インフォテリアが主力製品「ASTERIA WARP」の解説本を発行した。オフィスソフトやOS、DBMSなどと違って、汎用的に広く利用されている製品分野ではないだけに珍しい取り組みだ。その意義について考察してみる。
製品に込めた思想や機能を書籍で訴求する効能
結論を書くと、筆者が読みたい(知りたい)内容とは微妙に違っていた。第1章「ASTERIAとは」では、この製品を「『グラフィカルプログラミング』をコンセプトとしたデータ連携ミドルウェアです」と定義した後、すぐに製品の機能や構成の紹介が続く。データ連携に関わる問題問題をどう捉え、どんなアプローチで解決するのか、どんなアーキテクチャなのかなど、ASTERIAの基本コンセプトはあまり書かれていなかった。
第2章「ASTERIAを使ってできること」も同様。「ASTERIA WARPは、アイコンをつないでいくだけでいろんな処理を作ることができるミドルウェアです。SDK(Software Development Kit)も揃っていますので独自の処理を書くこともできます」に続いて、各種データベース、Excel、メール、クラウドサービスなどとの連携機能があることが示される。
文章は読みやすいが、何ができるかが説明の中心なので、例えば「データ連携ミドルウェアがなぜメールと連携するのか(そのメリットは?)」、「グループウェアとの連携はなぜ言及されていないのか」といった疑問が残ってしまう。
このほか本書には「第3章 ASTERIA環境構築」「第4章 フローサービス超入門」「第5章 フローサービス基礎知識」「第6章 開発のヒント」「第7章 パイプラインサービス」「第8章 ASTERIA応用例」といった章がある。上記の内容やこの章立てから、本書がデータ連携に問題意識や関心がある人向けというより、ASTERIA WARPの導入を決めた(あるいは導入済みの)人に焦点を合わせた書籍であると言える。
これが「読みたい内容とは微妙に違っていた」という理由だが、だからといって本書の価値が損なわれるわけではない。ASTERIA WARPが「EAIツール」という製品ジャンルから想定される以上の機能を備えることが分かったし、売り物のグラフィカルプログラミングの利用イメージも把握できた。
実は冒頭で言及したSIAの例会では、ブックオフのIT統括部企画グループの石毛信次マネージャーが「開発ツールとしてASTERIAを利用中である」ことを発表した。本書を読んでいたおかげで、同氏の講演をスムーズに理解できたというメリットもあった。こうした意味で類似の書籍を出すなど、製品ベンダー各社にはより情報発信に努めることを期待したい。
なお冒頭で述べた市進ホールディングスが「Genexus」の採用に踏み切った「あること」とは、ベンダーの紹介ではなく、自ら調べてユーザー企業を訪問し、詳しく話を聞いたこと。訪問したのは神奈川県小田原市にある鈴廣蒲鉾だったという。
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