[イベントレポート]
ハイブリッド環境に分散したデータにAIを届ける─モジュール型のAI・データ基盤「Cloudera Anywhere Cloud」を発表
2026年8月21日(金)愛甲 峻(IT Leaders編集部)
米Cloudera(クラウデラ)は2026年8月20日、シンガポールで年次コンファレンス「EVOLVE 2026 Singapore」を開催した。全体のテーマに「The Future of AI & Data Anywhere」を掲げ、ハイブリッド環境が前提となるなか、データの所在を問わず、企業がAIを最大限に活用できるように支援する姿勢を打ち出している。コンファレンスでは、こうした方針を具体化する新たなAI・データプラットフォームとして「Cloudera Anywhere Cloud」を発表した。
ハイブリッド環境がデファクトの時代におけるAI・データ活用
2022年末に米OpenAIの「ChatGPT」が登場して以来、生成AIへの期待を背景に、企業はAI活用へ多くのIT投資を振り向けてきた。だが、導入やPoCそのものが目的だった段階を過ぎた現在、自律的なアクションを担うAIエージェントを実業務に組み込み、生産性向上やコスト削減、売上拡大といった具体的な成果へとつなげられるかどうかが問われている。
他方で、AI活用の源泉となるデータをめぐる状況は複雑化している。全体としてはクラウドへの移行が進む中でも、安全性やデータ主権などの観点から、一部のデータはオンプレミスやプライベートクラウドに留める必要もある。こうした状況がAI活用の阻害要因となっていることは想像に難くない。
基調講演に登壇した米Cloudera(クラウデラ) 最高経営責任者(CEO)チャールズ・サンズベリー(Charles Sansbury)氏(写真1)は、大企業における運用の実体は本質的にハイブリッドであり、それがもはやデファクト(事実上の標準)となっていると語った。
同社が継続的に行ってきた調査によれば、かつてはグローバルの顧客の大半が多くのワークロードをパブリッククラウドへ移行すると回答していたが、調査を重ねるたびに「データの引力(Data Gravity)」やセキュリティ、コストの観点から、オンプレミスやプライベートクラウドを選ぶ割合が増加しているという(図1)。その割合は、2025年下半期には88%にまで高まった。パブリッククラウドとプライベートクラウドを併用している割合も70%に達するという。
図1:ハイブリッド環境はデファクトとなりつつある(出典:クラウデラ)拡大画像表示
写真1:米クラウデラ 最高経営責任者(CEO) チャールズ・サンズベリー氏また、同社が1500名のエンタープライズアーキテクト、クラウドインフラリード、データアーキテクトを対象としたグローバル調査によれば、過去12カ月にデータガバナンス、コンプライアンス、または規制の問題から、95%のAIプロジェクトが遅延または中止に至っているという。また、97%が毎月以上の頻度でデータを異なる環境から移動しており、そのうち31%は毎日のペースでデータを動かしているという。
こうした状況を踏まえ、従来のデータ基盤のアーキテクチャでは、今日の分散したデータ環境には十分に対応できないと同氏は主張する。そこで、サンズベリー氏は「どのような環境でも同じようにデプロイできること」「すべてのデータ資産を一元的に管理・統制できること」、そして「AIアプリケーションの構築・管理機能の強化」の3点を重点課題に定め、過去3年間で、R&Dおよび企業買収に約10億米ドルを投じてきたと説明した。
同社は2021年に株式非公開化して以来、AI活用の支援やオープン性・相互運用性を高める方向での機能強化を推進してきた。2024年にAIプラットフォームを提供する米Verta(ヴェルタ)、データリネージ/カタログツールの米Octopai(オクトパイ)を、2025年にKubernetes管理ツールの米Taikun(タイクーン)を買収している(図2)。
図2:株式非公開化以来、AI活用推進やオープン性・相互運用性を高める機能強化を続けてきた(出典:クラウデラ)拡大画像表示
今回、その成果として同社が発表したのが、モジュール型のデータ・AIプラットフォーム「Cloudera Anywhere Cloud」である(図3)。製品名には、パブリッククラウド、オンプレミス、ソブリンクラウド、エアギャップ(隔離)環境のいずれに対しても、同様のクラウド的なデータの管理・運用体験を提供するとの考えが反映されている。大規模なデータの移動や複製を行わずに、ビジネスの要件や経済性の観点で最適な場所でデータサービスやAIアプリケーションを実行するためのアーキテクチャや機能を備える。正式な提供開始は2026年11月30日を予定しているという。
図3:Cloudera Anywhere Cloudの全体像(出典:クラウデラ)拡大画像表示
●Next:データの分散を前提に、ソブリンAIを支える”OS”を志向
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