アクセンチュアは2024年5月27日、説明会を開き、今後数年間でビジネスに大きな影響をもたらす重要な技術のトレンドを予測した年次レポート「Technology Vision 2024」(同年1月公開)のポイントを解説した。2024年のコンセプトとして「(AIと人間の)共進化」を挙げる。「AIに人間性を組み込むことで、テクノロジーがより人間らしくなる。人間の能力がテクノロジーで拡張されていく」(同社)としている。
アクセンチュア(Accenture)の「Technology Vision 2024」は、今後数年間でビジネスに大きな影響をもたらす重要な技術のトレンドを予測した年次調査レポートである。2024年のテーマは、「人間性を組み込む:AIはいかに人間の可能性を切り開くか」。レポートでは、ビジネスの成功に不可欠な4つの技術トレンドを定義している(関連記事:生成AIなど先端技術が“共有現実”を創出する─アクセンチュアがテクノロジービジョン2023を発表)。
アクセンチュアは、2024年のコンセプトとして「(AIと人間の)共進化」を挙げる。人間らしさの観点で、AIと人間がともに変化・進化する(図1)。「AIに人間性を組み込むことで、テクノロジーがより人間らしくなる。一方、人間の能力も、テクノロジーで拡張されていく」(同社)。
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説明会では、人間性を組み込んだテクノロジーへの移行に向けた4つの技術トレンドを示した。テクノロジーがより人間らしくなるためのトレンドとして、「AIによる出会い:知識との関係の再構築」と「自分専用エージェントとの出会い:自分のためのエコシステム」を挙げる。
一方、人間の能力がテクノロジーで拡張されるためのトレンドとして、「私たちが必要とする空間:新しい現実の中で価値を創造する」と「デジタル化された私たちの身体:新しいヒューマンインタフェース」を挙げる。
知識を検索しなくてもAIがアドバイスしてくれる
1つ目の技術トレンド「AIによる出会い:知識と関係の再構築」は、ライブラリアンモデル(人間が検索エンジンを使い、答えがありそうな場所を提示してもらうモデル)からアドバイザーモデル(人間がAIと対話し、答えそのものを提示してもらうモデル)への変化を示している(図2)。
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アドバイザーモデルのユースケースの1つとして同社は、セールスフォース(Salesforce)のCRM(顧客関係管理)アプリケーションを挙げる。営業社員がとるべき行動をアドバイスする。また、ビズリーチによる、生成AIによって履歴書/職務経歴書の書き方をアドバイスするユースケースを示した。
ただし、各企業が持つ知識を有効に活用するためには、大規模言語モデル(LLM)を差異化するアプローチが必要だと同社は指摘。例として、独自LLMの構築、既存LLMのファインチューニング、RAG(Retrieval Augmented Generation:検索拡張生成)によるプロンプトエンジニアリングなどを挙げた。
独自の知識を活用している例として、米ブルームバーグ(Bloomberg)が独自に構築した金融に特化したLLMや、米シスコシステムズにおける、ナレッジグラフとLLM(RAG)で情報検索に要する時間を50%(年間400万時間以上)削減したケースを紹介した。
「これまでは検索ありきだった。検索エンジンを通してしか顧客は企業のデータにアクセスできなかった。アドバイザリーモデルへの変化は、企業がデータ主権を取り戻すチャンスだ。これからは、各企業のAIエージェントが顧客に情報を提供する」(アクセンチュア)
人と遜色のない対話が可能なエージェントAI
2つ目の「自分専用エージェントとの出会い:自分のためのエコシステム」は、アドバイザー(各ビジネスシーンで人間を支援する存在)から、エージェント(行動を伴って物理世界に影響を及ぼす存在)へとAIが進化することを示している(図3)。
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アクセンチュアは、「AIを作業効率向上策だけに使うのでは、AI本来の強みを享受できない」と指摘する。リアルタイム翻訳などのように、人間の可能性をAIがブーストすることが可能だとしている。
例えば、AIエージェントとの対話は、人間同士の対話と比べて遜色がない。米OpenAIのGPTシリーズの最新モデル「GPT-4o」を使ったデモ動画では、「子どもに三角関数を教えてくれ」とAIエージェントに頼むと、AIエージェントが子どもに寄り添いながら、順を追って人間のように対応するさまを示している。
今後、企業やサービスを取り巻く環境は、APIエコシステム(各サービスがAPIを提供し、相互に情報を交換する世界)から、双方向エージェントAIエコシステム(各ユーザーがエージェントAIを持ち、エージェントAI同士が相互交流する世界)に変化すると同社は見ている(図4)。
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