[新製品・サービス]
イージェネラ、「PAN Manager」がマルチベンダー対応、異なるメーカー製のブレードサーバー間でフェイルオーバーを可能に
2012年6月8日(金)栗原 雅(IT Leaders編集部)
メーカーの違いを越えて、サーバーのフェイルオーバーが可能になる─。米イージェネラが2008年から力を入れてきたサーバーリソース管理ソフト「PAN Manager」のマルチベンダー対応によって、半年以内の実現が現実味を帯びてきた。
[発表の概要]
256基のNEC製ブレードを管理
米イージェネラの日本法人は2012年5月17日、「PAN Manager Software for NEC SIGMABLADE System(PAN Manager for NEC)」を発表した。文字通り、NEC製ブレードサーバー「Express5800/SIGMABLADE」を管理するソフトである。エンクロージャ(ブレードを収容するきょう体)に実装した複数のブレードをハードウェアレベルで仮想化。プロセサやメモリーを一元管理したり、それらのリソース割り当てを制御したりするのに用いる。エンクロージャ内のいずれかのブレードに障害が発生した際、他のブレードに処理を切り替えるフェイルオーバーも自動実行する。
NECが開発したフェイルオーバー機構「サーバ・ステージング」により耐障害性を高めたという。この機構により「障害時に2〜3分で正常なブレードに処理を切り替え、システムを復旧できる」(NECの丸山隆男執行役員)。
出荷は7月中旬。NECが世界総代理店としてグローバルで独占的に販売、サポートしていく。
PAN Manager for NECの管理対象は当初、1台のエンクロージャに収納した16基のブレードにとどまる。しかし、9月をメドにリリースされる「PAN Domain Manager(仮称)」を利用することで、16台のエンクロージャをPAN Managerの管理下に置けるようになる(図)。そうなれば合計256基のブレードを使った柔軟なリソース割り当てや、フェイルオーバーが可能になる。
[将来の可能性]
異機種間でフェイルオーバー
PAN Manager for NECの発表に先立つ5月10日、米イージェネラは米IBM製ブレードサーバー「Blade Center」で稼働する「同 for IBM BladeCenter」を発表した。8月中には出荷する模様だ。その約1年前の2011年4月には、米ヒューレット・パッカード(HP)のブレードサーバー「Blade System」用の「同 for HP」の提供を始めている。
一見すると、単にPAN Managerの管理対象サーバーが増えているだけの印象だが、一連の発表が持つ意味は決して小さくない。「複数メーカーのサーバーを用いたプライベートクラウド基盤」(大和総研の鈴木孝一専務取締役)につながるからだ。
イージェネラは現在、「Multi-PAN」と呼ぶ新たな機能の開発を推進している。異なるメーカーのサーバーを統合管理するための機能だ。これを使うと、例えばHP製のブレードに障害が発生した場合、そのブレードのリソースを利用しているシステムの処理をIBM製やNEC製のブレードで引き継ぐ、といった運用が可能になる。
すでにプロトタイプの開発を終え、HP製とIBM製のサーバーを使った動作検証も済ませている。早ければ2012年10月にも、米HP版とNEC版、米IBM版のそれぞれのベースになっている「PAN Manager 7」に実装する方針だ。
なお、イージェネラはNEC版などに先行して、米デルと富士通のブレードサーバー向けのPAN Managerを提供済みである。だが、いずれも内部アーキテクチャを大幅に変更する前の旧バージョン「PAN Manager 6」を使用している。このため現行では、Multi-PANによる異機種混在環境の統合管理やフェイルオーバーの機能を利用できない。ただし、富士通版は2013年中にバージョンアップする。 (栗原)