[市場動向]
「フィジカルインターネット」の事業化を検討─伊藤忠商事、KDDI、豊田自動織機、三井不動産、三菱地所
2024年5月20日(月)IT Leaders編集部
伊藤忠商事、KDDI、豊田自動織機、三井不動産、三菱地所の5社は2024年5月17日、インターネットの概念・技術を物流に応用し、物流の効率化・最適化を目指すコンセプト「フィジカルインターネット」について、2024年度中に事業化する共同検討に合意し、覚書を締結したと発表した。業界を横断したパートナー5社で物流改革を推進し、国内における物流2024年問題の解決を含む、持続可能な物流を目指す。
伊藤忠商事、KDDI、豊田自動織機、三井不動産、三菱地所の5社は、フィジカルインターネットを2024年度中に事業化することで合意し、共同検討を開始した。今後、事業を担う新会社の設立に向けて具体的な協議を進める。荷主会社や運送会社とも連携し、物流輸送網を構築する。
「物流業界は、人口減少に伴う担い手不足やトラックドライバーの時間外労働規制(物流の2024年問題)、燃料高・物価高などの影響を受けている。このままでは将来的にモノが運べなくなる恐れがある。物流を今後も持続可能なものとするには、荷主、事業者、一般消費者が一体となり、物流の標準化(パレット活用拡大等)など新たな解決策を講じる必要がある」(5社)
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物流を最適化するフィジカルインターネットとは
解決策の1つが、フィジカルインターネット(Physical Internet:PI)である。複数企業の倉庫やトラックを相互接続した共同配送のためのネットワークであり、荷物や倉庫、車両の空き情報などの情報を利用して、発着点間で最適な輸送ルートを導く(図1)。
パケット単位で効率的な情報の送受信を実現しているインターネットの考え方を物流に適用している。インターネットがデータをパケット単位に分割して伝送するように、フィジカルインターネットは、荷物を標準化されたコンテナ(物理パケット)に入れて、複数の拠点や輸送手段を介して効率的に輸送する。
フィジカルインターネットによって物流業務を標準化・効率化することで、物流の担い手の負担が減る。また、トラックを始めとした物流リソースを有効活用できるようになるため、燃料消費量も抑制できる。こうした背景から経済産業省は2021年から各産業界にフィジカルインターネットの活用を働きかけ、2022年には、2040年を目標年次とした、実現に向けてのロードマップを策定している(図2)。
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将来的には、フィジカルインターネットによって生まれたコストメリットを荷主・運送会社などの利用者が受けられる仕組みを構築し、物流の新たなスタンダードとなるサービス形態を目指す。各社の役割は以下のとおりである。
- 伊藤忠商事:事業企画・推進、新規営業
- KDDI:フィジカルインターネットサービス監視、通信環境整備、貨物のモニタリング
- 豊田自動織機:フィジカルインターネットサービスに最適化したマテハンの導入、整備
- 三井不動産:フィジカルインターネットサービスに最適化した中継倉庫拠点の構築
- 三菱地所:フィジカルインターネットサービスに最適化した中継倉庫拠点の構築
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