[技術解説]

ストレージ統合に向けたポイント

ストレージの「今」を知る Part2

2011年4月5日(火)鈴木 雅喜(ガートナージャパン リサーチ&アドバイザリ部門 バイスプレジデント アナリスト)

まずは現状の棚卸しが起点、技術革新に追随する努力を──ストレージ効率化に向けて、 企業はどのような取り組みを実践していくべきか。 現状の棚卸しを起点に最適解を描くことが基本となるが、 そこには最新技術をしっかり理解する姿勢が欠かせない。

システムごとに個別導入してサイロ化してしまったストレージを数多く抱える企業は少なくない。ディスク容量が大幅に空いているもの、逼迫して追加をすぐに検討しなければならないものなどが混在している状況は、運用面でもコスト面でも効率が悪い。サーバー仮想化を一通り済ませた企業が、次にメスを入れようとしているのがストレージ運用の適正化である。

散在するストレージを仮想化技術などを使って統合していくのが基本的な考え方となるが、システム部門にとってどんな観点が必要となるのか。ポイントをまとめてみよう。

現状把握が起点となる

何を置いても必要なのは、現状の棚卸しである。社内にはどのようなストレージがあるか。そこにはどのようなデータが、どのようなタイミングで保存されているか。それは頻繁にアクセスされるのか、あるいはバックアップ用途なのかといったことをつぶさに洗い出す。データがどこで生成されるのかという点では、アプリケーションが稼働するサーバー環境との紐づけも欠かせない。

ストレージを統合するといっても、一足飛びに単一のストレージプールにまとめられるというものではない。棚卸しした結果から、用途や保存するデータの属性などと照らして、似通ったストレージ群をグルーピングしてみることで、大まかな道筋を導くことができる。新製品の導入のみならず既存資産の活用という視点も忘れてはならない。

最新技術を理解する

統合に踏み出す際には、有効な技術としてどのようなものがあるかをしっかりと頭に入れなければならない。最近の注目技術としては、シンプロビジョニングやエンタープライズグレードのSSD、自動階層化、重複排除などが挙がり、それらを実装したストレージがすでに実用段階に入っている。それぞれ、ディスク使用率の向上やアクセス性能の改善、データ量の削減といったメリットをもたらす(図2-1)。

図2-1 革新的ストレージ技術を活用せよ
図2-1 革新的ストレージ技術を活用せよ 出典:ガートナー(画像をクリックで拡大)

最新技術を採用するには、高価なハイエンド機を購入しなければならない─。そうした常識は崩れつつある。確かにこれまで、ハイエンド機とそれ以外にははっきりとした機能差があった。大手ストレージベンダーは最新機能をまずハイエンド機に実装。ミッドレンジ以下には、1〜2年遅れで展開するのが通例だったからだ。

ところが、3PAR(HPが買収)やアイシロン(EMCが買収)などの新興ベンダーがこうした定石をひっくり返した。当初から製品ラインをミッドレンジに絞り、最新技術を集中投下するケースが出てきたのだ。製品の情報を収集する上では、知名度やグレードに引きずられず、自社にとって本当に有効な技術は何かという視点を持つことが重要だ。

クラウド利用も視野に

ストレージの動向ばかりに目を奪われてもいけない。サーバーやストレージ、ネットワークといったリソースの仮想化/プール化は、さらに加速していく。プロセッシングとデータ保存、ネットワーク帯域といった機能は、あらかじめセットにし、パターン化した“リソースモデル”として提供されるようになっていくと考えられる(図2-2)。

図2-2 インフラの提供形態は、個別機能からリソースモデルへ
図2-2 インフラの提供形態は、個別機能からリソースモデルへ 出典:ガートナー(画像をクリックで拡大)

こうしてリソースのモデル化・サービス化が進む先には、クラウドストレージの利用が見えてくる。セキュリティや応答性能、データの可搬性、サービスの存続性など、現行のクラウドストレージを巡っては課題もある。しかし、調達期間の圧倒的な短さや初期投資が不要かつ従量課金である点など、うまく使うことで得られるメリットは多い。クラウドストレージの利用を検討する余地もどんどん広がってくるだろう。

ストレージは企業ITの中でもとりわけ技術進歩が著しい。それだけに、専門性を持った人材を育てることも重要なポイントだ。ストレージの運用/管理、製品選定や導入計画の策定などを責任を持って推進する専任担当者の任命をぜひとも検討したい。

監修:鈴木 雅喜 氏
ガートナー ジャパン リサーチディレクター
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ストレージ統合に向けたポイントまずは現状の棚卸しが起点、技術革新に追随する努力を──ストレージ効率化に向けて、 企業はどのような取り組みを実践していくべきか。 現状の棚卸しを起点に最適解を描くことが基本となるが、 そこには最新技術をしっかり理解する姿勢が欠かせない。

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