サーバーやシステムを収容する固定的なファシリティとしてとらえられることが多いデータセンター。だが、IoT (Internet of Things) やビッグデータ、モバイル、ソーシャルといった昨今のITの潮流がそんな旧来のデータセンターのあり方を変えようとしている。2014年5月29日にシンガポールで開催されたイベント「Schneider Electric APJ MediaMeeting」で、シュナイダーエレクトリックが現在の着目点として訴えたのは、データセンターを1つの巨大かつ動的なシステムととらえたライフサイクル管理である。
昨今のIT潮流がデータセンターに与える影響
あらゆるモノがインターネットにつながるIoTの時代が現実味を帯びてきた。すでに先進企業では、センサーネットワークを駆使してモノが発する膨大な情報・データを収集し、ビッグデータ分析などを経て自社の製造や物流、販売などに生かしてビジネス上の成果を上げ始めている。
拡大画像表示
そんなIoT/ビッグデータ、それにモバイルやソーシャルといった昨今のITの潮流がデータセンターのあり方にも変化を強く求めている。
シュナイダーエレクトリックのシニアバイスプレジデントでITビジネス/グローバルセールスを統括するフィリップ・アルソノ(Philippe Arsonneau)氏(写真1)は、「企業が扱うデータ量が量・種類共にこのまま増大を続けると、今のデータセンターのキャパシティでは到底間に合わなくなる。いかに拡張していくかが問題となる」と指摘した。
アルソノ氏が言いたいのは、IoTやビッグデータの活用に対応できるよう、単にサーバーの処理能力やストレージの容量などハードウェアを拡張すればよい、という単純な話ではない。データのセキュリティと可用性、データ管理のガバナンスなど、企業ITの様々な要件を満たしながら、データセンターそのものを変革していく必要があると同氏は説明。その解として挙げられたのが、現在、シュナイダーエレクトリックが注力する「データセンターのライフサイクル管理」である。
「かつて、データセンターは構築してしまえばそれで終わりだったが、IoTやビッグデータの時代にそれでは通用しない。企業には、今後のビジネスを見据えて、設計・構築から改善のための計画に至るライフサイクルの仕組みの下で、データセンターを効率よく継続運用していく必要がある」とアルソノ氏。すなわち、データセンター全体を1つの巨大な、しかも動き続けるシステムとしてとらえて、一般的なシステムの運用管理と同様、フェーズごとの監視管理を行っていくことで全体最適化を図っていくべきだ、というわけだ。
データセンターライフサイクルに基づく重点サービス
イベントの午後には、データセンターのライフサイクル全般を通じたシュナイダーエレクトリックの戦略と提供サービスが各担当者によって紹介された。以下、領域ごとの特徴をまとめてみる。
DCIMを駆動するDCLSフレームワーク
以前よりシュナイダーエレクトリックは、DCIMをデータセンターにおいて分断されていたITシステムとファシリティの両運用管理の融合を図るソリューションと位置づけて提供している。「データセンターライフサイクル管理サービス(DCLS)」は、そのDCIMをライフサイクルフェーズとして実施するためのフレームワークである。データセンター運用担当者に対して、計画(Plan)、設計(Design)、構築(Build)、運用(Operate)、解析(Assess)というサイクルフェーズごとにその実行・管理を支援する(図1)。
ASSET Connectサービス
データセンターの計画や設計は、一般に企業自身が十分なノウハウや経験を持たないフェーズと言える。「ASSET Connectサービス」は、シュナイダーエレクトリックがDCIMソリューションの提供でこれまで培ってきた知見やノウハウを基にした、データセンター設備投資/運用管理支援サービス群である。
同サービス群は、(1)24時間365日のイベント監視・アラート通知などを行う「ASSET Monitor」、(2)イベント/インシデント発生予測・管理、高度分析・データモデリングなどを提供する「ASSET Predict」、(3)ファシリティの環境評価や基礎データの取得・ベンチマーク、高度分析、継続的改善プログラムなどを提供する「ASSETCommit」、(4)グローバルのベストプラクティスを基にした、KPIや改善指標ベースの運用・保守体制の確立するための「ASSET Operate」の4サービスで構成される。
このうち高度分析を伴う(2)と(4)について同社は「データセンターのためのデータサイエンス」を掲げている。そのビジョンを主導するのが2013年9月、インド・バンガロールに設置されたサービスビューローで、エネルギー管理を専門とするデータサイエンティスト集団を擁するCoE(Center of Excellence)組織として位置づけられている。
DCIMソフトウェア
DCLSを具現化すべく全フェーズで活用されるのが、シュナイダーエレクトリックのDCIMソフトウェア「StruxureWare」および統合スイート「StruxureWare for Data Centers」である。2014年5月に投入されたバージョン7.4では、CADで描かれたデータセンター設計図面CGファイルを統合する機能や、各システムに、各センサーから集められる機器/システムの稼働情報を基に、過負荷や障害が発生したケースをシミュレートしながら得られる可用性を数値化する機能など、統合管理のための可視化がさらに強化されている。
拡大画像表示
●Next:モジュラー/コンテナ型データセンターが急成長
会員登録(無料)が必要です
- 1
- 2
- 次へ >