[事例ニュース]
羽田空港第3ターミナルの出入国審査で「非接触指紋認証」の実証実験、審査待ち時間を短縮
2025年2月3日(月)日川 佳三(IT Leaders編集部)
出入国在留管理庁は、羽田空港第3ターミナルで「非接触指紋認証の精度検証」の実証実験を2025年2月3日~28日に実施する。上陸手続きにおける審査待ち時間の短縮を目的とする。現行の接触型指紋認証機で取得した指の変形が生じる指紋データと、非接触型で取得する指の変形が生じない指紋を照合可能な技術を用いる。指紋認証技術を提供するパナソニック コネクトが同年2月3日に発表した。
出入国在留管理庁は、東京国際空港(羽田空港)第3ターミナル(東京都大田区)で「非接触指紋認証の精度検証」の実証実験を2025年2月3日~28日に実施する。
同庁によると、2024年の訪日外客数は3686万人(前年比47.1%増、2019年比15.6%増)で過去最高を更新。2030年には訪日外国人旅行者を6000万人にするという政府目標を踏まえて、訪日外国人の増加に対応すべく、上陸手続きにおける審査待ち時間の短縮を目指す。
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現在、空港における外国人の入国審査は、指紋読取センサーに指を押し当てて圧着した指紋情報(圧着指紋)を採取・認証しているが、これを非接触指紋認証に置き換えることで、指紋取得時間を短くできるという。
実証実験では、パナソニック コネクトが指紋認証技術を提供して、出国審査場付近に非接触指紋認証装置を設置し、日本を出国する外国人を対象に任意で指紋を採取する。こうして出国時に取得した非接触指紋が、入国時の審査で取得した圧着指紋のデータと正しく照合可能かを検証する(写真1)。
カメラを用いて非圧着で取得する非接触指紋では、採取時に指の変形がなく、圧着指紋とは特徴が異なる。「既存の指紋データベースと照合した際にエラーとなる率が高く、非接触指紋認証への切り替えには課題があった」(パナソニック コネクト)という(写真2)。
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パナソニック コネクトは、非接触で取得した指紋画像から圧着時の特徴変動を予測する独自のディープラーニング(深層学習)技術を開発し、非接触指紋と圧着指紋の照合精度を向上させている。具体的には、指とセンサーとの距離、照明のあたり方、指の変形の有無によって生じる圧着指紋と非接触指紋の差異を補正し、非接触の指紋画像を圧着指紋相当に変換する。
同技術により、従来の圧着指紋データベースと照合した際のエラー率を、一般的な未変換の非接触指紋と圧着指紋を照合した場合と比べて約5分の1以下に抑えるとしている。同技術を活用することで、既存の指紋データベースを活用しながら非接触指紋認証を行えるようになる。