[市場動向]
既存システムの移行先として支持を集めるIIJ GIOの「屋台骨」を完全解剖
2012年9月11日(火)栗原 雅(IT Leaders編集部) 緒方 啓吾(IT Leaders編集部)
クラウドサービスのメニューにはどんなものがあるのか? ユーザー企業が自社のシステム要件に見合ったサービスを選択するうえで 特定のクラウドサービスの内容を深く理解し、ある種の“基準”とする意味は大きい。 そこで、ここでは「IIJ GIO」の中核であるIaaSのサービス内容を詳細に解説する。
日本のクラウドサービス事業者が提供するサービスは、例外もあるが、それほど単純ではない。ユーザー企業の要求に極力、柔軟に応えようとするためだ。IIJ GIOのサービスも、その例に漏れない。IaaSだけでも大きく3タイプのサービスがある。まず引き合いと導入が共に増えているという主力サービス、「IIJ GIOコンポーネントサービス」から見ていこう。
コンポーネントサービス
“部品”を組み合わせて要件に見合う基盤を整備
IIJ GIOコンポーネントサービスは文字通り、サーバーやストレージ、ネットワークといった各種システム構成要素をIIJが“コンポーネント(部品)”として用意。それを組み合わせて、ユーザー個々の要件に合致したインフラを構築するためのIaaSである(図2-1)。仮想サーバーはもちろん、占有型の物理サーバーを調達することもできる。
構成の自由度が高いため、構成要素の組み合わせや割り当ては自動化されておらず、ネットワークセグメントの設定などはIIJの技術者が対応している。このため申し込みから利用開始まで、最低3営業日かかる。これは後述する「IIJ GIOホスティングパッケージサービス」と大きく異なる点だ。
物理サーバーも選択可能
個別調達も引き受ける
コンポーネントの1つが「ベースサーバー」である。他のユーザー企業と物理サーバーを共用する仮想サーバー「Vシリーズ」、1台丸ごと専有できる物理サーバー「Xシリーズ」の2つが基本(図2-1左)。2012年8月には、これにVWシリーズが加わった(後述)。
VシリーズにはLinux版(CentOS、Red Hat Enterprise Linux)とWindows版があり、CPUやメモリーなどが異なる複数のモデルを用意している。Linux版は、2.26GHz動作で4コアの「Xeon L5520」換算で0.75コア相当のCPU性能と1.5GBメモリーを割り当てたV15が最小。12コア相当のCPUに24GBメモリーのV240まで合計5モデルがある。Windows版は0.5CPUコアと1GBメモリーの最小構成から、4CPUコア、8GBメモリーの最大構成までの4モデルという具合だ。価格は月8000円から。一方、Xシリーズでは12コア、36GBの物理サーバーを提供する。こちらは月5万9000円から。
仮にVシリーズやXシリーズが要件に合わなければ、個別調達をIIJに依頼できる。決まったメニューから必要なものを選ぶ一般的なクラウドのイメージからは遠いが、企業の求めに応じてSolaris搭載機を用意し、月額課金で提供している実績もある。最低契約期間はいずれも1ヵ月。個別調達の場合でも「よほど特殊な要件でない限り最低契約期間は同じにしている」(神谷修 GIOマーケティング課長)。
ネットワークやストレージなど3種のアドオン
当然、CPU以外も選択可能だ。その1つである「ネットワークアドオン」は、ベースサーバーが標準で備えるネットワーク機能を強化するもの。例えばベースサーバーが備えるインターネット接続回線を、専用回線に変更できる。インターネットVPNや閉域網を使って、企業内システムと接続することを想定しているわけだ。セキュリティはもちろん、ネットワーク帯域幅も一定以上を確保したい場合に向くアドオンである。ベースサーバーが備えていないロードバランサやWebアプリケーションファイアウォールなどのネットワーク、セキュリティ関連の機器もサービスとして提供する。
第2は「ストレージアドオン」。Vシリーズが最低30GB、Xシリーズが標準で300GB備える内蔵ディスクとは別に、増設ストレージを選択できる。いずれもネットワーク経由で接続するタイプのストレージであり、現時点ではNASストレージ、ファイバーチャネルまたはiSCSIで接続するSANストレージを用意する。容量の追加は100GB単位。データベースサーバーのデータの保管先、あるいはベースサーバーのデータのバックアップ先としての利用を想定している。
もう一つが「モニタリング&オペレーションアドオン」と呼ぶ、運用管理に関わるもの。具体的にはシステムの監視や運用をIIJが代行する。ジョブの自動実行ツール「Cron」の実行結果やログファイルの内容を監視したり、ネットワークやストレージの使用率をチェックしたりする「モニタリングメニュー」、手順書に従って日々の定型業務をこなし、障害時の対応を代行する「オペレーションメニュー」、運用状況を定期報告する「レポートメニュー」がある。
2012年7月には新たなメニューとして、米オラクルの「Oracle Database 11g Release2」、「MySQL 5.5」をサービスとして提供する「データベースアドオン」を追加した。ライセンスを購入せず、運用込みのデータベース環境をサービスとして利用できる。
いずれもCPU1コア相当に2GBメモリーのType Eから、CPU4コア相当、4GBメモリーのType Cまで3つのグレードを用意。ディスク容量は最大で500GBまで拡張可能だ。OracleDBはスタンダード版とエンタープライズ版を選択できる。最低利用期間は1カ月で、料金は月額13万円から。料金の高低はともかく、企業向けのソフトウェアをサービスとして利用できるのは朗報といえるだろう。
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