ライオンは、グローバル全社のデータを統合・活用することで、未来予測型の経営意思決定の実現を目指している。2026年3月11日開催の「データマネジメント2026」(主催:日本データマネジメント・コンソーシアム〈JDMC〉、インプレス)の事例講演に、同社執行役員 全社デジタル戦略担当の中林紀彦氏が登壇。データレイクの構築からセマンティックレイヤーの整備、グローバルデータガバナンスの確立に至るデータ基盤整備の取り組みと、これを経営に結びつけるアプローチを紹介した。
ライオンは、2025年からの中期経営計画「Vision 2030 2nd STAGE」のテーマである収益力の強靱化に向けて、“経営に直接貢献するデジタル戦略”を推進している。特に力を注ぐのがデータドリブン経営で、各事業やシステムに分散していたデータを統合し、経営レベルでリアルタイムに活用できる全社データ基盤の構築に取り組んでいる。
同社 執行役員で全社デジタル戦略担当の中林紀彦氏(写真1)は、ライオンにおけるデータ戦略の3つの柱を紹介した。第1に、「経営指標の見える化→意思決定の最適化→意思決定のスマート化」の3ステップで未来予測型経営を支えるデータ基盤を整備する。第2に、整備したデータ基盤を土台に、生成AIの民主化によって生産性を高める。第3に、データを価値に変えるハイブリッド人材を育成する(図1)。
写真1:ライオン 執行役員 全社デジタル戦略担当の中林紀彦氏拡大画像表示
図1:ライオンが取り組む経営管理の骨格強化のポイント(出典:ライオン)拡大画像表示
ただし、データドリブン経営の前提となるデータの整備は容易ではないと中林氏は指摘。国内では基幹システムの刷新によってサプライチェーンデータの整備は進んでいるが、物流・流通データや研究開発データ、販売データは依然としてサイロ化している。さらに、海外10数拠点はそれぞれ異なるやり方でデータを管理していたという。
この状況を打開するためにライオンは、データ活用の達成度合いを上述の3ステップ(経営指標の見える化→意思決定の最適化→スマート化)で定め、データ基盤の構築に取り組んでいる。この3ステップを一体的に進めることがデータ戦略の核心だという。
Google Cloudを採用し、内製でデータレイクを構築
データ基盤構築のステップ1「見える化」への着手にあたって、クラウド基盤を選定した。Azure、AWS、Google Cloudを比較検討し、ライオンのデータセットへの適合性からGoogle Cloudを採用。内製でデータレイクの構築を始めた。
基盤の選定では、必要なデータにいつでもアクセスできることのほか、セマンティックレイヤーによるメタデータ管理ができることを重視したという。「昨日販売した商品の利益などを自然言語で問い合わせるには、用語の定義や集計ロジックを整備したセマンティックレイヤーが欠かせない」(中林氏)。
内製構築のデータレイクを中核に、ライオンの全社データ基盤の形が整っていく。CCoE(Cloud Center of Excellence)がインフラとセキュリティを担い、そのうえにデータ管理チームを配置してデータの収集・クレンジング・品質管理を担う2チーム体制を敷いた。「内製チームが環境構築とデータ整備を分担し、1年半かけて基盤を作り上げてきた」(中林氏)。
データ基盤の構築と並行し、データ品質とガバナンスの整備にも力を入れた。従来は、システムからExcelに取り込んだデータを経理担当者が手作業で加工して経営資料に反映するという属人的な業務を日常的に行っていたという。
このやり方を改め、集計ロジックを整理・標準化してサーバー側で実装する形でデータを整備。海外のガバナンスも方針を転換し、経営管理に関わるデータは日本が主導してガバナンスを効かせて収集する方針の下、実装を進めている。
PowerPoint報告を廃止、経営ダッシュボードで意思決定を加速
データ活用の第一歩として、経営指標の見える化には約1年半前から取り組んできた。2025年10月に経営ダッシュボードをリリースし、それまでP
次のステップ「意思決定の最適化」は、未来予測に基づく計画未達の未然防止を目指した。機械学習を活用してカテゴリー/サブカテゴリー単位で経営を予測し、現状・計画・予測のギャップを約1年先まで可視化する。中林氏によると、「ギャップを早期に特定し、ローリングで計画を見直し施策を展開
図2:未来予測に基づいて計画の達成を支援する取り組みと、機械学習によってボトルネックを把握する取り組み(出典:ライオン)拡大画像表示
3つ目のステップは意思決定のスマート化で、現在はまだ構想・目標の段階にある。ROICツリーを展開して各リーダーにKPIを持たせているが、時系列・製品カテゴリー・エリアといった多次元のデータの中からボトルネックを人手で探し当てるのは限界がある。中林氏は、「機械学習でボトルネックを自動検出し、対応策をレコメンドするところまでを実現することが次の目標。データセットが整うことではじめて、このスマート化を実現できる」と説明した。
●Next:自社構築の「LION AI Chat」「LION LLM」を全社員が活用へ
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