アクセンチュアは2023年4月5日、グローバル年次調査レポート「テクノロジービジョン2023」を発表した。同年3月30日に米国で発表した「Accenture Technology Vision 2023」の日本語版であり、「現実空間とデジタル空間が密接につながり合っていく中、生成AI(Generative AI)をはじめとした先進・先端的なテクノロジーがビジネスの新時代を切り開きつつある」と強調している。
2023年に注目すべきテクノロジーのトレンドは、「生成AI(Generative AI)」「デジタルアイデンティティ(Digital Identity)」「私たちのデータ(Your data, my data, our data)」「フロンティアの果てへ(Our forever frontier)」の4つ──。アクセンチュアが、こうした骨子の「テクノロジービジョン2023」を発表した(図1)。
テクノロジービジョンは同社のグローバル年次調査レポート。最新の2023年版は、25人以上の有識者で構成する外部諮問委員会から収集した知見と、日本を含む世界34カ国・25業界の企業における上級役職者や役員4777人を対象にした調査からまとめたもの。調査期間は2022年12月から2023年1月である(関連記事:「メタバース/AR/デジタルツインがもたらす大変化に備えよ」─アクセンチュアがテクノロジービジョン2022を発表)。
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トレンド1:生成AI(Generative AI)
ChatGPTの急速な浸透により、生成AIや対話型AI、大規模言語モデルが世界的に注目されている。調査では、98%が「今後3~5年の間にAI基盤モデル(編集部注)が自社の戦略において重要な役割を担う」や「人間の能力を拡張するための伴走者として活用することで、クリエイティビティやイノベーションが大幅に進展する」、95%が「企業におけるインテリジェンス活用の新時代が到来しつつある」と回答した。同時に、アクセンチュアは、全労働時間の40%に言語ベースのAIによるサポートや補強が組み込まれると予測している。
編集部注:ここで言うAI基盤モデルは、米スタンフォード大学のAI研究ワーキンググループが2021年発表の論文で定義・命名した「基盤モデル(Foundation Model)」のこと。大規模言語モデルの延長線上にある概念で、言語処理に限らず、画像生成AI(Stable Diffusion、Midjourneyなど)や、対話型/文章生成AI(ChatGPT、Google Bardなど)といった、生成AIに代表される高度かつ汎用的な応用も行うようになった実態を表した命名となっている。
トレンド2:デジタルアイデンティティ(Digital Identity)
デジタルアイデンティティは、デジタル空間(インターネット空間)における人や組織、デバイス、サービスなどの主体(Entity/Subject)に関わるIDや、その属性情報のこと。「デジタル上のユーザーやアセットを認証する機能でもあり、デジタル空間と現実空間を行き来するための基盤として欠かせない」(同社)。調査では、85%がこうした機能の構築は「単なる技術的な課題ではなく、戦略的な優先事項」と回答している。
トレンド3:私たちのデータ(Your data, my data, our data)
「企業がデータについて理解しないかぎり、AIの潜在価値を最大限に引き出すことはできない。データのサイロ化を解消し、自社のデータ基盤を現在の技術を活用して刷新することが必要である」(同社)。調査では、90%が「業界を超えて、データの透明性が競争上の重要な差別化要因になっている」と回答した。
同社は透明性とデータ共有に対する企業ステークホルダーからの需要は今後も高まり続けると予測。「業界業種を問わず、透明性を確保した企業は、進化するデータエコシステムを有効に活用する方法を獲得できる」と述べている。
トレンド4:フロンティアの果てへ(Our forever frontier)
「サイエンス領域とテクノロジー領域では、相互に進化を促し合いながら、双方向にフィードバックを繰り返すスピードを速めている」。その好例が生成AIであり、進化が加速している。調査では、こうした「サイエンスとテクノロジーの組み合わせ」について尋ねており、75%が「(その組み合わせは)世界が直面している深刻な社会課題の解決に貢献しうる」と回答した。
加えてアクセンチュアは、次のように提言している。「サイエンステクノロジー革命は、エキサイティングな時代の進歩をもたらす。世界がさまざまな課題に直面している今、コンプレスト・トランスフォーメーション(短期間での全社変革)と加速したサイエンス・テクノロジーサイクルに投資するべきである」
●Next:「共有現実」って何だ? それを企業のビジネスで活用するためには?
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