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[技術解説]

ERP中心から汎用指向、SOA基盤まで─主要マスターデータ管理(MDM)製品の特徴を見る

今こそ実践!マスターデータ統合 Part5

2008年11月27日(木)IT Leaders編集部

過去1年の間に日本IBMやインフォテリアがMDM製品を発売するなど、マスターデータ統合/管理を支援する製品が急ピッチで充実しつつある。ここではERP製品との連携を想定したSAPジャパンや日本オラクルの製品も含め、MDM製品の最新動向を俯瞰する。

主要製品のポジショニング

一口にMDM製品といっても、現在のところコンセプトや用途は様々だ。

対象システムを問わない“汎用”を指向した製品が、IBMの「IBM InfoSphere Master Data Management Server(以下InfoSphere MDM Server)」と、インフォテリアの「ASTERIA MDM One(以下MDM One)である。いずれも特定のERPやCRMといったパッケージではなく、様々なシステムに存在するマスターの連携・管理用途を想定している。

SAPジャパンの「SAP NetWeaver Master Data Management(NetWeaver MDM)や日本オラクルの「Oracle MDM Data Hub(Data Hub)」は、それぞれのERPパッケージに含まれるコンポーネント同士のマスター連携からスタート。既存システムや他社のパッケージ・ソフトへと連携対象を広げている。ただしNetWeaver MDMはSOAの基盤ツール、Data Hubは顧客データと製品データにフォーカスする、といった位置づけが異なる。

これらの中間的な存在がサン・マイクロシステムズの「Sun Master Data Management Suite(Sun MDM)」だ。SOAを実装するためのソフトウェア基盤であるSun Java CAPSの一機能要素という位置づけであり、Sun MDM単独でも販売される。

なおマスターデータ管理に使える製品は、これらのほかにもある。データウェアハウス製品などの一部も、MDM的な機能を備えているのだ。日本テラデータの「Teradata Warehouse」、インフォマティカ・ジャパンの「Informatica PowerCenter」、日立製作所の「uCosminexus Information Federator」がその例である。例えばデータウェアハウス構築を前提に、マスターの整備を目指す場合に選定対象になるだろう。

マスターデータ統合の方法

MDMツールを使って、どのようにマスターデータを統合し、管理するのか。分散して存在している複数の既存システムからマスターデータを抽出し、フォーマットを変換したり、欠損あるいは不正確なデータを修正するクレンジング(洗浄)、そしてマスターの統合管理と配信といった大きな流れは共通している。

顧客マスターなどを統合する際には、この段階で名寄せが必要になる。同じ会社であってもマスターに登録されている社名の「(株)」の表記の仕方や英文字とカタカナの違いなどによって、コンピュータ上では同一の会社として扱われないといったことは、よく知られている問題だ。同一社名でも事業所の住所が異なっているがゆえに、違う会社と認識してしまうケースもある。最近では、ある時期を境に社名が変わっているというケースも多い。

名寄せなどの処理をどう効率化するかはマスターデータ統合の大きな課題だが、自動的にこなせるMDM製品は今のところ存在しない。例えばInfoSphere MDM Serverには、「InfoSphere QualityStage」という名寄せのためのソフトがあるが、これで自動化できるわけではない。MDM Oneでは、このあたりの機能をソフト製品ではなく、サービスとして商品化している。

一方、統合後のマスターデータ管理、マスターデータ配信には大きく2通りの方式がある。データハブ型と統合マスター型である。データハブ型は、簡単に言えば任意の既存システムのマスターを「リファレンスマスター」とする方式。既存システムのいずれかをハブにして、マスターを連携させる。分散しているシステムが少ない、つまり比較的小規模な用途に向く。

これに対し統合マスター型は専用のマスターデータベースを構築。そこにすべてのマスターを集約・管理・配信する。より本格的なMDM向けの製品であり、たとえば日本IBMのInfoSphere MDM Serverは、「最大2億件の顧客を持つ企業での運用実績がある」という。多くがこちらの方式だが、インフォテリアのMDM Oneはデータハブ型を採用。準大手から中堅クラスの企業向けを想定しているのに加えて、MDM実現のための費用を低減できるからだ。ただし同社は今秋、統合マスター型を構築できる「MDM One MI」という製品の出荷を予定している(図1)。

画像:図1
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