[麻生川静男の欧州ビジネスITトレンド]

ドイツの技術者が魅力的と感じる8つの都市、それぞれの特徴:第47回

2023年12月27日(水)麻生川 静男

ドイツの基幹産業と言えば自動車で、フォルクスワーゲン、メルセデス・ベンツ、BMW、アウディなど名だたるメーカーが多い。現在、世界の自動車産業は、機械工業の範疇を大きく超えて総合技術集積産業となっていて、工学分野の数多くの優秀な技術者を惹きつけている。当然、ドイツ国内においても自動車産業の都市、いわゆる「自動車城下町」には多数の技術者が集まるが、それ以外の都市もそれぞれの魅力に応じて優秀な技術者を“誘致”している。現地の報道から、今の技術者たちにとって魅力的なドイツの都市トップ8を紹介しよう。

技術者が魅力的と思うのは大都市にかぎらない

 ドイツの技術者向けWebメディア「INGENIEUR.de」によると、技術者にとって魅力あふれる都市とは、「トップクラスの企業があり、給料が高く、チャレンジングな仕事環境で、仕事が見つかること」。それには有名な大都市だけでなく、地図で探しても見つからないような小さな都市も含まれるという。同メディアは、「ドイツの技術者に最適な都市8選」を紹介している。以下、筆者の補足を加えながら、各都市の特徴を見ていく。

8位:シュトゥットガルト

 ドイツの南東部のバーデン=ヴュルテンベルク州はドイツの機械工業の中心地である。同国の人気企業トップ10のうち、ポルシェ(Porsche)とボッシュ(Bosch)がシュトゥットガルトに本社を置いている。ドイツ政府の統計によると、2021年に機械工業会社に就職した人はバーデン=ヴュルテンベルク州では31万人。ドイツの他の15州を全部合わせても71万人にしかならないため、同州はドイツの機械工業のほぼ半分を占めていることになる。

 シュトゥットガルトの顔は何と言ってもメルセデス・ベンツ(Mercedes-Benz)グループだが、それ以外にも機械メーカーのフォイト(Voith)など特定分野で世界のトップを走る会社も多い。技術者の平均収入は6万7500ユーロ(約1000万円)で、デュッセルドルフに次ぐ高い水準であるという。

 なお、ドイツのコンサルティング会社IW Consultなどが実施したドイツ71都市の経済状況調査「2022年都市ランキング」には、「イノベーションを興すような活気と楽観主義精神が欠けている」と表されている。

7位:ヴォルフスブルク

 北ドイツ、ニーダー・ザクセン州にあるヴォルフスブルクは、フォルクスワーゲン(Volkswagen)の本社や工場が密集しており、日本で言えばトヨタ自動車の城下町、愛知県豊田市といったところだ。IW Consultによると人口に占める技術者の割合がドイツで最も高く、労働人口の4人に1人が機械や自動車の関連企業で働いている。また、研究職も多い。フォルクスワーゲンは同市の主力工場で約6万人を雇用している。

 INGENIEUR.deは、「自動車産業の将来性が不透明な現状では今後衰退する可能性も残る」と評価する。また、現状では技術者にとっては望ましい都市ではあるが、懸念材料としては都市としての活気がかなり低いと指摘。「ただ、すぐ近くのブラウンシュヴァイクに工科大学があることはこの市の強みでもあり、フォルクスワーゲンのマネジャーの中にはブラウンシュヴァイクに住みたいと思う人もいるほどだ」。

6位:エアランゲン

 南部バイエルン州の第2の都市であるニュルンベルク市近郊は、世界のトップクラスのメディカルバレーとして有名である。シーメンス・ヘルスケア(Siemens Healthcare)本社があり、現在5億ユーロをかけて拡張工事をしている。シーメンスのおかげで、数多くのIT企業やサービス・プロバイダーがエアランゲンのあるミッテルフランケン地方に集まってきたという。

 また、同市は研究機関にも恵まれている。エアランゲン=ニュルンベルク大学、フラウンホーファー研究機構の集積回路研究所(IIS)、集積システム・デバイス技術研究所(IISB)などだ。技術者の給与水準も高く、エアランゲンの近くのニュルンベルクの勤労者の平均年収は6万6000ユーロ(約1065万円)。ドイツの都市ではベスト4に入るという。

5位:デュッセルドルフ

 ドイツ北部のノルトライン=ヴェストファーレン州の州都であるデュッセルドルフは、多くの日本企業が欧州拠点を構えている。人口は60万人とドイツの基準で言えば大都市である。同市は伝統的にファッション、貿易や政治の都市とのイメージが強く、技術者や製造業とは縁が薄い印象がある。

 しかし、技術者が優遇されている都市でもあり、技術者の平均年収は7万2000ユーロ(約1160万円)を超え、ミュンヘン、フランクフルト、シュトゥットガルトを抑えトップである。その一方で、家賃はこれらの諸都市より若干安い。収入対支出費の面で有利であるので、技術者にとっては将来性が有望な街であるという。

 一方で、同州の雇用環境は他の地域ほど明るくない。ドイツ技術者協会(VDI)の調査によると、2022年第4四半期の同州の技術者やITスペシャリストの失業者はドイツ全体の21%を占める。これは、高度な技術を持たない技術者は職を探しにくいことを意味している。対称的に、バイエルン州とバーデン=ヴュルテンベルク州だけでなくドイツ東部では熟練労働者が不足していて、技術者の獲得競争が激しいという。

4位:インゴルシュタット

 ドイツ南部のバイエルン州にあるインゴルシュタットは、70年前から自動車メーカーのアウディ(Audi)の本拠地である。人口は13万人に過ぎないが、アウディはこの地域で4万人以上を雇用する。連邦雇用庁によると勤労者の20%が機械、車両工学、設計、技術開発に従事している(写真1)。

 ただ、上述のフォルクスワーゲン城下町のヴォルフスブルク同様、「インゴルシュタットもアウディに強く依存している。そのため、新しいことを興す活気が極めて低調で、将来の発展性には不安が残る」(INGENIEUR.de)という。また、家賃が比較的高く、収入の3分の1が家賃に消えていく。

写真1:インゴルシュタットのアウディ本社(出典:独アウディ)

●Next:ドイツの技術者が住みたい都市トップ3

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