データ活用のためのBIツール導入はすでに一般的となっているが、そうしたアナリティクスを既存の業務システムに組み込んでプロセスの改善を図ったり、自社が提供するソフトウェア・サービスに組み込んで利用者にシームレスな体験を提供したりしている企業はまだ少数だ。2023年3月9日に開催された「データマネジメント2023」に登壇したYellowfin Japanの林勇吾氏は、そんな組み込みBIのあり方をタイプ別に解説するとともに、ベンダー選定にあたって考慮すべきポイントについても言及した。
組み込みBIには大きく4つのタイプがある
BIツールと言えば、アナリティクスを担当するユーザーのためのアプリケーションという印象が強いが、その他にも使い方がある。それは海外で一般的となっている「組み込み」による活用法である。Yellowfin JapanのManaging Director - East Asiaの林勇吾氏は、次の4つのタイプを紹介した(図1)。
①既存アプリ+BIタイプ
主な利用対象者は顧客や仕入先、パートナー企業などの社外ユーザーで、会計や人事、CRM、販売、生産管理、あるいは業種特化型アプリなどの自社開発アプリケーションにBIを組み込む。
②既存サービス+BIタイプ
①の既存アプリ+BIタイプよりもライトなもので、情報提供ポータルや請求書、利用データDLサービスなどにBIを組み込む。
③BIで新規サービスを展開するタイプ
こちらも主な利用対象者は社外ユーザーだが、BIを使って新規データ提供サービス(ダッシュボードなど)を構築する。
「これらの社外向け組み込みBIは、競合他社に対する差別化や、オプションサービスなどによる新たな収益源の創出、あるいは陳腐化したサービスのモダナイズなど、自社の競争優位性を高めることに役立ちます」と林氏は語る。
④業務アプリ+BIタイプ
こちらは先の3つのタイプと異なり、社内ユーザーが利用対象者となる。社内で利用している業務アプリケーションにBIを組み込み、連携・連動させるのである。単にBIで作成したダッシュボードやレポートを業務アプリの一部に貼り付けるだけでなく、業務アプリケーションで入力した結果を組み込みBIのグラフにその場で反映したり、逆にBIによる分析結果を業務アプリケーションにライトバックしたりといった活用も行われている。
「ユーザー体験を向上することで、よりデータドリブンな組織への変革を図っていくことができます」と林氏は強調する。
実際、業務現場に目を向けてみると、ExcelやPowerPointなどを使った手作業のレポーティングや追加の帳票開発があちこちで行われており、これらは企業にとっての“隠れたコスト”となっているのが実態だ。とはいえ新システム構築のためのデータ整備、デザイン、ローンチにも多大な時間と工数がかかってしまう。こうした課題を組み込みBIによって解決し、より早期に結果を出すことが可能となるのである。
拡大画像表示
どんなプロダクトが最適なのか? ベンダー選定における考慮点
上記のような組み込みBIの導入は、「競合がデータ提供サービスを開始した」「顧客からサービスを求められている」「経営から新規サービス構築の号令が下った」「現状の仕組みに工数がかかり過ぎている」といった課題がきっかけとなってスタートし、市場に存在するプロダクトやソリューションの調査・選定を経て、3~6カ月程度の期間で段階的リリースを行うのが一般的なスケージュールとなる。
まずはコアな顧客に先行展開し、継続的な改良を図っていくことで、競争優位性の確立や追加の収益アップ、旧サービスのモダナイズによる顧客エンゲージメントの向上などを実現していく(図2)。
拡大画像表示
その意味でも、どのベンダーのプロダクトやソリューションを選定するかはプロジェクトにおける非常に重要なポイントとなる。これについて林氏は考慮すべきポイントを示した。
- 基本および最新のアナリティクス機能を備えているか
- 既存ソフトウェアとシームレスに統合できるか
- 市場投入までの時間を短縮できるか
- そのベンダーは組み込み領域におけるソリューションリーダーと認知されているか
- データのアクセス制御セキュリティは担保できるか
- テクニカルアーキテクチャデザインを支援できるか
- プロジェクトに継続的なサポートを提供してくれるベンダーか
- 戦略的で長期的なパートナーシップが築けるベンダーか
組み込みBIの市場をリードするYellowfinの特徴
Yellowfinはまさに上記のような組み込みBIの先駆者として知られるベンダーだ。ガートナー社が公開している2022年Magic Quadrantのアナリティクスとビジネスインテリジェンスプラットフォーム部門において、ビジョナリー(概念先行型)の一社に位置づけられており、全世界ですでに2万9000社を超える企業、300万人を超えるユーザーが同社のプロダクトを利用している。「実際にグローバル市場では、私たちのビジネス全体の70%が組み込み領域となっています」と林氏は強調する。
同社が提供する「Yellowfin」は、組み込みのためにデザインされたツールとして次のような特徴を持っている。
まずは「完全なホワイトラベル化、デザインの自由度」だ。「フリーキャンバスで思い通りのデザインを実現することが可能で、既存システムと連携可能なアクションボタンの設定や設置も柔軟に行うことができます」(林氏)。
次に「100%Webベースのシングルアプリケーション」であること。Yellowfin自体はデータを持たず、外部のクラウドやデータベース、ファイル、IoTなどのソースシステムとライブ接続する形態をとっており、エンタープライズグレードのセキュリティ、データ統制と管理、AIエンジンといった仕組みを提供する(図3)。
拡大画像表示
「これによりデータ準備(ETL)から分析&データディスカバリー、ダッシュボードといった一連にアナリティクスを優れた生産効率で開発し、自動化することができます」(林氏)。
さらに「顧客のビジネスモデルに合わせたライセンス」も、これから組み込みBIを導入しようとする企業にとってメリットが大きい。施設数、デバイス、席、車両数単位のライセンスのほか、サービス単位の包括契約も用意されている。もちろんサーバーコア単位のベーシックな契約でスタートすることも可能である。
「当初は数百名のユーザーでスモールスタートし、その後にサービスが急成長して例えば数年後にユーザー数が1万人以上の規模に拡大した場合でも、個別交渉によって最適なライセンスを契約させていただきます」(林氏)
加えてYellowfinは、コードベースではなく設定ベースによる容易な構築・運用をサポートするほか、独自のスクリプトを使用することなく、あらゆるクラウドに対応したオープンな技術を採用していることも大きな特徴となっている(図4)。
拡大画像表示
このようにYellowfinを活用すれば、ベンダーロックインされることなく、組み込みBI環境の素早い構築と柔軟な拡張を図っていくことが可能となるだろう。
●お問い合わせ先
Yellowfin Japan株式会社
URL:https://yellowfin.co.jp
Email:sales.jp@yellowfin.bi
Tel 03-6667-0282
- データマネジメント変革で直面する3つの壁の正しい乗り越え方(2023/05/23)
- “攻め”と“守り”を両立―AIとBI分析の要件を満たすストレージとは(2023/05/10)
- AI活用で目指すべきは“脱DWH”データレイクとDWHのデータを統合管理する真の“データ活用”時代の「レイクハウス」(2023/05/09)
- データ統合基盤の課題を解決する「論理データファブリック」のメリットとは(2023/05/01)
- 変化の激しい時代を乗り越えるためにはトップアプローチが重要、経営層が適切なデータ活用を行うためのコツ(2023/04/25)