[インタビュー]

「コンシューマ向けのUI技術を企業ITに展開」─米アドビ システムズのシニアVPに聞く

シニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネジャー ロバート・M・ターコフ氏/米アドビ システムズ

2010年6月4日(金)IT Leaders編集部

クリエイター向けソフト大手である米アドビ システムズが、一般企業向けの情報共有/活用製品に力を注いでいる。どんな狙いがあり、同社の製品はどんな機能を提供するのか。来日したシニアバイスプレジデントに聞いた。(聞き手は本誌編集長、田口 潤)

ロバート・M・ターコフ氏 米アドビ システムズ シニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネジャーのロバート・M・ターコフ氏

─アドビと言えば、PhotoshopやIllustratorといったクリエイタ向け製品のイメージが非常に強い。

ターコフ氏:確かに売上高の半分は、そういった製品を包含した「Creative Suite」が占める。それに次ぐのが企業向けの製品で、すでに売上高の3分の1になっている。主力製品は「Adobe LiveCycle」。PDFを利用したビジネスプロセス管理(BPM)システムの構築や、リッチインタフェースを取り入れた情報流通などを支援する。具体的には、プロセスの設計・管理、文書や帳票の作成、それらの真正性の証明といった複数の製品からなる、統合型の製品だ。

─そういった文書関連の機能は、他社のグループウェアやBPM製品なども備える。後発であるLiveCycleの利点は何か。

ターコフ氏:BtoC向けのネットで進化した、いわゆるリッチインターネットアプリケーション(RIA)の技術だ。高い操作性に慣れた人が、企業システムにも同等の操作感覚を求める。企業システムのユーザーインタフェース(UI)に、PDFやFlash、AIRといった技術を生かせる。

─理屈は分かるが、日本ではLive Cycleの知名度は低い。欧米、特に米国での知名度はどうか。

ターコフ氏:残念ながら、知名度に関しては国ごとに大きな違いはない。ただ米国では、金融や政府・自治体への導入が本格化している。好例が、米地銀大手のPNCフィナンシャル・サービシズ・グループの取り組みだだろう。同社は学生向けの口座情報管理にLiveCycleを採用。親が子弟である学生の口座利用状況や貯金残高の推移を簡単にチェックできるサービスを提供し、顧客数を増やしている。

他にも米JPモルガン・チェースや米モルガン・スタンレー証券、独ドイツ銀行でも、業務プロセスの改善を目的に、当社製品を活用している。日本でも、大和証券が帳票や申請書を電子化するため、LiveCycleを活用したシステムを

構築した。経費申請のフローにPDFを利用し、上長承認などのプロセスを自動化するのが目的だ。

─文書閲覧用のイメージが強いPDFだが、ようやく大和証券のような使われ方が始まった?

ターコフ氏:その通りで、PDFが備える機能の多くはまだ広く利用されているとは言えない。我々の努力が不足していた点であり、改善に力を入れたい。

─ 一方、企業システム分野では、1社ですべてを提供するのは困難だ。

ターコフ氏:単独では限界があることは認識している。そこで主要なITベンダーとの協業を進めている。例えば、独SAPとはSAP ERPの帳票入出力を高度化する「SAP Interactive Forms by Adobe」を共同開発した。これは日本でも多少は知られているかも知れない。このほか米オラクルとはシステム構築の一環で、米マイクロソフトとはShare Pointと当社製品との連携のための協業を推進している。米EMCや米IBMなども含め、協業相手は多い。

─日本でユーザーを拡大するには、システムインテグレータ(SIer)との関係も重要だ。

ターコフ氏:SIerに対して当社製品の認知度を高めるための手を打っている。技術者認定制度である「Live Cycle ES 認定技術者」がその1つだ。日本では新日鉄ソリューションズなどが興味を示してくれている。

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Adobe / B2C / UI/UX

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