IT業界で繰り広げられる買収劇を、アナリストはどう見ているのか。その背景や今後のトレンド、ユーザーが受ける影響について聞いた。
内山 悟志 氏
大手ITベンダーがこれまで繰り広げてきた買収劇を見ると、大きく2つの動機が見て取れる。1つは「顧客ベース」を手中に収める目的であり、もう1つは自社の製品ポートフォリオを充実させる技術確保の買収だ。加えて言うなら、競合に買われるぐらいなら自社が買ってしまおうという防衛的買収もなくはないが、それだけを目的とすることは希である。
度重なる買収の結果、昨今のIT業界は、メガベンダー数社による寡占化が進んだ。具体的にはオラクル、SAP、HP、IBM、マイクロソフト…。これら企業の頭文字を取ってOSHIM(オシム)という呼称もあるぐらいだ。
結果、すでに顧客ベースを持っていて格好の買収対象となるベンダーは市場からほとんど姿を消してしまった。必然的に、今後の買収は技術確保の案件が中心になる。
日進月歩のIT業界では、まだまだ新しい技術分野が出てくる。その黎明期にはベンチャーが群雄割拠し、数10社が数パーセントのシェアを分け合う状態が続く。やがて新市場として認知されるころ、その中のプレーヤーの数社が頭角を現す。まさにこのタイミングで、OSHIMをはじめとする大手が触手を伸ばすわけだ。
これはまるで広大な河原の砂利の中から原石を探す姿にも似る。もっとも米ITベンダーの経営トップに課されたミッションの1つは、原石探しとそれに磨きをかける能力だし、それをサポートするM&Aコンサルや投資会社を交えてのエコシステムも回っている。メガベンダーは、自社の製品スタックを積み上げた図を見ながら、不足している部分を補おうと、技術確保のための買収を今後も熱心に続けるだろう。
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