スペイン・バルセロナの教会堂サグラダ・ファミリアが、教会堂の情報システム中枢として、高い可搬性・カスタマイズ性が特徴のプレハブデータセンターを導入した。2015年3月5日、技術・製品を提供し竣工を担当した仏シュナイダーエレクトリックが発表した内容から、この壮大なプロジェクトのポイントを見ていく。
「成長する事業の独自の要求」は、サグラダ・ファミリアとて例外にあらず
ユネスコ世界遺産であり、スペイン・バルセロナで観光客が最も訪れる場所であるサグラダ・ファミリア(Sagrada Família、写真1)。この世界的に有名な宗教建築物では、運営者が教会堂のセキュリティと、年間300万人にも上る観光客を効果的に管理するために、既存の小規模なサーバールームを、より高機能で信頼性の高く、かつ可搬性を持ったデータセンターに刷新する必要があった。
データセンタープロジェクトを担ったシュナイダーエレクトリック(Schneider Electric)は、フランスに本拠を置く、エネルギーマネジメントのグローバル企業として知られている。近年は、UPS(非常用電源装置)やDCIM(Data Center Infrastructure Management:データセンターインフラ管理)といったデータセンター関連の事業に相当な力を入れている。
同社グローバル・データセンター戦略・技術担当バイスプレジデントを務めるケビン・ブラウン(Kevin Brown)氏は、「今日のデータセンターの設計や建設にあたっては、定形規模のデータセンターを構築することがすべてのケースには当てはまらなくなってきている。成長する事業の独自の要求に応えるためには、可搬性と柔軟性にすぐれた、ポータブルでかつ高性能な設備が必要であることは明確だ」と指摘する。氏の言う「成長する事業の独自の要求」は、かのサグラダ・ファミリアとて例外ではなく、教会堂の運営者とのタッグによるデータセンター刷新プロジェクトが始動した。
周知のように、サグラダ・ファミリアは1882年の着工から、2015年で133年目を迎えた現在も複雑な建設工程の途上にある「永遠の未完」プロジェクトである。
「したがって、建物の中に新しいデータセンターを建設することは選択肢としてなかった。さらに、データセンターの建設を作業中の建設区域には行えず、経時的に建設区域も移動するため、データセンターも容易に移動できる可搬性を持つことが重要な要件だった」とブラウン氏。そこで、高水準のセキュリティと保全レベルを維持しながら、絶えず発展する建設プロセスに対応可能な、レジリエンシー(Resiliency:弾力性、柔軟性)のあるデータセンターとして、プレハブデータセンターに白羽の矢が立てられた(写真2)。