[イベントレポート]

「DevOps=ソフトウェア開発は開発と運用が一体となって行うべきだ」─IBM Innovate 2012

2012年6月6日(水)IT Leaders編集部

IBMは2012年6月3日、米オーランドで年次イベント「Innovate 2012」を開催した。ソフトウェア開発ツール「Rational」に関する最新技術や導入事例などを紹介する場で、ソフトウェア開発に携わるプログラマを中心に約4000人が詰め掛けた。ここでは、初日の基調講演の内容を紹介する。

基調講演では最初に、Rationalのマーケティング担当バイスプレジデントであるジーナ・プール氏が登壇。イノベーションの必要性について言及した。「企業を取り巻く環境が劇的に変化する中、いかにイノベーションを起こして競争力を高められるかが企業には求められる。そのためにはテクノロジに目を向け、どのように活用すればイノベーションを起こせるのかを考えなければならない」と訴えた。同社が企業のCEOを対象にしたアンケートでは、今後の経営戦略として何を重視するのかとの問いに対し、これまでは人材育成を求める声が多かったが、現在は「テクノロジ」と答えた割合が一番高かったという。

クリストフ・クレックナー氏
写真 IBM Rational部門 ゼネラル・マネージャー クリストフ・クレックナー氏

プール氏は、イノベーションにより企業の価値を向上するにはソフトウェアが大きな鍵を握ると指摘する。「銀行の中には、顧客がモバイル経由で取引できるソフトを提供し、企業の価値向上につなげるケースが見られる。このように、競合他社に先駆けてイノベーションを取り込み活用するには、いかにソフトウェアを迅速に開発して展開できるかが重要となる。しかし、ニーズに合致する強力なソフトウェアを開発できるのかという不確実性や、失敗によるリスクが懸念されるのも事実。そこでこうした課題を払拭するため、ソフトウェアに求める要件や品質などをコントロールできる環境を構築することが必要である」(プール氏)。

これを受けて登壇したRational部門ゼネラルマネージャのクリストフ・クレックナー氏は、そのための具体策としてソフトウェアの開発者と運用者の間にある溝を埋めることが急務であると説く。「社会のニーズに合わせて急いで開発したソフトウェアでも、きちんと稼働しないなどの問題だらけのソフトウェアでは運用者の負担が増すだけだ。両者が考えるソフトウェアのギャップをなくすため、組織や部署を横断するコラボレーションを強化することが先決である」と聴衆に訴えた。

IBMは、ソフトウェア開発におけるコラボレーションの必要性を以前から提唱してきた。今回のInnovateではこの考えをさらに進め、開発者と運用者が一体となってソフトウェア開発に着手すべきである点を強調した。これを具現化するコンセプトとして「DevOps」というキーワードを全面に打ち出した。

DevOpsは、これまで十分な信頼関係を築きにくかった開発チームと運用チームの緊密な連携を重視する。これにより手戻りなく効率よくソフトウェアを開発できるようになれば、ソフトウェアの迅速な市場展開が可能となり、競争優位に立つことができる。「開発チームだけでソフトウェアのライフサイクルを管理するのではなく、これからはどのようにソフトウェアが運用され、どんな問題が考えられるのかまで含めた広義のライフサイクルを管理できるようにすべきだ。DevOpsを実現するには、ソフトウェアに携わる部署やチームを横断した一貫した情報共有が肝となる」(クレックナー氏)。

開発/運用チームの溝を排除し、ソフトウェアの迅速な展開を可能にした企業も出始めているという。通信事業を手がけるエリクソンは、開発と運用チームの進捗などをダッシュボードを使って可視化。レポートを作成して進捗を報告するなどの無駄な作業を取り除き、目指すべきソフトウェアの設計に集中できるようにした。そのほか、製造業のサムスンはソフトウェアを展開するまでのスケジュールの遅延をなくし、金融業のオーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)は限られたスタッフで多くのソフトウェアを展開できるようした。

基調講演では、品質を維持しつつ迅速なソフトウェアの展開までを視野に入れたRational製品群も紹介された。中でもIBMが2012年1月に買収したグリーンハットの製品を中核に据える「Rational Workbench」は、テスト作業を迅速に進めることでDevOpsのコンセプトを支援する。複数のソフトウェアなどで構成するシステムに対し、特定のソフトウェアを仮想的にシステムに実装することで、すべてのソフトウェアが開発し終えるのを待たずにシステムのテスト作業を実施できるようにする。

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