[市場動向]

生成AIツール「Rovo」をユーザーに無料提供─アトラシアンの戦略と基盤技術

2025年4月10日(木)河原 潤(IT Leaders編集部)

アトラシアンが、以前より掲げる組織と個人のワークスタイル変革「System of Work」を推し進める戦略を発表した。2025年4月9日(米国現地時間)、米アナハイムで開催中の年次コンファレンス「Team '25」において、生成AIツール「Rovo」を、機能強化を施したうえで、JiraやConfluenceなど主要製品のユーザーに無料で提供し、AIエージェントはじめ最新AIによる“チームワーク”の高度化を促す。新しいサービスやアップデートの発表が多数ある中で、Rovoの大胆なアップデートに注目してみた。

 プロジェクト/タスク管理の「Jira」やコラボレーションの「Confluence」、ITサービスマネジメント(ITSM)「Jira Service Management」などのソフトウェア/クラウドサービスをグローバルで提供するアトラシアン(Atlassian)。開発者やエンジニアからの支持が厚い印象があるが、近年は「System of Work」というビジョンの下、各製品を連携させて「Teamworkプラットフォーム」を構成し、エンタープライズ(大企業)を中心に組織・チーム・個人のワークスタイル変革の支援に注力している。

チャット、エンタープライズ検索に加わるRovoの新機能

 2025年4月8日に開幕した同社最大のコンファレンス「Team '25」。そこでの発表を目がけて、アトラシアンはSystem of Workビジョンを具現化する、さまざまな新製品・サービス、アップデートを準備してきた。なかでも目玉として最初にアナウンスされたのが、生成AIによる業務支援ツール「Rovo」に関する、かなり大胆なアップデートだ。

 どんなツールなのか。簡単に言うと、Atlassian Cloud上で動作するアトラシアンユーザーのためのAIツールだ。前回(2024年5月)のTeam '24で初披露され、2024年10月より製品版を提供している。JiraやConfluenceのユーザーにとっての“AIチームメイト”として、生成AIの能力を生かした種々の支援を行ってくれる。

 Rovoの技術基盤は、オープンソースモデルを含む複数のLLMと、セマンティックアーキテクチャに基づくアトラシアン製品群共通のデータストア「Teamwork Graph」である。これらをデータやナレッジのベースにして、以下の2系統の機能を提供している。

Rovo Chat:自然言語の質問に回答したり、タスクを実行したりする対話型のAIアシスタント/AIエージェント。組織や業務のコンテキストを理解したうえで回答/タスク実行を行う。

Rovo Search:各種データソースの情報を横断的に検索できるエンタープライズ検査。アトラシアン製品だけでなく、データコネクタやAPIを介して、Slack、Microsoft Teams、GitHub、Googleドライブなどの外部ツールに保存された情報も検索対象にする。

 エンタープライズ検索が備わる時点で、Rovoの機能はよくあるアプリケーション付属の生成AIアシスタント/コパイロットのレベル以上と言えるが、今回のアップデートでは、開発環境の「Rovo Studio」と推論検索の「Rovo Chat Deep Research」も加わる。

Rovo Studio:用途に応じたカスタムのAIエージェントや自動化などの仕組みをノーコードまたはローコードで構築するための開発環境。エージェントの役割、キャラクター、知識、実行できるアクションを定義し、チームのニーズに合わせてカスタマイズできる。

Rovo Chat Deep Research:Rovo Chatの付加機能となる、LLMの能力を生かした推論検索機能。

会場となったアナハイムコンベンションセンター

Rovoが製品ポートフォリオの中心に

 かなり大胆なアップデートと言ったのは、新機能が加わるだけでなく、さらに、月20ドルのライセンス料を今後、無料にすることを公にしたからだ。今後、Jira、Confluence、Jira Service Managementのプレミアムおよびエンタープライズプランを契約するユーザーが無料でRovoを利用できるようになる。

写真1:アトラシアンの共同創業者でCEOのマイク・キャノンブルックス(Mike Cannon-Brookes)氏

 その発表は、同社の共同創業者でCEOのマイク・キャノンブルックス(Mike Cannon-Brookes)氏(写真1)がみずから行った。

●Next:Rovoの競争優位は基盤技術「Teamwork Graph」に

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