矢野経済研究所は2024年11月21日、2024年度の国内民間企業におけるIT投資に関する調査結果を発表した。2023年度の国内民間IT市場(ハード・ソフト・サービス含む、公共分野や民間小規模事業者除く)は、IT投資額ベースで前年度比6.3%増の15兆500億円と推計した。
矢野経済研究所は、2024年度の国内民間企業におけるIT投資の実態を調査し、453社から回答を得た。2023年度の国内民間IT市場(ハード・ソフト・サービス含む、公共分野や民間小規模事業者除く)は、IT投資額ベースで前年度比6.3%増の15兆500億円と推計している(図1)。
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市場拡大の背景として同社は、基幹システムやサーバーのリプレース、オンプレミスからクラウドへの移行、電子帳簿保存法やインボイス制度など法改正へのシステム対応、デジタル化の推進といった多岐にわたる要因を挙げる。特に、大手企業においては、企業の競争力向上を目的に、基幹システムのリプレースやクラウド移行にともなうITコンサルティングへの支出が活発化している。これらへの支出も、市場の成長につながったと同社は見る。
2024年度は、前年度比5.6%増の15兆8900億円、2025年度は同5.0%増の16兆6800億円、2026年度は同2.5%増の17兆1000億円と同社は予測している。
2024年度も、基幹システムやサーバーのリプレース、クラウドへの移行などが活発な状況が続いている。特に大企業においては、新規ビジネス展開を目指す革新的な取り組みが実践の段階に入り、データの一元化やAIの導入など、データ利活用に向けた支出が増加している。また、円安やIT人材不足といった外部要因も、IT投資支出を押し上げる一因となっている。さらに、近年頻発する自然災害に対応するため、事業継続計画(BCP)の見直しも進められている。
2025年度以降は、2025年10月にWindows 10のサポートが終了するため、2025年度から2026年度にかけてPCリプレース需要が急増し、ハードウェアに対する支出の増加が見込まれる。さらに、AIやアナリティクスといった新たなテクノロジーに対する需要も高まり、新規ビジネス展開を目的としたIT投資が拡大し、国内民間IT市場は順調に推移する見通しである。
なお、今回の調査では、事前の設問でレガシーシステムを「刷新した(刷新中を含む)」、「刷新を検討している」、「刷新を検討したが進まなかった」と回答した296社を対象に、刷新の検討にあたってDXレポートが与えた影響を聞いた(図2)。
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回答では、「大きく影響した」が4.4%、「やや影響した」は26.7%であり、合わせて約3割の企業がDXレポートを意識して刷新を進めていることが分かった。一方、「ほぼ無関係」と回答した企業が36.1%、「一切関係ない」が11.5%と、合わせて47.6%の企業が、DXレポートの影響をあまり感じていないという結果になった。レガシーシステムの刷新においては、DXレポートの影響力は限定的だとしている。