[海外動向]

ビジネスを加速する企業ITの4つの潮流─Software AG ProcessWorld 2012

2013年1月9日(水)河原 潤(IT Leaders編集部)

独ソフトウェアAG(Software AG)が、年次ユーザーコンファレンス「ProcessWorld 2012」を米オーランドで開催した(会期:2012年10月15日〜17日)。2007年に米ウェブメソッドを買収して以来5年間、BPM分野に経営資源を集中させてきた同社が区切りのタイミングで発したメッセージは「競争優位を生む源泉としてのビジネスプロセス改革」。会場では、その実現に向けた考え方と技術が語られた。

 ソフトウェアAGは、ドイツを本拠に全世界70拠点で約1万社の顧客を擁し、年間で11億ユーロを売り上げる大手グローバルITベンダーだ。

 1969年に設立され、1971年にAdabasデータベースを投入しメインフレーム市場での地歩を築いた同社は、時代ごとにメインフレームからクライアント/サーバ・モデル、Webアプリケーションというコンピューティングモデルの遷移をとらえた製品を展開しながら業容を拡大してきた。直訳すれば「ソフトウェア株式会社」となる社名からは、具体的にどのような分野を扱うベンダーなのかをイメージしにくいが、常に時代のニーズに即したエンタープライズ・ソフトウェアを提供し続けてきたという意味では“名は体を示している”とも言える。

 そんなソフトウェアAGが2000年代後半より事業の中核に据えるのがBPM(ビジネスプロセスマネジメント)分野だ。2007年の米ウェブメソッド買収を端緒に、2010年の独IDSシェアー買収で現行のBPM製品群の骨格が完成。その後もM&Aを推し進めて、CEP(複合イベント処理)、MDM(マスターデータ管理)、インメモリー型データ管理といった周辺の技術・製品を手中にし、従来型のBPMに自律的な改善の仕組みが加わるなど同社がBPMの進化モデルと位置づける「BPE(Business Process Excellence)」実現のためのポートフォリオを整えているところだ。

企業ITの4大潮流が、ビジネスを加速させる重要な要素に

 BPM市場に参入してから5年という区切りのタイミングに見据える方向性として掲げられたProcessWorld 2012のテーマは「Get There Faster」。ビジネスにまつわる諸活動を“より機敏に”行える仕組みと技術にスポットが当てられた。

 10月16日、開幕基調講演のステージに立った同社CEOのカールハインツ・シュトライビッヒ氏は、「ビジネス環境の変化が激しさを増す中で、企業は収益拡大、業務効率や市場参入、製品投入といった経営活動のスピードをより加速させていかなくてはならない。当社のBPM製品はその根幹の仕組みとしての役割に加えて、今、ITの世界で起こっている新しい潮流も取り込んで進化していく」と強調。米ガートナーが示す企業ITの4大潮流(ソーシャル、モバイル、クラウドコンピューティング、ビッグデータ)を挙げてこう説明した。

 「4つの顕著な潮流は、ビジネスプロセスとITの統合やデータマネジメント、顧客・パートナーを含めたステークホルダー間のコミュニケーションにおいて従来とられてきた手法を一変し、ビジネス活動のスピードアップやビジネス・アジリティの実現で市場競争力向上を図ろうとする顧客のビジネスプロセス改革を支援するものである」。

写真1 ソフトウェアAG CEOのカールハインツ・シュトライビッヒ氏は「ソーシャル、モバイル、クラウド、ビッグデータの4大潮流に合わせて機能強化を図った」と強調
写真1:ソフトウェアAG CEOのカールハインツ・シュトライビッヒ氏は「ソーシャル、モバイル、クラウド、ビッグデータの4大潮流に合わせて機能強化を図った」と強調

webMethods/ARIS
新バージョンの強化ポイント

 コンファレンスの開催に合わせて、BPM製品「webMethods」および「ARIS」の新バージョンが発表された。シュトライビッヒ氏が述べたように両製品とも、4大潮流への対応が新機能や機能強化ポイントとして盛り込まれている。

 主力製品のwebMethodsは、SOAを基盤にBPM、EAI(企業アプリケーション統合)、BAM(ビジネスアクティビティ監視)、MDMなどのコンポーネントを含むスイート製品である。

 約2年ぶりのメジャーバーションアップとなるwebMethods 9.0では、ビジネスプロセスの実行フェーズの高速化を目的に、ビッグデータへの本格的な対応が掲げられた。これは、2011年の米テラコッタ買収で得たインメモリー型データ管理技術「Terracotta」との統合が進んだことで、webMethods 9.0上で数TBに及ぶ大容量データへのマイクロ秒単位での高速なアクセスが可能になったという。

 「テラコッタの技術・人材の獲得とwebMethodsへの統合は、過去2年間の中で最も重要な取り組みの1つとなった。この技術が顧客のビッグデータ活用のハードルを大幅に下げ、新規ビジネスの迅速な立ち上げを容易にしてくれる」とシュトライビッヒ氏。

 また、ソフトウェアAGのCTO、ウルフラム・ヨースト氏は、ビッグデータの高速処理を担うTerracottaのインメモリー技術とwebMethodsのSOA基盤からなる、webMethods 9.0のビジネスプロセス管理レイヤを「アジリティ・レイヤ」と呼んでこう説明した。「新しく出現したアジリティ・レイヤによって、実際の業務群とそれらに対応した各ITシステム群の統合・連携はより柔軟かつ高速なものになる」。

 webMethods 9.0にはこのほか、SaaS型アプリケーションの統合機能を拡張する「webMethods CloudStreams」、各種モバイルデバイスにセキュアなアクセス手段を提供する「webMethods Mobile Suite」、ビジネスプロセス最適化に向けたコラボレーションやクラウドソーシングの活用を促すソーシャルコラボレーションツール「webMethods Pulse」が新機能として備わっている。

 一方ARISは、独自の統合情報システムアーキテクチャ・メソドロジーを基にしたビジネスプロセス分析・設計ツールおよびコンサルティングサービスで構成される。IDSシェアー時代よりERP構築・運用時のビジネスプロセス・モデリングや分析を担うツールとして、多数のSAPユーザーから支持され続けてきた実績を持つ製品だ。

 ARIS 9.0では、分析機能の使い勝手の向上やモバイルデバイス向けのビジネスダッシュボードの追加のほか、上述のwebMethods Pulseと同様の位置づけで、モデリングへの評価などビジネスプロセスの改善にあたってのコラボレーション作業を支援するソーシャル・コラボレーションツール「ARIS Connect」が用意されている。

写真2 「Terracottaのインメモリー技術が業務/システム間の統合・連携を柔軟かつ高速なものにする」と語る、ソフトウェアAG CTOのウルフラム・ヨースト氏
写真2 「Terracottaのインメモリー技術が業務/システム間の統合・連携を柔軟かつ高速なものにする」と語る、ソフトウェアAG CTOのウルフラム・ヨースト氏
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