)は、国内において、産業分野を超えたデータ流通基盤の構築に取り組んでいる。欧州の同様の取り組みであるIDSAやGAIA-Xなどとも提携している。DSA会長の越塚登氏(写真1)は講演の冒頭、データ流通基盤が求められる背景として、日本の経済状況に触れた。

 データ流通基盤が求められる背景について越塚氏は、日本の人口減少が破局的な状況にあることを指摘。GDPも横ばいで、1人あたりの労働生産性も1990年代後半から伸びていない。労働人口は製造業や小売業や医療福祉などで多いが、こうした多くの人が働いている産業の生産性が低いというデータを示した。これらの産業の生産性を高めることが重要であり、そのためにはデジタルトランスフォーメーション(DX)によるイノベーションが求められると語った。

 越塚氏は、近年の著名なイノベーションがデータ駆動型であることに着目する。生成AI(Generative AI)や、IoTデータを活用した自動運転やスマートシティなどである。

IoTやAIなどの「データの時代」に突入した

 越塚氏は、現在を「データの時代」と形容する。コンピュータの歴史を振り返ってみると、マイクロコンピュータの時代とインターネットの時代を経て、データが重要な意味を持つIoTとAIの時代に差し掛かっている。

 データの量、特に非構造化データが増えている、と越塚氏。こうした中でDSAは、データの時代に向けて、データを流通させるためのシステム基盤を作ろうとしている。データ流通基盤の活動の中心は欧州だが、日本でもDSAが中心となってデータ経済圏を作ろうとしている。

 「2000年頃、GAFAなどのプラットフォーマーが台頭した。2020年頃からは、次世代のデータ経済圏を確立すべく、欧州のGAIA-Xなどのように、データを社会で流通させるための基盤がたくさん生まれた。日本でDSAが取り組んでいるDATA-EXも、同様の取り組みだ」(越塚氏)

図1:データスペース(データ流通基盤)は、集中型ではなく分散型・連邦型のアーキテクチャを採用する(出典:一般社団法人データ社会推進協議会)
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 越塚氏は、データを流通させて共有・連携するシステム基盤のことを「データスペース」と呼んでいる(図1)。「データを1カ所に集める集中型・独占型の基盤は、ガバナンス的にも技術的にも非現実的だ。分散型・非集中型・連邦型のデータスペースが現在の流れだ」(越塚氏)。

欧州を中心にデータ流通基盤の構築が進む

 講演ではまず、データ経済圏を構築するための世界の取り組みを紹介した。大きく、中国、米国、欧州の3つの取り組みが大きい(図2)。

図2:データ基盤を構築している主要なプレイヤー、中国、米国、欧州による取り組みの概要(出典:一般社団法人データ社会推進協議会)
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 中心は欧州だが、複数のデータ流通プロジェクトが乱立している。IDSA(Industrie 4.0から発展)、GAIA-X(データ主権、透明性、信頼などのポリシーを尊重する連邦型クラウドサービス)、Catena-X(自動車業界の標準データ交換インフラ)の3つが有名である(関連記事欧州クラウド/データ基盤構想「GAIA-X」の“成果物”が登場)。

 一方、中国と米国の場合、BAT(Baidu、Alibaba、Tencent)やGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)のようなメガプレイヤーがいるので、新しいデータ経済圏を構築することについては消極的であり、遅れている。

 「米国は決して自信満々ではない」と越塚氏は指摘する。「デジタル貿易の主導権が取れないことに悩んでいる」(越塚氏)

●Next:日本におけるデータ流通基盤の進捗状況

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複数の産業分野をまたがった日本のデータ流通基盤「DATA-EX」を構築する─DSAの越塚登氏一般社団法人データ社会推進協議会(DSA)は、「DATA-EX」の名の下、国内において産業分野を超えたデータ流通基盤の構築に取り組んでいる。欧州の同様の取り組みであるIDSAやGAIA-Xなどとも提携している。2023年3月9日、JDMC主催の「データマネジメント2023」のセッションに登壇した、DSA会長で東京大学大学院情報学環教授の越塚登氏が、データ流通基盤が求められる背景とDATA-EXの取り組みを解説した。

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