[市場動向]
日立とNTT Com、ストレージ仮想化と全光ネットワークで東京・大阪間のリアルタイムデータ同期を実証
2024年12月5日(木)日川 佳三(IT Leaders編集部)
日立製作所とNTTコミュニケーションズ(NTT Com)は2024年12月5日、東京・大阪間を想定した長距離リアルタイムデータ同期に、ストレージ仮想化と全光ネットワーク(APN)「IOWN APN」を用いる実証実験の結果を発表した。サーバーからストレージにデータを書き込んだ際の応答時間を、日立が推奨する20msを下回る7.5msに抑えられることを確認している。APNにより、距離が離れた分散型データセンターが実現できるとしている。
日立製作所とNTTコミュニケーションズ(NTT Com)は、東京・大阪間を想定した長距離リアルタイムデータ同期に、日立のストレージ仮想化技術とNTTの全光ネットワーク(APN:オールフォトニクスネットワーク)「IOWN APN」を用いてネットワーク遅延時間を計測する実証実験を行った。仮想的に600km(東京・大阪間)離れた環境を構築し、日立のストレージ仮想化環境におけるデータ同期に要する時間を測定している(図1)。
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実験を通じて、サーバーからストレージにデータを書き込んだ際の応答時間を、日立が推奨する20msを下回る7.5msに抑えられることを確認。APNにより、距離が離れた分散型データセンターを実現できるとしている。一方、APNを使わずに従来回線を使った場合、距離100kmで20msの遅延が発生するという(図2)。
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ストレージに、日立ヴァンタラのブロック(SAN)ストレージ「Hitachi Virtual Storage Platform One Block(VSP One Block)」を用いた(関連記事:日立、ミッドレンジSANストレージ新機種「VSP One 2U Block Appliance」、データ削減効率などを向上)。
VSPシリーズは、ストレージ仮想化機能により、VSP配下の複数の異機種ストレージを論理統合して1台のストレージとして利用できるほか、2台のVSPで広域クラスターを構成することもできる。広域クラスター構成でデータを書き込む場合、2台のVSPにデータを書き込み、2台からの書き込み完了応答をもって処理が完了する(図3)。
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実験では、応答時間(ネットワーク遅延時間)の検証に加えて、災害発生時のシステム復旧時間を検証した。サーバーを広域のHA(高可用性)クラスタリング構成とし、東京のサーバーに障害を発生させて大阪のサーバーに処理が切り替わるまでの時間を計測。同一データセンター内での切り替えと同程度の約10秒で切替が完了することを確認した(図4)。
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「金融やインフラ事業者などのミッションクリティカルな事業を支える企業において、DR(災害復旧)構成のシステムの導入が進んでいる。さらに、生成AIの普及によって電力使用量の増大が環境負荷になっており、全国各地のグリーンエネルギーを有効活用できる分散型データセンターに期待が寄せられている」(両社)