新興国の台頭、環境問題、ソーシャルメディアの広がりなど、20世紀には存在しなかった事柄が増える21世紀。 そんな中で人や組織、企業はどんな行動様式を身につけるべきか。この問への解が「ソフトパワー」である。
先進国と新興国、政府と国民、会社と社員…。様々な事柄や物事の関係が今、大きく変わっている。かつて先進国は新興国の経済成長を助ける存在だった。解決の糸口が見えない世界金融危機の中で今、先進国はその力を失い、新興国のパワーに頼らざるを得ない局面すら生まれている。会社と社員も同様だ。役職による上下関係を元にした一方的な指揮命令だけでは、有能な社員ほど会社を離れかねない。
それは我々IT関係者にとって重要なシステム開発や活用も、同じかも知れない。費用を払う発注者と仕事を受ける受注者という関係を利用して、発注者が理不尽あるいは過大な要求を続ければ、それで優れたシステムを得られるかというと違う。日本国内における開発はまだしも、オフショア開発となればなおさらである。このことはオフショア開発に臨んだことがある人の多くが経験しているだろう。
そうした時代において我々は何を必要とし、どういったアプローチをとるべきなのか。本稿ではそれを理解する一助として、上下関係や金銭により相手を動かすのではなく、相手が能動的に動いてくれるようにするための高度な手法である「ソフトパワー」について解説したい。
ソフトパワーとは?
ソフトパワーは、国際関係論の専門家である元米ハーバード大学教授のジョセフ・ナイ(Joseph Nye)氏が提唱した言葉である(詳細は「ソフト パワー」日本経済新聞出版刊を参照)。同氏はオバマ大統領が就任後に、駐日大使候補として最初に名前が挙げられ、日本や中国の事情に精通した人でもある。
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