インフォテリアが主力製品「ASTERIA WARP」の解説本を発行した。オフィスソフトやOS、DBMSなどと違って、汎用的に広く利用されている製品分野ではないだけに珍しい取り組みだ。その意義について考察してみる。
システムイニシアティブ協会(SIA)という集まりがある。ベンダー依存や丸投げではなく、ユーザー企業が主体性を持ってシステムを企画/開発/運用するためには何が必要か、実践している企業はどうやっているのかなどを議論・研究する場だ。人気コラム「是正勧告」でおなじみの木内里美氏が理事長を務め、筆者も末席理事を拝命している。
そのSIAの例会が1月中旬に開かれ、学習塾チェーンの市進ホールディングスの今林豊IT戦略推進室長が、プログラミング工程を自動化するツール「Genexus」の採用経緯をこう話した。「ベンダーに話を聞いたし、使っている企業を紹介してもらいもした。それでも”い・か・が・わ・し・い”。プログラムの自動生成なんて、そんなうまい話があるわけないとの感触は、払拭しきれなかった」。最終的にはあること(後述)をきっかけに採用に踏み切り、現在、システム構築の真っ最中である。
さて、この記事でお伝えしたいのはSIAやGenexusの話ではなく、IT製品、特に企業向けの製品、しかも必ずしもメジャーではない製品に関する情報、特にその製品を採用するための情報についてだ。本誌のような専門メディアやベンダーのWebサイト、セミナーなどを丹念に調べれば、ある程度のことは分かる。しかし、それで踏み切れるかというと何かが足りない。先行ユーザーに話を聞いたり、デモを見たりすればより多くの情報を得られるが、時間的に限界があるし、上述の市進ホールディングスの例のように、なかなか採用に踏み切るには至らない…。
仮に採用しても、今日のIT製品は多機能。使いながらマニュアルを精査し、開発コンセプトや機能の全体像、使い方、運用方法などを、包括的に把握するのは簡単なことではない。結果として、採用した製品でできることをアドオン開発してしまったり、別の製品を追加導入したり、といったこともまれに起きる。
こうした状況を打破する一助として、インフォテリアが主力製品「ASTERIA WARP」の解説本を、2013年12月に発行した。200ページ以上を使って機能や使い方を解説している。この種の解説本は、Excelなど個人向けソフトや、Windows/Linuxなど汎用的な製品、OracleやSAPのようなメジャーな製品はさておき、用途を絞ったB2B製品になるとまれ。販売部数が見込めないので流通させにくいし、価格も高額になってしまうからである。
インフォテリアはこの問題を、電子書籍とすることで解決した。紙の書籍に比べると出版経費を抑えられるので割安にできるし、電子書籍なので在庫する必要がない。改訂版を制作するのが相対的に容易というメリットもある。電子書籍を読める端末や環境が急ピッチで整ってきたことも大きい(ただし紙の書籍にするオンデマンド出版もある)。
それはともかく、「開発した企業自身が、パンフレットや自社のサイトでできるレベルを超えて、詳しく解説する」というアプローチは、IT Leadersが心がけてきたことに近い。例えばOracle特集やAzure特集、IIJ GIOの特集。別冊として発行(編集協力)した「IBM Software Vision」、「富士通System Integration Renaissance」もある。タイムリーかつ合理的な費用でシステムを構築するには、製品やサービスに内包される設計思想やアーキテクチャ、機能の全体像を抑えておくことが必要条件との考えからである。
そんな想いと、「ASTERIA WARP」解説本の発行元が兄弟会社のインプレスR&Dであることもあって、早速、読んでみた。正式な書名は「ASTERIA WARP 基礎と実践」。ページ数は243ページ、価格はアマゾンKindleや楽天Kobo版が1800円(オンデマンド印刷板が3045円)である。