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[アプリケーション基盤の新標準~真の“クラウド対応”に求められる要件を探る~]

事例に学ぶ、クラウド基盤にOSSを選ぶ理由

2012年8月24日(金)

~JBoss Enterprise Middleware を採用した、一歩先行くクラウドサービス構築/OSS活用術~ ビジネスの効率化こそがクラウドを導入する第一の目的であるはずだが、皮肉なことに“クラウドシステムが発揮しうる効率化の効果”を十分に享受できないケースがある。その理由のひとつが、クラウド環境に適していないアプリケーションプラットフォームの採用が、効率向上の阻害要因になっているということだ。それでは、どのようなアプリケーションプラットフォームを選ぶべきなのか――この疑問への回答を、クラウドサービスにオープンソースソフトウェア(OSS)を活用した先進企業2社の事例をもとに考えてみる。 ※本稿で紹介する事例は、レッドハットのユーザー事例/サクセスストーリーをまとめた季刊誌「OPEN EYE Express」に掲載されたものです。

JBossを採用し、OSSのメリットを活かしながら、信頼性、柔軟性、拡張性を実現

 JBossとクラウドとの親和性の高さに着目し、自社やパートナー、そして顧客のビジネスの効率化に役立ようとしている企業は数多く存在する。このような取り組みを進める先進企業の1つが、国内の代表的なSIerであるNTTデータだ。

 NTTデータでは、M2M(Machine to Machine)のトータルソリューション「Xrosscloud™(クロスクラウド)」を提供している。ちなみにM2Mとは、機械と機械が人間を介することなく、ネットワークを通じて相互に情報を交換しながら制御を自動的かつ最適に行うシステムを指す。スマートフォンやタブレット端末などの自動アップデート、電気自動車の充電スタンドの利用認証や課金決済、情報管理などがそれに該当する。

 同社では今後、M2Mデータが集まる共通プラットフォームとしてのXrosscloud™の特性を活かして、企業間、異業種間等で各種データを連携することで生まれる新規サービスの提案や、そこに集まるデバイス等からの大量の情報を活用するビッグデータ分析活用サービスの提供拡大を目指している。そこで、その基盤となるマルチデバイス・アプリケーションプラットフォーム「Xcross CoreStage」に、レッドハットの「Red Hat Enterprise Linux(RHEL)」とJBossが活用されているのである。

 では、なぜM2MクラウドサービスのプラットフォームにJBossが採用されたのであろうか。NTTデータが選択理由として最も強調していることが、OSSのメリットを活かした信頼性、柔軟性、拡張性の実現である。さらに、OSSのメリットに、これまでの商用ソフトウェアを知り尽くしたNTTデータのスキルとノウハウを組み合わせることで、効率化と品質向上を実現し、他社との差別化も実現できるという。

 また、M2Mのように非常に多くの数のデバイスがつながるクラウドサービスでは、顧客の利用増加やビジネス成長が読みにくい。そのため、デバイスやサーバーの台数にしばられないプラットフォームを必要としていた。その点、レッドハットのOSSに適用されているサブスクリプションモデルであれば、システムを拡張しても必要最低限のコストに抑えることができるわけである。

 クラウドのメリットは、小さいスケール(少ないリソースおよび少ないコスト)から始められて、必要に応じてスケールを拡大できることにある。スケールを拡張する際にライセンスがついて回ると、サービス提供価格そのものを見直さなければならないが、OSSならその心配をしなくて済む。このようにシステムコストを抑えられるOSSでクラウドを構築すれば、商用ベースのソフトウェアを採用する場合と比較して、付加価値を生み出すための投資を無理なく回収できると、NTTデータは述べている。

 さらに、クラウド時代に最適かつオープンなソリューションが充実している点もRHELとJBossの重要な選択ポイントとなった。具体的には、デバイスの接続でJBossのBPM機能を使うことで効率化を実現することができたという。

 今回のNTTデータのXrosscloud™での採用事例は、クラウドアプリケーションプラットフォームとして求められる要件にJBossがまさに合致していると言えよう。

2,000社超/40万人のデータを支える基盤にRHEL/JBossを採用

 もう1つ、JBossでITプラットフォームを構築して顧客に価値あるサービスを提供している企業として、三菱総研DCSの事例を紹介したい。同社は、金融機関向けシステムで豊富な実績と経験を有するのに加え、BPO(Business Process Outsourcing)を始めとするアウトソーシングでも強みを有する。そんな同社では、人事給与アウトソーシングサービスをクラウド化した「PROSRV(プロサーブ)on Cloud」の提供を開始しているが、このシステムの中核に使われているのがJBossなのである(ちなみに、この事例でもOSはRHELだ)。

 PROSRV on Cloudは、2,000社超/約40万人のデータを預かるサービスとなるため、そのプラットフォームにはきわめて高い信頼性とスケーラビリティが求められた。さらに同社は、SaaS型サービスの増強を視野に入れており、将来性のあるテクノロジーであることや、競争力のある価格でサービスを提供できることも重視していた。

 これらの要件を考慮した結果、三菱総研DCSが最適な解として選んだのがJBossである。その信頼性と拡張性の高さ、顧客にコスト面や運用面の負担をかけることなくサービスの拡張が可能といった特徴についての評価ポイントは、NTTデータとほぼ同様だと言える。

 加えて、JBossには、同社が定めるBPO企業の「品質」「セキュリティ向上」「効率化」にマッチしたコンポーネントが充実していることも評価した点だ。OSSであれば何でも良いわけではない。インターネットや比較的パブリックなネットワークにさらされたクラウドサービスには、上述のようなエンタープライズレベルのサポート体制が確立しているエンタープライズOSSの採用が重要である。

 三菱総研DCSは今後、ユーザー数の拡張に伴いシステムを随時拡張していく予定だが、JBossのスケーラビリティについてはまったく不安を感じていないとのことだ。さらに同社は、データベースの仮想化なども踏まえ、新たな取り組みに着手しようとしており、そこでもJBossが威力を発揮すると期待を寄せている。

 今回紹介したNTTデータと三菱総研DCSの事例に共通して言えるのは、クラウド基盤のアプリケーションプラットフォームとしてJBossを選び、高い柔軟性と拡張性、そして効率性を実現していることである。クラウド環境に求められるアプリケーションプラットフォームの機能要件とは、まさしくビジネスそのものの柔軟性、拡張性、効率性を高めることだ。それを実現するのは、オンプレミス環境で軽快に動作していた従来のアプリケーションプラットフォームではなく、クラウドに対応したアプリケーション基盤、つまり、クラウドアプリケーションプラットフォームなのである。

「OPEN EYE」について

OPEN EYEは、レッドハットのユーザー事例やサクセスストーリーを紹介する情報誌(3か月に1回発行)です。Red Hat Enterprise Linuxの導入事例、JBoss Enterprise Middlewareの導入、UNIXからLinuxへの移行、WebLogic/WebSphereからJBossへの移行などを実践した企業が、ユーザー視点で成功の秘訣を語ります。OPEN EYEは、ご希望の方に無料で毎号(3か月に1回)お届けするプログラムをOPEN EYE Expressを提供しています。

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