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[エキスパート・ボイス]

ユーザー企業、システム子会社にも大きな影響─今理解しておくべき改正派遣法のポイント

2014年4月30日(水)加藤 貞晴(武蔵法律事務所 代表)

国会成立を経て2015年4月に施行される「労働者派遣法」。企業のシステム部門や元請け企業など派遣労働者の雇用者側にも甚大な影響を及ぼし、また中小IT企業の転廃業を引き起こし業界再編につながると言われる。実際のところ、派遣法はどう変わり、どのように企業に影響するのか。「法とコンピュータ学会」の会員であり、ITに関わる法務に詳しい武蔵法律事務所の加藤貞晴・弁護士に解説してもらった。なお、加藤弁護士の許可を得て、最後に本誌の見方も記した。

 労働者派遣法の改正案が2014年3月に閣議決定され、国会での成立を経て2015年4月に施行される見通しです。2012年に正式名称が「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」となり、労働者保護のための法律であることが明確になりました。今回の改正はその延長線上にあります。それでは何がどう変わるのでしょうか。以下、2つあるポイントを中心に改正の内容をチェックし、その上で企業に求められる対応策を解説します。

改正のポイント1、すべてが許可制に

 改正のポイントの1つ目は、労働者派遣事業がすべて許可制になることです。現在の派遣法では、IT技術者などを派遣する「特定労働者派遣事業」と、事務など軽作業人材を派遣する「一般労働者派遣事業」に区別して派遣事業を扱っています。前者の「特定」の方は届出だけでOKですが、後者の「一般」は許可が必要。この区別が撤廃され、すべての労働者派遣事業が許可制になるわけです。

 すべて許可制になれば、当然、特定労働者の派遣事業を行ってきた企業も許可を得なければ、事業ができなくなります。許可の基準は、厚生労働省令で別途定められることになりますが、最低でも現在の一般労働者派遣事業の許可基準と同じか、あるいはさらに厳しくなるものと予想されます。改正案の土台となった厚生労働省労働法制審議会の作成した報告書では「業界全体として労働者派遣事業の健全な育成を図るため、悪質な事業者を退出させる仕組みを整備する必要がある」と述べられており、許可基準の厳格化を図るのが改正の主旨でもあると考えられるからです。

 では一般労働者派遣事業における許可基準はどんなものか? 一例を挙げますと、財産に関する基準として、資産総額から負債総額を控除した金額として、1事業所ごとに2000万円の資産を有することが必要になります。3つの事業所で派遣事業を行っている企業では6000万円です。加えて、今回の改正で派遣労働者に対する教育支援制度を備えることも、要件に追加される見込みです。ソフトウェア技術者を派遣している小規模事業者にとっては、極めて高いハードルであり、「改正派遣法は、中小IT企業の転廃業を引き起こす」と言われるゆえんでもあります。

 ただし改正案が成立し、2015年4月に施行されたとしても、特定労働者派遣事業を行ってきた企業が直ちに派遣事業をできなくなるわけではありません。経過措置として施行日から3年間は、常時雇用される労働者を派遣する事業を続けることができます。言い換えれば、特定労働者派遣事業を行っている企業は、経過期間中に派遣事業を続けるか否か判断しなければなりません。

改正のポイント2、専門業務も3年以内に

 2つ目のポイントは、派遣労働者の受入可能期間が業務にかかわらず一律3年となることです。これまでIT技術者など政令で定められた26の業務については受入可能期間に制限がなく、それ以外の業務についてのみ原則1年、最長3年という受入期間の制限が設けられていました。その区別が撤廃され、受入可能期間はすべて3年となるのです。26の専門的業務を例外として、「1年、または3年以上の長期にわたる場合は、派遣ではなく雇用するべき」といった考えからです。

 しかし受入可能期間は、派遣労働者を変更すれば3年間延長することができます。延長の回数に制限はないので、実質的にはすべての業務で期間制限が撤廃されたと言えます。これが「派遣労働者の保護」という法の精神に合致するのか異論のあるところです。例えばIT技術者は、同じ派遣先で長年働き、ノウハウを蓄えた代わりのいない技術者も少なくありません。技術者自身も、馴染んだ派遣先で勤務したいと考えるかも知れませんが、そのような技術者でも3年で交代させなければならなくなってしまいます。

 ただし、ここがまたややこしいところですが、受入可能期間の制限にはいくつかの例外があり、その一つに「派遣労働者が派遣元企業で無期雇用されている場合」があります。IT技術者を派遣している派遣会社の中には、自社で無期雇用、つまり正社員として雇用している技術者を派遣しているところもあるでしょう。その場合は、例外にあたりますから、3年間を超えても同じ派遣先で派遣社員として働くことができます。

 受入可能期間の制限についても、経過措置が設けられます。個人単位の期間制限及び事業所単位の期間制限のいずれも、2015年4月1日の施行日より後に締結される労働者派遣契約について適用されることになります。

●Next:改正派遣法の「4つの企業別対応策」とIT Leadersの見解

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