[技術解説]

仮想化について今さら聞けなかった10の質問

早わかり、仮想化のすべて Part1

2008年10月17日(金)IT Leaders編集部

ITの世界で毎日のようにどこかで話題に上っている仮想化技術。今では「知っていて当たり前」という空気が流れ、疑問があっても聞きにくい。 おまけに仮想化に関連して「クラウドコンピューティング」というキーワードも飛び出した。なぜ仮想化が脚光を浴びているのか。デメリットはないのか。まだ仮想化技術は進化し続けるのか。PART1では仮想化に関して、今さら聞きにくい素朴な疑問に1つずつ回答していこう。

Q1.そもそも仮想化とは何か?

A.最近はサーバーやストレージの分野で仮想化という言葉を見聞きすることが多い。ともすれば、仮想化はサーバーやストレージに関して使われる言葉と思いがちだが、本来意味するところは、はるかに広い。

大ざっぱだが極めて簡単に仮想化という言葉を解釈すると、次のようになる。「物理的なハードウエア資源を論理的な資源として見せる手法」。ここで言う論理的な資源とは、本当は物理的な資源ではないのに、あたかも実際に存在するかのように見える資源のこと。この「あたかも」という要素こそ、情報システムにおける仮想化が指し示す本来の意味である。

論理的な資源は物理的な資源と同じ振る舞いをする。そのためプログラマーやユーザーは、実際の物理ディスクや物理メモリーの容量などを気にせず、仮想メモリーなど論理的な資源を使ってプログラミングしたりアプリケーションを利用したりできる。

振る舞いこそ変わらないが、論理的な資源は物理的な資源にはない特性を持っている。例えば「容量が1GBのメモリーを論理的に2GBにする」ように論理的な資源を物理的な資源より大きく見せることができる。「1台のサーバーを複数台に見せる」ように1つの物理的な資源を複数の論理的な資源に分割することも可能だ。

論理的な資源と聞いて想像できるかもしれないが、情報システムの世界では仮想化は決して真新しい言葉でも、取り立てて斬新な考え方でもない。むしろ、メインフレームの全盛期から今日まで、情報システムが発達してきた背景には常に仮想化に関連する動きがあった。仮想化の動向は、ITの歴史そのものだと言っても過言ではない。

例えば、メモリーを仮想化して実際より大きく見せる技術は40年以上も前に誕生した。間もなく、OSを仮想化する技術も実用化された(別掲記事「仮想化は“枯れた”技術」を参照)。仮想化という言葉を使うことはないが、TCP/IPのような通信プロトコルも厳密に言えば仮想化技術の一種である。光回線や衛星回線、無線LANなど異なる特性のネットワーク資源を、あたかも1種類の通信経路のように扱えるからだ。

Q2.仮想化で得られる最大のメリットは?

A.仮想化の最大の価値は、情報システムの俊敏性と柔軟性を高められることである。例えばサーバーを仮想化すると、ソフトウエアの操作で1台のサーバー上に新しい仮想サーバーを追加したり既存の仮想サーバーを消去したりできる。仮想サーバーのメモリーやプロセサ構成もソフトウエアの操作で変更可能だ。この手軽さはシステムの開発から運用まで色々なシーンで、俊敏性・柔軟性となって現れる。

システム開発プロジェクトで急きょ、テスト用の新しいサーバーが必要になったとしよう。普通なら物理的なサーバーを新規に調達するしかない。社内で急いで申請して承認を得てから発注する。それからサーバーが納入されるまで、どんなに短く見積もっても1週間はかかるだろう(図1-1)。

画像:図1-1

ところがサーバーを仮想化すれば、物理的なサーバーを調達する必要がなくなる。仮想化ソフトにコマンドを入力するだけで物理サーバーの中に仮想サーバーを作り出すからだ。時間は1分程度だろう。1週間を要していた工程が1分にまで短くなる俊敏性の向上は大きなメリットだ。

仮想サーバーの処理量が増えたときも、仮想サーバーが使用するメモリー容量やプロセサの処理能力を仮想化ソフトの機能で論理的に増やして対処できる。反対に処理量が少なければ論理的にメモリー容量などを減らせる。こうした柔軟性が、仮想化が持つもう1つのメリットである。

仮想化はほかにも、システムが抱えるさまざまな課題を解決する。ソフトウエアの互換性の問題、サーバー統合やストレージ統合の推進、ワークロード管理の柔軟性向上などである。今日の複雑なIT基盤において、俊敏性と柔軟性を同時に手に入れるために仮想化は必須の要素になっている。

Q3.サーバーとストレージで仮想化の意味合いが違うようだが?

A.その通りである。サーバーの仮想化から考えてみる。サーバーの仮想化とは通常、1台のサーバーを論理的に分割して複数台に見せることを指す(図1-2)。論理的に分割したサーバーを仮想サーバーと呼ぶ。反対に、複数台のサーバーをまとめて論理的に1台に見せることを仮想化と言うケースは少ない。この場合、一般にはシングル・システム・イメージという言葉を用いる。

画像:図1-2

対するストレージの仮想化は、複数台のディスク装置を1つの巨大な仮想ディスク装置として見せることを指す。1台のディスク装置を複数に見せることはパーティションと言うのが普通で、仮想化と呼ぶことは少ない。

このように厳密には仮想化に相当するのに、仮想化という言葉を用いないケースは多い。対象となる物理資源によって仮想化の意味合いが異なり、用語の使い方に一貫性が無いことから混乱を招いているかもしれない。だが、今までの慣習として仮想化と呼んだり呼ばなかったりするだけのことなので、意味合いの違いに気を遣わなくても問題はない。Q1で示したように、「あたかも」という要素が含まれていれば、対象となる物理資源の種類に関係なく仮想化の範疇だと考えてよい。

●Next:仮想化ブームはなぜ起こったのか?

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