米アクセンチュアと米マイクロソフトの合弁会社、米アバナードの日本法人社長に2014年5月1日付けで就任した安間裕氏。就任会見で同氏は、「2015年におけるITベンダーの巨人には、マイクロソフトが復権する」と断言した。マイクロソフトとの合弁会社なのだから、その発言は当然とも言えるが、そこまで言い切れる理由は気になるところ。そう断言できる理由は何か。
アバナードは、米アクセンチュアと米マイクロソフトが2000年に設立したジョイントベンチャー(JV)。アクセンチュアのコンサルティングに基づくシステムをマイクロソフトのテクノロジーで実現するのが主な役割だ。アクセンチュアは独SAPなどともERP(Enterprise Resource Planning:統合基幹業務システム)導入などで同種の組織を持っているが、いずれも業種・業務特化型。テクノロジー特化は、このアバナードだけである。日本法人は2005年から活動している。
日本法人の新社長についた安間氏は、団体系保険会社および外資系商社のITを担当した後、1998年にアクセンチュアに入社。いったん、アクセンチュアを飛び出すものの、2001年に再入社した。2002年には、アクセンチュア・テクノロジー・ソリューションズの社長に就いている。2009年からは、アクセンチュアでアウトソーシングやBPO(Business Process Outsourcing:ビジネスプロセス・アウトソーシング)事業を牽引し、2014年4月にアバナードに入社した。
その安間氏は、「2015年のITの巨人はマイクロソフト」だという。その真意はどこにあるのか。安間氏が挙げる理由は、大きく3つある。
1つは、「デジタル化の進展と新しいテクノロジーによって、企業や社会、人々の働き方のすべてが変わろうとしている」(安間氏)こと。クラウドコンピューティングやビッグデータ、モバイル、ソーシャルネットワークなど、当初は個別に語られてきた、これらキーワードも、今では融合した形で語られている。実際、IT業界は今、業種・業務特化型ベンダーを含め、製品/サービス開発の舵をデジタル化に大きく切り始めている。
2つめは、「次世代のITは、ビジネスとパーソナルの融合が牽引するため」(安間氏)である。メインフレームに始まった企業のIT活用は、PCの時代を経て、今は「モバイル+SaaS(Software as a Service)の時代」(同)になっている。米グーグルや米Facebookといった現代の巨人の登場で、パーソナルライフが大きく変化した。しかし、今後は、「この流れがビジネスに取り込まれ、ビジネスとパーソナルの融合が始まる」とみる。
そこでは、ビジネスとパーソナルの双方に取り組んできた歴史を持つマイクロソフトに一日の長があるというわけだ。具体的には、「Dynamics AX/同CRM」といった業務パッケージ/サービスから、エンタープライズソーシャルの「Yammer」、ビデオ会議の「Lync」など、エンド・ツー・エンドをカバーする。安間氏の見方によれば、FacebookもGoogleも「開発の方向はパーソナルライフ中心にとどまっている」。
最後は、「既存システムの存在」(安間氏)だ。ビジネスとパーソナルの融合が進むといっても、企業が長年構築してきたシステムを一新するわけではなく、既存システムが持つデータや機能を生かしながら、最新テクノロジーによる機能/サービスの拡張を図る。
その一例としてアバナードが挙げるのが、米デルタ航空が機内導入したスマートフォンを使った乗務員用端末だ。機内販売のPOS端末としてだけでなく、顧客の搭乗回数と空席状況を見ながら、優良顧客には座席のアップグレードを機内で実施するなど、これまでにない顧客体験を生み出しているという。