ITは企業の競争力を高めるのにとどまらず、 経済全体の成長にもダイレクトに影響を与えるようになった。 新興国を中心に世界中で躍動し始めたITの現状を、数値で鳥瞰していく。栗原 雅(編集部)
インパクト
常識を一変させるIT
木より森を見る視点を
チュニジアやエジプトで起きた反政府デモ急拡大の裏に、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)の存在があった。ITが、しかもまだ歴史の浅いSNSが、一国の体制を覆す原動力になり得るという事実が今ここにある。
世界最大手のSNS、フェイスブックの公称アクティブユーザー数は5億人を超えた。もちろん、1人が複数のアカウントを併用する例もあるだろうから、純粋な利用者数ととらえるのは早計だが、それでも億のオーダーであることに間違いはないだろう。サービスを開始したのは高々2004年のことだ。それが、破竹の勢いで全世界に浸透。米国の調査会社エクスペリアン・ヒットワイズの調べでは、2010年1月〜11月のサイト訪問者数でフェイスブックがグーグルを抜き、全米1位に躍り出た。
加速度的なITの進化は時に、それまでの常識を一変させ、まったく新しい世界観を創りだす。IT部門に身を置くと、ともすると経営陣や利用者の求めに応じて眼前の課題解決ばかりに目が行きがちだ。だが、視野が狭くなり過ぎると、進路を誤りかねない。激動の中、自らの「立ち位置」を常に確認しながら事に当たることが、何よりも重要性を増している。その意味において、技術革新や市場動向を示す「数字」に敏感になることは重要なステップだ。
ギャップ
競争力上位国の中で特に低い日本の情報化実態
図1-1に示したように、日本の労働力人口は年間数十万人規模で急減している。これだけの減少を補い生産性を維持・向上させるために、ITが重要な役割を果たすことは言うまでもない。
ムーアやギルダーの法則を持ち出すまでもなく、我々の身近にあるPC1つとってもITの進化の勢いを実感できる。例えば2005年当時、業務向けの標準PCはメモリーが256MB、ディスクが40GB程度だった。それが2010年には、それぞれ1GBと160GB程度と、いずれも4倍に増えた(図1-2)。
プロセサの処理性能に直結するトランジスタの搭載数も増加の一途だ。2005年発表のインテル製Pentium Dのそれは2億個強だったの対し、2008年発表のCorei7は7億個超と3年で3倍以上に達している。
目に見える形で進化するITを諸外国の多くは積極的に取り入れているようだ。世界経済フォーラム(WEF)によると、競争力上位のスイスやスウェーデン、シンガポール、米国は行政のオンラインサービスの状況やブロードバンドの普及状況から算出したネットワーク整備指数でも世界トップ5に入る(図1-3)。競争力6位の日本はネットワーク整備指数で21位とギャップが大きい。
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