IT資産管理−−。この言葉から浮かぶのは「コンプライアンス上のやっかいな決め事であり、できれば避けて通りたい」といったイメージかも知れない。しかし実際にはまったく異なるようだ。国際IT資産管理者協会・日本支部が開催したカンファレンスから、新しいIT資産管理のあり方を紐解いてみよう。
しかしIT資産管理はITサービス管理の一つの要素であり、関連するフレームワークは多岐にわたる(図3)。
拡大画像表示
IT資産管理自体、キープロセスエリア(実施項目)は12項目もある。
1.調達管理
2.資産識別
3.コンプライアンス管理
4.コミュニケーション管理
5.廃棄管理
6.文書管理
7.教育管理
8.財務管理
9.法務管理
10.ポリシー管理
11.プログラム・プロジェクト管理
12.ベンダー管理
拡大画像表示
それだけにロードマップを作成し一歩ずつ着実に進める必要があるという(図4)。「IT資産管理を含む包括的なフレームワークがITIL(Information Technology Infrastructure Library)です。ITILも膨大な体系ですが、IT資産管理にも12のキープロセスエリアがありますから、一朝一夕には実現できません。IT部門単独ではノウハウがない領域もあるため、欧米企業では調達部門や会計部門から、それぞれの専門スタッフをIT部門に異動させたりもしています。実施に向けたロードマップを作り、着実に進めていくことが鍵になるでしょう」(武内氏)。
拡大画像表示
その際に注意するべきは全体のバランスだ。「ソフトウェアの契約管理など、特定のことだけを実施しても大きな効果は得られません。木を見て森を見ずではなく、森全体を見て取り組んで頂きたい」と武内氏は強調する。クラウドサービスの利用やIoTの取り組みなどのガバナンスを考えると、IT資産管理はIT部門にとって、「仕方がない」取り組みではなく、自らを成熟させるために役に立つツールなのかも知れない(図5)。