[麻生川静男の欧州ビジネスITトレンド]

欧州クラウド/データ基盤構想「GAIA-X」の“成果物”が登場:第15回

2020年7月29日(水)麻生川 静男

2019年11月に本連載で紹介した、ドイツおよびフランスが米国に対抗してぶち上げた欧州クラウド/データインフラ構想「Project GAIA-X(ガイア-エックス)」。その報道から約半年が経過したが、今回は、Industrie 4.0や5Gの進展とも関連する続報をお伝えしよう。GAIA-Xの“成果物”と言えるエッジコンピューティングソリューション「ONCITE」(開発元:独フリードヘルム・ロー・グループ)だ。

ドイツが威信を賭けて推進するProject GAIA-X

 まず、Project GAIA-Xについて簡単におさらいしておこう。現在、Web上のデータインフラでは GAFAに代表される米国のグローバルプラットフォーマーの独占状態となっている。しかし、ドイツ国内では、政治的、経済的な危機管理の観点から米国にべったりと依存するのは危険だとの意見が聞かれるようになる。

 そうした声を受け、2019年10月29日、独連邦経済エネルギー大臣のペーター・アルトマイヤー氏(Peter Altmaier)は、ドイツとフランスが協力して欧州独自のネットワークインフラとしてGAIA-Xを構築するとぶち上げたのだ(関連記事GAFAへの危機感あらわに─ドイツ政府が欧州クラウド/データ基盤構想「GAIA-X」を発表)。同構想の発表から半年が経過したが、進捗に関して新たな情報があったので紹介しよう。

 Project GAIA-Xの設立メンバーの1つである独フリードヘルム・ロー・グループ(Friedhelm Loh Group:FLG)は、ボッシュやフラウンホーファーといったドイツの有力企業と連携し、エッジコンピューティングソリューション「ONCITE」を開発した。2020年2月に、FLGグループの社内表彰「2020 Innovation Champions Award」を受賞している(写真1)。

写真1:FLGの2020 Innovation Champions Award授賞式のステージに上がったエッジソリューション「ONCITE」開発チーム(出典:独フリードヘルム・ロー・グループ)

 このONCITEが社内表彰に続き、「エルメス賞(the 2020 Hermes Award)」という、ドイツで非常に評価の高い技術イノベーション表彰プログラムの最終選考に残ったという。本来であれば、2020年4月に開催が予定されていた「ハノーバーメッセ(Hannover Messe)」で結果が発表され、授賞式が行われる予定だったが、同イベントの会場開催はコロナ禍で中止になり、代わりにオンラインイベント(「Hannover Messe Digital Days」)が7月14・15日に開催され、ここで紹介された。

 ドイツや欧州のみならず、世界の情報・通信産業界にとって、毎年4月開催のハノーバーメッセは非常に重要なイベントで、これまで何度も重大発表がなされてきた。エルメス賞は2004年4月開催のハノーバーメッセで創設されたアワードで、賞金は10万ユーロ(約1400万円)と技術分野では最高額の部類である。単に革新的なアイデアだけで選ばれるのではなく、経済的効果や実際に製品化してテストをしたか、など具体的効果の有無が選考基準となっている。つまり、この賞にノミネートされるというのは今後の実社会において多大なインパクトを与えうる製品であると認められたことを意味する(注1)。

注1:過去のエルメス賞の受賞者リストはドイツ語版Wikipediaのページを参照されたい

●Next:ONCITEエッジソリューションの特徴とユースケース

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