[市場動向]
AI活用の壁をどう打破するか?─SAPジャパン新社長が示す日本企業の変革シナリオ
2026年3月27日(金)神 幸葉(IT Leaders編集部)
SAPジャパンは2026年3月26日、ビジネス戦略発表会を開催した。発表会には、代表取締役社長 鈴木洋史氏と4月1日付で新社長に就任する堀川嘉朗氏が登壇。2025年の業績報告と、AIが真価を発揮するための全体最適化に向けた同社の戦略、日本市場の競争力向上を支援する方針を示した。
クラウド事業が力強く成長、次なる成長段階への基盤を確立
発表会冒頭では、SAPジャパン 代表取締役社長の鈴木洋史氏(写真1)が、2025年のSAPのグローバル業績を報告した。2025年はクラウド事業を中心に成長を継続し、営業利益は140億ユーロ(約2兆5800億円)、フリーキャッシュフローは82億ユーロ(約1兆5100億円)と大幅に伸長した。変革と成長を並行し、収益性を高めている(図1)。
写真1:SAPジャパン 代表取締役社長 鈴木洋史氏
図1:2025年のグローバル業績(出典:SAPジャパン)拡大画像表示
日本のビジネスにおいても、通年の総売上は前年比16%増の約16億ユーロ(約3000億円)、クラウド売上も前年比36%増と、グローバルの成長を大きく上回る結果となった。「2025年はAIの本格的なビジネス活用に取り組みたいという顧客の声が一段と高まった」(鈴木氏)といい、AI活用を見据えたクリーンコアの基盤づくりを推進。AIやデータ活用を前提とした経営基盤の刷新が本格化する中で、「SAP S/4HANA Cloud」のパブリックエディション、プライベートエディションの双方で導入が進んだ。
2015年1月にSAPジャパンに参画し、2020年4月から代表取締役社長を務めた鈴木氏は、この6年間でクラウド売上を約4倍に拡大させた。クラウドシフトへの強固な基盤を確立し、次期社長へとバトンを託す。
「Excelのバケツリレー」が起こす弊害
続けて、SAPジャパン 常務執行役員 最高事業責任者で、2026年4月1日付で新社長に就任する堀川嘉朗氏(写真2)が登壇した。
堀川氏は、エンジニアとしてIT業界でのキャリアをスタートし、2013年にSAPジャパンに入社。サービスおよびサポート部門での10年間の経験を経て、直近2年間は最高事業責任者として日本のクラウド事業の戦略立案、パートナー企業とのエコシステム強化に従事してきた。同氏は、「これまでの経験を基に、AIとデータを活用した日本企業の変革の成功を支えていく」と意気込みを語った。
写真2:SAPジャパン 常務執行役員 最高事業責任者で、2026年4月1日付で新社長に就任する堀川嘉朗氏2026年のグローバル業績見通しは、クラウド売上が前年比1億円増の約258億~262億ユーロ(約4兆7560億~4兆8300億円)で、SAPジャパンもグローバルの成長に歩調を合わせ、日本市場での持続的な成長を実現していく方針だ。
成長の背景には、AI時代における、企業システムに求められる役割そのものの変化がある。堀川氏は、2026年が企業でAIが本格的に業務で活用され、効果を体感する年になると予測している。しかし、その前提として業務とデータがいかに企業全体でつながっているかが重要になるという。
日本企業は古くから現場の改善文化が強く、部門ごとにシステムが導入され効率化を遂げてきた。しかし、その強みが現在では新たな課題を生んでいる。各部門のシステムがサイロ化し、部門間を跨ぐ連携を人が行い、「Excelのバケツリレー」状態に陥っているのだ(図2)。
図2:日本各部門企業が抱えがちな各部門での部分最適(出典:SAPジャパン)拡大画像表示
一方、欧米企業は日本ほど現場の改善力がなく、人手による改善を早々に諦め、全社視点でプロセスを見て1つのデータを共有するシステムの構築を進めてきた。「この文化の違いが、AIの登場によって顕著な差となって表れている」と堀川氏は指摘する(図3)。部門ごとのシステムに溜まったデータは、経営判断を下すAIにとっては不完全なものになりがちだ。全社が1つの正しいデータを共有する環境が整ってこそ、AIは真価を発揮するのである。
図3:全体最適の実現でAIの恩恵が効いてくる(出典:SAPジャパン)拡大画像表示
●Next:日本企業のAI活用を後押しする「SAP Business Suite」、2026年の日本市場における戦略
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