[技術解説]

国内で商用利用できる主なLLM一覧と、その読み解き方

米国はじめ海外製が主流だが、国産モデルも用途特化型を中心に多数登場

2025年3月28日(金)上遠野 拓、竹内 一紘、山本 里花(富士通 パブリック事業本部 デジタルビジネスデザイン統括部)

ChatGPTの登場に端を発する生成AIブームは今なお加速しており、さまざまなプロバイダーが競い合うように基盤モデルやサービスのアップデートを重ねている。世界中に多種多様な大規模言語モデル(LLM)/小規模言語モデル(SLM)が存在する現在、検討時の選択肢を広げたり、今後の進化の方向を見定めたりするのに、各モデルの性能や特性を把握することは有意義だろう。本稿では、この1、2年で急速に増えた日本製の基盤モデルも含めて主要なLLMを一覧表の形式で紹介する。

メガブームに群雄割拠する生成AI/LLMプロバイダー

 2022年11月、米OpenAIが世に放った「ChatGPT」が世界中に大きな衝撃を与え、ここから始まった生成AIブームの勢いは今も衰えることを知らないどころか、むしろ加速している。

 OpenAIが次々と高性能な大規模言語モデル(LLM)の「GPT」シリーズをリリースする中、GPTの基盤技術Transformerの開発元である米グーグルも、盟主の座を競うように「Gemini」シリーズのアップデートを続けている。

 米国では、Anthropic(アンソロピック)の「Claude」が市場のメインストリームに躍り出て、イーロン・マスク氏率いるxAIの「Grok」もX(旧Twitter)の標準機能になって利用者を一気に増やすなど、新興ベンダーが急速にシェアを伸ばしている。

 また、「Llama(ラマ)」をオープンソース化したMeta、OpenAIと強力なタッグを組むマイクロソフト、LLMや小規模言語モデル(SLM)を選択可能にした統合サービスを強みにするAWSやIBMなど、ビッグテックも存在感を示している。

 米国以外に目を転じると、フランスのMistral AIやカナダのCohereといった有力なAIスタートアップが、ユーザー企業の支持を集めている。

 図1を見ていただきたい。米国のベンチャーキャピタルであるMenlo Venturesが、米国における2023年と2024年の大規模なLLMの市場シェアを調べたものだ。両年ともシェアトップはOpenAIだが、市場が急拡大する中で同社のシェアは50%から34%に急低下している。2024年は残り3分の2をAnthropicやMeta、グーグルなどが分け合った構図である。

 ちなみにAnthropicは、OpenAIの方針に疑問を感じてスピンアウトした元幹部が2021年に創設したスタートアップだ。同社のClaudeは自由・平等、倫理的・安全なふるまいをするように訓練されているとされる。

図1:米国におけるLLMの市場シェア(出典:Menlo Ventures)
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 一方、2024年12月には、世界を驚かせるLLM「DeepSeek-V3」が登場した。中国・杭州のDeepSeekが公開したもので、米国の有力AIモデルに肩を並べる性能ながら、開発費用はわずか560万ドル(約8億4000万円)という。米国のAIモデルの開発費は安くても数億ドル(数百億円)~10億ドル(約1500億円)と言われるから2ケタも安いことになる。さらに2025年1月には「DeepSeek-R1」が発表され、すぐれた推論性能を安価に実現する知識蒸留(注1)という手法も話題を集めた。

注1:知識蒸留(Knowledge Distillation)とは、LLMなど大規模な基盤モデルが蓄積したナレッジを教師に、軽量なモデルに継承させる技術のこと。大規模モデルの持つ高い精度や汎用性を維持しつつ、モデルサイズを小さくすることで、推論に必要な計算リソースの削減、コンパクトゆえの高速な推論、エッジデバイスで動作可能な省電力などの利点がある。

 これらのメジャーなモデルを含め、どのような基盤モデルがあり、それぞれがどんなスペックでどんな特性を持つかを把握することは、自社での活用を検討する際の選択肢を広げたり、今後の進化の方向を見定めたりするのに有意義だろう。

 そうした考えから、筆者のチームは世界と日本のLLM/SLMを定点観測的に調査・把握するべく努めている。本稿では、そうやって把握したモデルから、主要と判断したものを一覧表の形式で紹介する。表1が海外製、表2が日本製である。

●Next:海外の主要なLLMの一覧表と、その読み解き方

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国内で商用利用できる主なLLM一覧と、その読み解き方ChatGPTの登場に端を発する生成AIブームは今なお加速しており、さまざまなプロバイダーが競い合うように基盤モデルやサービスのアップデートを重ねている。世界中に多種多様な大規模言語モデル(LLM)/小規模言語モデル(SLM)が存在する現在、検討時の選択肢を広げたり、今後の進化の方向を見定めたりするのに、各モデルの性能や特性を把握することは有意義だろう。本稿では、この1、2年で急速に増えた日本製の基盤モデルも含めて主要なLLMを一覧表の形式で紹介する。

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